ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月6日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。臨時国会が召集されることを受け、今後の岸田政権のあり方について解説した。
臨時国会召集、第2次岸田政権初の本格論戦へ
第207臨時国会が12月6日に召集された。第2次岸田政権の発足後、初となる国会での本格論戦が展開される。岸田総理は所信表明演説で、新たな変異ウイルス「オミクロン株」など新型コロナに細心かつ慎重に対応する考えを示した。
飯田)12月21日までの16日間が会期となります。12月8日~10日にかけて各党の代表質問、その後は予算委員会が行われる予定だそうです。
須田)与野党ともに新しい体制のなかで、初めての国会となり、その行方が注目されています。いずれにしても、今回の臨時国会は「補正予算を審議して成立させる」ということが最大の仕事になると思います。
飯田)補正予算を。
須田)経済対策の財政支出が過去最大規模の55兆7千億円ということで、大きな予算であると言われているのだけれども、私はそうは見ていません。2021年度というと、このような経済対策、コロナ対策の補正予算は初めてのものですから。
補正予算が成立しても予算執行は最短でも1月下旬 ~経済にプラスになるのか疑問
須田)2020年度は3回にわたって補正予算が編成され、財政支出ベース70兆円という巨額の規模でした。これは最初にして最後の補正予算であることは間違いありません。
飯田)そうですね。
須田)加えて、12月中旬くらいに成立を見るのでしょうけれども、成立したからと言って、予算執行は簡単にできるものではありません。どんなに急いでも、1ヵ月はかかるわけです。特に今回は年末年始を挟みます。12月28日から役所が休みになってしまいますから、1月下旬というのが最短のタイミングになるのではないでしょうか。
飯田)実質作業を始めるのは年明けからということになると、1月下旬~2月頭くらいになります。
須田)一部、18歳以下への10万円給付のうち、半分の現金給付についてはコロナ対策の使途を明示されていない予備費から捻出されるのですが、これは今年度予算に入っているのです。だからこれだけは先行して出しましょうということなのだけれども、この辺りを見ると、果たして本当にコロナ対策として経済にプラスの効果をもたらすのかどうか。間に合うのか、「年末年始は大丈夫なのか」というところは心配ですよね。
「16ヵ月予算」で編成
須田)それをカバーするために、イメージ戦略があるのですが、私は初めて聞いた戦略でした。今年度の補正予算案と合わせて「16ヵ月予算」の考え方で編成するということです。15ヵ月はあり得るのですが。
飯田)15ヵ月。
須田)過去の景気が悪いときによく聞きました。1、2、3月、そして4月から翌年3月までで、15ヵ月予算編成。しかし16ヵ月というと、今月(12月)も入って来るという。
飯田)12月も入って来る。まだ審議すらしていないのに、12月が入っているのですか。
須田)そういう意味で言うと、「今月からカバーしていますよ」というところを言いたいのでしょう。年末年始における個人の不安を、イメージ戦略としてカバーして行こうという意図があるのだと思います。
飯田)でも、イメージでは食えないですよね。
参院選に向け、ウルトラ安全策を取る岸田政権
須田)岸田政権は、とにかく批判や疑問が生じないことを最優先にしています。安全運転に終始しているのです。リスクを取らない、冒険しない。何かやる前には観測気球を打ち上げて、反応を見極めてから落としどころを探すという、ウルトラ安全策を取っています。やはり来年(2022年)7月の参議院選挙がありますから。
飯田)参院選が。
須田)そこを強く意識していることは間違いありません。これから始まって行くことは、すべて参議院選挙対策ですから。
飯田)なるほど。
須田)18歳以下の方々に対する一律10万円相当の給付の決定は、公明党の選挙公約だったからです。「参議院選挙も頑張ってね」という公明党へのメッセージです。「自民党を応援してね、よろしくね」と。
飯田)ねじれ国会になってしまうと、大変なことになりますからね。
立ち遅れる立憲民主党 ~着々と実績を積み重ねる岸田政権
須田)そこでどうなのかなと思うのは、野党です。立憲民主党の代表選は確かに行われました。しかし、代表選での争点はいったい何だったのでしょうか。「野党共闘は今後も続けて行くのか」というところしか記憶にありません。
飯田)確かにそこが最大の論点になるはずです。
須田)しかし、そこは4候補とも、曖昧戦略に終始したのではないでしょうか。
飯田)「検討はする」と言うけれども、具体的に何かと聞くと、「いや、それは検討してから」という感じでした。
須田)泉新代表もこれからですよね。
飯田)そうですね。「まずは衆院選の総括をしてから」と会見でもおっしゃっていました。
須田)「衆院選の総括をまだやっていなかったのか」と驚くところではあるのだけれども。そこで立憲民主党がまごまごしていると、「もう7月の参議院選挙は結果が見えているのではないか?」 と思ってしまいます。いろいろと不満や不足しているところはあるけれども、岸田政権は着々と実績を積み重ねている気がしてなりません。
7月の参院選が終わり、本格政権となる
飯田)岸田政権としては、7月の参院選が終わって以降、自分の色を出して行くのでしょうか?
須田)そこで本格政権というところになるのでしょうね。2021年10月31日の衆院選から2022年7月までは、「変則的なダブル選挙」と見ていたのです。
飯田)なるほど。
須田)その間、ずっと選挙モードですよと。それが終わらないと政治基盤は安定しないし、岸田政権としては本格政権にならない。それまでは、すべて選挙対策で走るぞと。
「財政支出55兆7千億円」にポジティブに反応した株式マーケット
飯田)そうすると、このあと補正があって本予算があり、もしかすると、来年度補正のようなものが選挙前に打たれるかも知れないという感じですか?
須田)景気を悪くするわけには行きませんからね。株価を下げるわけには行かない。株価は弱含みだったのだけれども、過去最大規模の財政支出55兆7千億円について、ポジティブに反応したのは唯一、株式マーケットです。「株価対策ではないのか」と私は見ていました。いまはほとんど日銀が買っていませんし。
飯田)いま日銀は買っていないのですか。余力を残しているということですか?
須田)というよりも、もうテーパリングというか、出口戦略に向かっているのだろうと思います。
飯田)原油価格が上がって来たりして、いまはそれほど足元の物価が上がっていないけれども、少し抑え気味に行かないとまずい、というところが頭のなかにあるわけですか?
須田)日本もご多分に漏れず、スタグフレーションリスクを抱えていますから、そこへ向けて日銀は慎重なスタンスで動いているのだろうと思います。
減税など、思い切った手は100%打たない岸田政権
飯田)物価を見ると、エネルギーと生鮮を除いたコアコアな指数では、マイナス0.7%。ある意味のデフレなのかという、国内需要の相当な弱さが見えていますけれども、その辺りは財政でカバーして行くという感じですか?
須田)違うのです。需給ギャップがあって、需要が少ないわけでしょう。そういうイメージで言うと、明らかにデフレなのです。ただし、輸入品の価格が上がることによって、一部の製品でインフレーションが起こっているという状況だと思います。
飯田)これをどう舵取りするのか、本当は難しいわけですよね。ブレーキとアクセルを両方踏まなければならないような。
須田)そのなかで、こういう慎重なスタンスに終始していていいのか。減税など、「もっと思い切った手を打たなくていいのですか」と思います。いまの状況では、安全運転ではあるのだけれども、減税などの思い切った手は100%打たないと思います。
飯田)その停滞感のような状況で、果たしていいのか。
須田)持つのかどうか。でも、そこは野党の攻めどころだと思うのです。
飯田)そうですよね。具体的に「うちだったらこうしますよ」という案を出せば、「その手があるか」となりますよね。
須田)いつまでも衆院選の総括をしている場合ではないと思います。
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