ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月1日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。政治に必要なものは何かということについて解説した。
SNSで目にする悪口ばかり言う政治家や言論人
ジャーナリストの佐々木俊尚氏がメディアプラットフォームの「note」で、SNSで政治発言をしている人たちが怒りや義憤を思い切り政治にぶつけていることに対し、自身の思いを「政治に本当に必要なものは何か」というテーマで書いている。
弁論に必要なのは「ロゴス」と「パトス」と「エートス」 ~アリストテレス『弁論術』
飯田)佐々木さんはメルマガとして配信されていたものを「note」にあげていらっしゃいますが、最新号では政治に必要なものというテーマで書いていらっしゃいます。
佐々木)「感情を揺さぶることではなく、信頼だ」という記事を書いたのですが、あまりにも感情で動くシーンが多過ぎる。政治家側も、特にツイッターなどで感情を煽るような発言が増えて来ているように思います。それでは真っ当な議論は成立しません。その記事で引いているのは、古代ギリシャのアリストテレスの教えです。『弁論術』という本があるのですが、そのなかでアリストテレスは、弁論に必要な原則が3つあると言っています。「ロゴス」と「パトス」と「エートス」です。
飯田)歴史の教科書で習いましたが、中身は覚えていないな、という感じです。
佐々木)「パトス」はパッションで、情熱・感情です。ロゴスはロジック、要するに論理で、「感情でみんな動きやすい」ということです。論理的に「こうだ」とファクトを提示して説明すればいいのだけれど、論理だけではみんなすぐに理解してくれない。
飯田)ある種の冷たさのようなものが漂うと。
信頼感を持つために必要な要素 ~「知恵」「道徳」「好意を与える」
佐々木)事実を提示すると、冷笑主義などと言われてしまう。ですので、感情だけでは危ないし、かといって論理だけでは動かないので、3つ目の「エートス」が大事になります。難しいギリシャ語なのですが、本来の意味は日常の習慣というニュアンスで、そこから変化して行った。イメージとしては、「日常の習慣を積み重ねることで関係性がつくられる」ということです。日本語で言うと、信頼感のような意味合いだと思います。「信頼感があるから、政治家と我々とメディア、3者が結ばれる可能性がある」ということを書いたのです。
飯田)信頼感があるから。
佐々木)信頼感を持つためには3つの要素が必要だという話で、これもアリストテレスが書いているのですが、1つは知恵が必要である。知恵のない人には信頼がない。もう1つは、道徳です。徳の高い人でないと信頼してもらえない。しかし、その2つだけではダメで、もう1つは、好意を提供してくれる人が必要だと。私が飯田さんを信頼していても、飯田さんが私のことを「嫌いだ」と言ったら、信頼にならないではないですか。だから、「人に対して好意を与える人が信頼される」ということになるのです。
飯田)好意というのは、好き嫌いもそうですけれど、リスペクトのようなものも。
佐々木)そういうことですよね。無償の善意のようなものだと思います。その3つがある人が信頼されるということです。
悪口ばかり言っている人はやがて信頼を失う
佐々木)逆に言うと、ツイッターで悪口ばかり言っている人は、長い目で見れば信頼感がなくなってしまう。その瞬間は感情で盛り上がり、たくさんリツイートされて、「いいね」もついて「俺ってすごい人気者」と思うかも知れませんが、それは落とし穴です。長い目で見ると「あの人って怖いよね」とみんなが距離を置いたり、まともな人こそ離れて行って、信頼感がなくなってしまう。そういうことをやっている政治家や言論人は、ツイッターにたくさんいるではないですか。
飯田)この矛先が自分に向いて来たらと思うと、やはり信頼はなくなってしまう。
佐々木)そうなのです。
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