MLB、ついに労使交渉合意 大谷翔平・鈴木誠也への影響は?

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、日本時間3月11日に合意に達した米メジャーリーグの労使交渉と、エンゼルス・大谷翔平選手ら日本人選手、日本球界への影響について取り上げる。

MLB、ついに労使交渉合意 大谷翔平・鈴木誠也への影響は?

【米大リーグエンゼルス・大谷翔平会見】会見に臨む米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手=2021年11月15日午前、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

最低年俸保証や、ぜいたく税の課税基準額などをめぐって、昨年(2021年)から揉めに揉めていたMLB(米大リーグ機構)の労使交渉。日本時間3月11日、ようやく機構と選手会が合意に達した、と複数の米メディアが報じました。

機構と選手会は、新労使協定をめぐって対立。コロナ禍による収入減もあって、年俸の高騰を抑えたいオーナー側と、それに反発する選手会側の交渉はなかなかまとまらず、業を煮やした機構側は、昨年12月2日(日本時間)からロックアウトに踏みきりました。

メジャー選手に関わるすべての業務をストップさせたこの措置によって、選手は球団の施設を使った練習ができなくなり、球団による正式なキャンプは開催不能に。またFA(フリーエージェント)選手の契約交渉も中断を余儀なくされました。

両者の話し合いは今年(2022年)に入ってもまとまらず、予定されていた開幕日は延期が決定。このまま歩み寄りの姿勢が見られなければ、シーズン中止になるかも、という観測も出ていました。そんななか急転直下、ギリギリで合意に達したのは、両者とも「28年前の悪夢を繰り返してはならない」という思いがあったからでしょう。

機構と選手会は、1994年にも労使交渉で揉め、8月からストライキに突入。シーズンは中断されたまま打ち切りとなり、第一次・第二次世界大戦中ですら開催されて来たワールドシリーズも中止となりました。交渉は翌1995年春まで長引き、開幕を延期したうえでようやく再開。しかし、機構に対してだけでなく、選手会側にもファンから激しいブーイングが浴びせられ、観客も大きく減少しました。

いくつかの事項は引き続き協議されることになりましたが、かつてファンを無視した過ちを繰り返すわけには行かないと、お互いが歩み寄って妥結に至ったのは歓迎すべきことです。

ロックアウトは日本時間3月11日午前9時に解除され、正式なキャンプも開催可能になりました。今月(3月)半ばからオープン戦が行われ、シーズン開幕は4月7日に決定。当初は中止とされ、代替試合は行わない、と発表されていたゲームについても、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーが「全162試合をフルで開催する」と明言しました。ダブルヘッダーを組み込んだ強行日程になりますが、選手の年俸は満額が支払われることになりました。

この交渉合意は、日本人選手にも大きな影響を与えることになります。マリナーズからFAとなった菊池雄星は、ロックアウトで移籍先候補との交渉が中断し、新天地が決まっていませんでした。シーズンが中止になれば、楽天に復帰した田中将大のように、短期契約で日本球界に戻る選択肢も浮上したところ。本人もホッとひと息ついているところでしょう。

そして、こちらも移籍先が宙に浮いていたのが、ポスティングによるメジャー移籍を目指している広島・鈴木誠也です。鈴木を欲しがっているメジャー球団は多く、改めて争奪戦となりそうです。こちらもメジャーがシーズン中止となれば、昨年の巨人・菅野智之のように、今季は引き続き広島でプレーすることになったと思われます。そうなると、セ・リーグのペナントレースの行方にも影響するところでした。

また、昨季は二刀流でメジャーを沸かせた大谷翔平にとっても、期限ギリギリで交渉がまとまったことは大きな意味がありました。FA取得日数の問題があったからです。現行のMLBの規定では「ベンチ入り26人枠に172日登録=1年」とカウントし、これが6年に達するとFA資格を取得できることになっています。

大谷の場合、早ければ2023年オフに6年に達しますが、もし4月半ばまで開幕がずれ込んでいたら、フルシーズンベンチ入りしても、登録日数が172日に満たなくなる可能性がありました。そうなると、移籍先を自由に選べるのが1年先に延びることになります。4月7日開幕決定は、大谷に限らず、今季中にFAとなる有力選手にとって朗報となりました。

なお、今回の労使交渉では「今後も協議継続」となった「国際ドラフト」の導入も大きな争点となりました。現在、MLBの国内ドラフト対象国は米国・カナダ・プエルトリコの3ヵ国ですが、現状自由競争(ただし、各球団に割り当てられた海外選手契約資金の範囲内に限定)となっている国のアマチュア選手を、メジャー全球団が20巡目まで指名できる、というものです。

具体的に言うと、ドミニカ共和国やベネズエラなど、メジャーリーガー輩出国から有望選手を獲得する際、契約金の一部が、そのバックにいる現地の仲介者に流れることを阻むための制度で、これに当該国出身の選手らが「母国の野球が壊れる」と反発。この制度は当然、日本はじめアジア球界の選手獲得競争にも影響して来ます。その他にもさまざまな問題が交渉継続となっていますが、日本球界にはどんな影響が及ぶのか、引き続き労使交渉の行方に注目です。

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