ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月25日放送)に二松学舎大学国際政治経済学部専任講師の合六強が出演。メルケル首相に代わり、社会民主党(SPD)のオラフ・ショルツ財務相がドイツの首相に就任するというニュースについて解説した。
ドイツの首相にSPDのオラフ・ショルツ氏が就任へ
9月に行われたドイツの総選挙で第一党となった、中道左派の社会民主党(SPD)は11月24日、環境政党「緑の党」と自由民主党(FDP)との3党による連立政権樹立で合意したと発表した。これにより、メルケル首相に代わってSPDの代表、オラフ・ショルツ財務相が首相に就任する。
飯田)選挙が行われたのは9月で、「そんなこともあったな」という感じですが、新政権がこれでようやく動き出すということになるのですか?
合六)日本時間の11月24日夜くらいに連立で合意書が出され、各党のなかでの手続きを経て、12月初旬には政権が成立するだろうと言われています。ドイツはいつも連立政権ということで、どの党とどの党が組むかについて選挙のあとに話し合われるわけですが、揉める場合もあれば揉めない場合もあり、今回はどうなるのかが注目されていました。
飯田)今回はどうなるのかと。
合六)当初から社会民主党(SPD)と緑の党、自由民主党の各党のカラーを取って、「信号連合」と言われたりします。そこで話し合いがなされていて、「クリスマス前にはできたらいいよね」と言っていたのですが、前倒しになり、順調に来たのかなという印象です。
中国・ロシアへの対応はどうなるのか
飯田)これまではキリスト教民主同盟(CDU/CSU)がやっていましたが、政権が交代すると、外交安保面でもガラッと変わるのですか?
合六)なかなか見通すことは難しいのですが、メルケル政権は、最後は大連立政権で外相ポストはSPDが担っていましたので、大きく変容するかと言われれば、変容しないのかなという見通しを持っています。
飯田)大きくは変わらない。
合六)注目は久しぶりに政権入りした緑の党です。その党首が今回、外相に就くという見込みです。党の代表であるベアボックさんは、選挙中はロシアや中国の人権問題などにも厳しい態度を取っていました。これは緑の党全般的に言えることですが、こういった対応が今後どうなるのか。人によっては「対中姿勢がより厳しくなる」と言う人もいますが、第一党となるSPDは、伝統的にロシアなどに対して「関与を通じて変化させて行く」という外交スタイルを取って来たところもあります。中国に対して、経済的には未だに重要な相手ですし、「そこまで大きく変わることはないのではないか」という見方もあるようです。
ニュークリア・シェアリングにはコミットし続けるけれども、核兵器禁止条約の締約国会議にはオブザーバーとして参加する
飯田)緑の党が入って来るということになると、原子力政策はどうなりますか?
合六)この点が非常に重要です。エネルギーに関しては、前政権が推し進めようとした脱石炭の時期を前倒しするということを言っています。原子力に関しては、核をどうするかという問題が重要になります。
飯田)核をどうするか。
合六)ドイツは非核保有国でもあるのですが、NATOの枠組みのなかで、公然の秘密となっていますけれど、アメリカの核爆弾がドイツ国内に置かれていると言われており、いわゆる核シェアリングに参加しています。従来から緑の党とSPDの左派系は、アメリカの核をドイツ領域内から撤去することを求めて来ました。この辺りは他のNATO諸国、あるいはNATOそのものが懸念を示したことで、先日も事務総長がドイツに訪れ、「きちんとしてくれよ」と言っています。今回の合意文書では、「このコミットメントは続ける」ということが一応の方針としては出ているようです。
飯田)続ける。
合六)他方、これまでになかったところとしては、今年(2021年)発効された「核兵器禁止条約」です。日本でも話題になっていますけれども、締約国会議が2022年に開かれるのですが、第1回会議にドイツもオブザーバーとして参加するという方針を示したらしいのです。アメリカの核の傘に大きく頼っているNATO加盟国としては、本来であれば、もちろん「署名、批准もしないし、締約国会議にも参加しない」というのがスタンダードだったと思います。しかし、こういう動きを見せているということは、連立政権のなかで「ニュークリア・シェアリング(核兵器の共有)にはコミットし続けるけれども、核兵器禁止条約についてはオブザーバーとして参加する」という方向で、一定の妥協があったのかなと思います。
飯田)連立政権のなかで。
合六)ただ、実際に参加するのか、核シェアリングについてどんな議論が巻き起こるのか。世論は核シェアリングに対して批判的なので、この点は動き出してからということになると思います。
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