ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月2日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2021年の有効求人倍率が1.13倍となり、前の年から0.05ポイント下がったというニュースについて解説した。
2021年の有効求人倍率1.13倍
厚生労働省によると、仕事を求めている人1人に対して企業から何人の求人があるかを示す有効求人倍率は、2021年平均で1.13倍となり、前年比0.05ポイント下がった。有効求人倍率が前年から低下するのは3年連続である。
飯田)一方で、総務省が2月1日に発表した2021年平均の完全失業率は2.8%で、前年と同じということでした。
佐々木)3年連続マイナスですからね。日本はオミクロン株で感染が増えていると言われますが、欧米と比べると2桁くらい少ない状況にあるわけです。ただ、イギリスやアメリカなどでは、「感染抑制しながらお金を使って、経済を取り戻そう」というマインドに変わって来ているではないですか。あんなに感染者が増えているのに。
飯田)そうですね。
佐々木)日本では、感染者は大して多くないのに、消費が冷え込んで求人も増えない。
リーマンショックのころと似ている
佐々木)リーマンショックのころを思い出します。
飯田)リーマンショック。
佐々木)リーマンショックが起きた当時、日本は最もダメージが少ないと言われていました。
飯田)言われましたよね。それほど債権やサブプライムを持っていないからと。
佐々木)リーマンブラザーズが破綻したのを野村證券が救済するという流れだったのだけれど、10年経って蓋を開けてみると、いちばん経済ダメージを受けたのは日本だったと思います。マインドが冷え切ってしまって。
「マインドが冷え切っている状態」に馴れてしまった日本人 ~金があっても消費が増えない
佐々木)日本は「マインドが冷え切っている状態」に平成の30年間で慣れきってしまって、もはや上がらない。コロナが終わったらリベンジ消費になるのかと言うと、あまりならない気がします。
飯田)そうですよね。
佐々木)「コロナ禍が終わったら買い物するか!」と思っている人が、周りにあまりいない気がする。
飯田)「もう持っているからいいよ」と、「新しいものに買い替えようか」という感じにあまりならない。
佐々木)アベノミクスの金融緩和で、インフレ率を提示して上げて行こうとしましたが、消費が増えなかった。いくら金が余っていても、「もしかすると来年食えなくなるのではないか」という不安が残っている限り、消費は増えない。消費が増えなければ当然、企業も儲からないし、企業が儲からなければ給料も増えない。その悪循環がずっと続いていて、未だにここから抜けきれていません。
幸福度ランキングが世界で56位の日本 ~かつては気楽に生きていた日本人
佐々木)日本はGDPが世界第3位の経済大国であり、収入も少なくないはずなのに、「幸福度が低い」とよく言われるではないですか。2021年の世界幸福度ランキングで、日本は56位です。かなり低いわけです。
飯田)世界で56位。
佐々木)沖縄の言葉で言う「なんくるないさ」というマインドが減っているからではないでしょうか。(現在の感覚は)日本民族の特性ではないと思うのです。江戸時代では「何とかなるよね。気楽に生きようよ」という感じだったのですから。
飯田)その日暮らしでも大丈夫というような感じがあった。
佐々木)「お金がなくなったら誰かが助けてくれるだろう」という気楽さが、平成の30年間で日本社会から失われてしまった部分があります。昭和の時代に植木等が映画「無責任」シリーズで演じていた、「サラリーマン家業は楽しいぜ」というマインドに戻らなければダメなのではないでしょうか。
老後の不安に怯える日本人
佐々木)生涯未婚率も3割~4割と言われている時代になると、「もう老後は孤独死するしかない」など、「孤独死」という言葉がまん延して、「贅沢はせず、貯蓄を1円でも増やして老後に備えなくては」と考えるようになるわけです。
飯田)老後に備えて。
佐々木)「貯金なんかしなくても何とかなるだろう」というマインドをつくれるような社会にしなければならないと思います。
飯田)コロナに関して、「抑制が効きすぎるほど効いている」ということのよし悪しもありますけれど、このマインドの冷え込みがリンクしているのかも知れませんね。
佐々木)コロナを抑制できる利点はあるのだけれど、悪いところで言うと、消費マインドをみんなで抑えてしまっているという、日本人の両面ですね。
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