ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月9日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。1月の景気ウォッチャー調査が37.9と5ヵ月ぶりに悪化したニュースについて解説した。
街角景気、5ヵ月ぶり悪化 ~東日本大震災以来2番目の下落幅
働く人たちに景気の実感を聞く内閣府の「景気ウォッチャー調査」で、1月の景気の現状を示す指数は前の月を19.6ポイント下回って37.9となり、5ヵ月ぶりに悪化した。新型コロナの感染急拡大への懸念から大幅な低下となり、下落幅は東日本大震災があった2011年3月に次ぐ過去2番目の大きさである。
飯田)12月に比べると、1月は顕著に結果が出ましたね。
高橋)10~12月はコロナ感染が落ち着いていたので、GDPの四半期の速報値も年率4~5%伸びたのです。しかし、またこれで1~3月は落ちそうですね。
飯田)小売りの店主さんなどに話を聞くと、「相当厳しい」というような数字が出ています。
高橋)行動制限で規制していますから、それは落ちますよ。
ガソリンなど一部の価格は上がっても物価は上がらない ~インフレにはならない
飯田)家計調査でも、2021年の数字が出て来ましたけれど、品目別で見ると、旅行や外食は7割減と厳しい数字になっています。
高橋)GDPギャップは10~12月で少しは縮まったはずなのだけれども、これでまた増えるでしょう。そうすると、需要と供給の開きがかなりあって、5%くらいのGDPギャップがあります。よく「インフレ」と言いますが、そういうことにはなかなかなりません。
飯田)ならない。
高橋)内閣府の計算するGDPギャップがマイナス2%で、1%くらいになるかどうかというレベルです。それがいま5%ということは、7%くらい開いているということです。そう簡単にインフレにはなりません。ガソリン価格など、一部の価格は上がるのだけれども、物価は上がらないという状況です。
飯田)価格と物価は違う。
高橋)まったく違います。ほとんどのマスコミでは混同して報道されますが、違います。ある品目は確かに上がります。特にガソリンなどは上がるのですが、全体の平均値としての物価は上がりません。
価格が上がったものを個別に調整するべき
飯田)そう考えると、エネルギーや生鮮食品などを除いた消費者物価指数は、ずっとマイナスに。
高橋)上がらないものが多いです。こういう状況でインフレが出るというように誤解してしまうと、また政策を間違えてしまいます。
飯田)「それによって財政出動はできないのだ」というようなことを言う人がいます。
高橋)それは大間違いです。財政は出すのだけれども、どちらかと言うと、「価格が上がったものを個別に調整してあげる」ということです。ガソリンが上がったのであれば、ガソリンについて減税するなど、そういう対策が必要なのです。
飯田)トリガー条項であるとか。
高橋)そうですね。でも、トリガー条項は発動せずに補助金でやるのでしょう。そうすると、ガソリン価格の上昇はあまり抑えられない……というように、少し政策を間違えてしまうのです。
物価にはマクロ経済政策で、価格にはミクロの個別の対策で対応する
高橋)物価には、マクロ経済政策で対応するのです。また、価格にはミクロの個別の対策で対応するのですけれど、そこをうまく識別できないと間違えてしまいます。
飯田)混同しやすいのは、個別の価格で上がっている部分があり、それと全体の流れである物価が、見た目では相反する動きになっている。
個別の価格を説明してはいけない ~GDPギャップを埋めてマイナスになるようにする
高橋)そういうことはよくあるのです。でも、わかりやすく説明しようとするでしょう。そういうときに、個別の価格を説明するからいけないのです。
飯田)個別のエピソードの方がわかりやすいですからね。「ほら、こんなに値札が上がっていますよ」という。
高橋)わかりやすいのだけれども、「わかりやすい」と「誤解」は紙一重なのです。
飯田)そうすると、財政はより出して行かなければいけない。
高橋)財政を出して、先ほど言ったGDPギャップを埋め、マイナス程度になるようにした方がいいのです。
物価の動きは総需要と総供給で決まる ~このままでインフレ率は上がらない
飯田)補正予算を組みましたが、その執行がようやく始まるくらいですか?
高橋)執行は始まりますが、真水も少ないから、なかなか効きません。GDPギャップを埋めきれないと思います。そう簡単には一般物価というインフレ率はなかなか高まることはありません。でも、いろいろな品目は上がるから、マスコミはそこだけを報道するのです。
飯田)「ガソリン価格が上がりました」とか、「油の値段が上がりました」とか。
高橋)物価の動きは、そういうものとは違うのです。物価の動きは、先ほど言ったように総需要と総供給でだいたい決まって来るのです。
飯田)いまは需要が相当しぼんでしまっているから。
高橋)街角景気は先行指標になっているのです。次に景気動向調査が出るけれども、たぶんこれもあまりよくないですよ。そのあとに出るGDPもよくないと思います。
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