3月20(日)、スポーツライター金子達仁がメインパーソナリティを務めるラジオ番組「The Deep」(ニッポン放送・毎週日曜20時~)が放送された。今回は、スノーボード・ハーフパイプ・北京オリンピック銅メダリスト・冨田せな選手が出演。ケガとの闘いを乗り越えて出場した北京オリンピックを振り返った。
一流アスリートたちをゲストに迎え、スポーツの面白さや、アスリートの心の奥底にある想いを届けていく番組となっている、「TheDeep」。冨田が選手村からスキー場まで移動するバスの中で号泣したという知られざるエピソードを激白。北京オリンピックの舞台裏を明かした。
金子:こういう言い方をしていいのか分かんないですけど、1度、アスリートとしての冨田さんは死にかけちゃったんですね……。そこからいろんな人たちが救ってくれた。
冨田:本当きっかけっていうか、お母さんが「もうだめでもいいから、怪我から復帰して、1年大会に出て、自分がどのくらい滑れるか様子を見てみたら?」って言ってくれて。それで、ワールドカップに復帰しようって思ったので、その言葉がなかったら、もしかしたら、大会には出ていなかったかもしれないです……。
金子:うわー……。でもそこまで追い詰められて、また立った舞台で大怪我をした。恐ろしいですか? って聞くのはバカなんですけど……。ポジティブな要素が見えないんですよ。そこで滑ることでいい結果が出るイメージが僕には全くできないです。
冨田:今回の会場がその脳挫傷で競技の引退を考えた場所でもあったし、ワールドカップではじめて表彰台に立ったっていう会場でもあったんですよね。で、すごい気持ち的には複雑で……。良いイメージもあるけど、でもその後に悪いイメージがついちゃったから。
金子:新しい記憶の方が悪いんだ……。
冨田:そうです。なので、どうしても良いイメージにまでは持っていけなくて。
金子:そういう経験、そういう気持ちで滑った方がどれだけいたか分かりませんけど、北京で。大概負けます! 勝てるわけがない。公式練習の段階で滑りたくないって言った、予選翌日ですよね。どうやって気持ちを切り替えたんですか?
冨田:正直嫌だった部分もあるんですけど……。でもワールドカップ、今シーズン一緒に回ってた子たちが、オリンピックに全員行けたわけじゃなく、選考に落ちた選手もいるので。そのことを考えたら、絶対みんな、オリンピック出たかっただろうし、選ばれたからには、やることをやらなきゃな、って気持ちが途中から出てきて。頑張って気持ちを切り替えて滑っていました。
金子:気持ちを切り替えたとは言ってもですよ。マイナスだったのを0点に近づけただけであって。出来る! やるんだ! みたいなポジティブなアドレナリンがガーって出るのとはまた違うじゃないですか。
冨田:そうですね。選手村からスキー場まで移動するバスに乗ってる時に、突然バーって涙も出てきて……。みんな「え、どうしたの?緊張してるの?」みたいな感じで声かけてくれたんですけど。緊張どころじゃなくて、ちょうどやられたのが、大会の時だったんで今まで平気だったけど。「今日なんかあるのかな……。」とか、変に考えちゃったりして涙も出てきて。どうしよう、どうしようみたいな!
金子:冨田さん、それダメです。もう負けてます!
冨田:気持ち的には多分ボロ負けしていましたね(笑)そのときは。
金子:立て直したって仰っていたけど、全然立て直してないじゃないですか!バスの中……会場着いちゃいますよ?どうしたんですか?
冨田:会場に着いたときもバーって泣いていて。トレーナーやコーチとか、色々思っていることを全部話して気持ちの面で落ち着いてから、リフトに乗ってパイプのある所まで移動してみたいな感じだったので。1回思いっきり涙を出したら、スッキリしたっていうか「もうやるしかないわ!」みたいな。
その後、吹っ切れてスイッチが入り決勝に残ることができたという冨田。終始周りへの感謝の気持ちを述べつつオリンピックを振り返った。金子はリアリティーのある冨田の話を聞き、「僕らメディアの人間がまだまだ聞き切れてないこといっぱいあるんだな。」と言い、番組を締めた。
Podcastでの聴取はこちらから。
番組情報
スポーツライターとして幅広く活躍する金子達仁が一流アスリートたちをゲストに迎え、“心の奥底にある想い”を聴くラジオ番組です。アスリートたちの対談を通し、ここでしか聴く事のできない“Deep”な想いと知られざるエピソードに迫っていきます。
また、オンエアでは聴く事ができなかった部分をディレクターズカット版としてPodcastコンテンツとして配信していきます。