トリガー条項の凍結解除が先送りされる「本当の理由」
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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。燃油価格の高騰対策に関する検討チームがトリガー条項の凍結解除を先送りにする理由について解説した。
トリガー条項の凍結解除、検討チームが結論を先送りへ
自民、公明、国民民主の3党は4月8日、燃油価格の高騰対策に関する検討チームで協議を行った。ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除については結論を先送りする方向で、国民民主党は凍結解除が困難な場合、同等の効果が見込める対策を講じるよう求めた。
なぜ先送りなのか
野村)今回、国民民主党は予算に賛成しました。その理由として、トリガー条項の凍結解除をするのであれば、という話がありました。それにも関わらず先送りになっている。それが「一体なぜなのか」ということが重要だと思います。
飯田)予算に賛成したにも関わらず。
ガソリン含めさまざまなものの値上がりにつながり、経済悪化に ~円安もインフレにつながる
野村)ガソリン価格が上がっているということは、重要な問題です。これからウクライナの戦況悪化が予想されるなかで、原油価格は上がる一方なわけです。そうすると、ガソリンも含めて、さまざまなものの値上がりにつながっていく。「悪いインフレ」という言葉がありますけれども、原材料が上がることによって、経済が悪化するという問題が生じるわけです。
飯田)原材料が上がることによって。
野村)さらにアメリカは金利を上げると言っているので、どうしても円を売ってドルを買うという動きになり、円安になります。円安になると輸入価格が上がってしまって、またインフレにつながってしまう。
財務省との強いつながりで減税に振ることができない
野村)少なくともガソリンだけでも値上がりを抑制しないと、経済に大きなダメージが出てしまう。そのため、こういう状況に備えて法律のなかに組み込んでいたトリガー条項について、震災の関係で凍結していたものを解除すればいいではないかということなのです。ただこれは結局、減税なのです。この減税がどこかの方々にとっては……。
飯田)岸田総理の周りには大蔵、財務の方たちが多いという。
野村)もともと宏池会は、財務省の官僚出身の方々が政界の中心に座ったときにできあがっています。
飯田)池田勇人氏がそもそも事務次官をやっていましたものね。
野村)そういう意味では、財務省とのつながりが強いので、減税がいろいろなところに波及してしまうのです。
減税に対してネガティブな財務省
野村)国民生活が厳しい状況になると、「では減税だ」という声が出てきてしまう。財政規律を重視している財務省にしてみると、「どうなのだ」という話なのです。
飯田)財務省にとっては。
野村)ただ、財政規律について、最近は国のバランスシートを政府と日銀を一体としてみれば、借金をそれほど懸念する必要はなく、むしろインフレにならないかどうかを見ていけばいいのではないかという意見ももちろんあります。その辺りは議論の余地があると思いますけれども、やはり財務省は減税に対して非常に厳しく、ネガティブな考え方なのだと思います。
補助金では元売り業者が値下げしない場合も
飯田)いまも減税ではなく、補助金でやっているわけですものね。
野村)そうなのです。問題は補助金だと、元売り業者の人たちが本当に価格を安くする方向に転嫁してくれるのか、値下げしてくれるのかどうかなのです。自分たちのところに補助金が来ても、別に価格を下げろと命じられているわけではありません。
飯田)どう使おうが構わないと。
野村)いろいろな理由を付けて、「やはり値段はそれほど下がらない」ということになると、それはどうなのかという話はあると思います。
まったく先に動かないというわけにはいかない ~補助金を引き上げる可能性も
野村)ただ今回、これだけ議論が行われていたのに先送りということになりましたが、少しは先に進めなければいけません。現在の1リットル当たり25円という補助金を少し引き上げて、もう少し増やす。あるいは、タクシーに使われる燃料などにも補助金が及ぶような形にしようという方向になるのではないでしょうか。
飯田)ラジオを聴いていらっしゃる方のなかにも、車を運転される方はとても多いです。電車で通勤できるのは首都圏や都市部だけで、ほとんど車社会ですよね。
野村)まさにそうです。日常生活に影響がある話なので、先送りせずに対策しないといけません。
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