このままでは「半年後に失業率が高まる」という根拠
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数量政策学者の高橋洋一が4月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。39年ぶりに高水準となった企業物価指数について解説した。
3月の企業物価指数9.5%上昇、39年ぶり高水準
日本銀行が4月12日に発表した3月の国内企業物価指数は112.0と、前年同月比9.5%の上昇だった。プラスは13ヵ月連続。指数の水準は1982年12月以来、39年3ヵ月ぶりの高さとなった。
飯田)指数を見て、「これで物価が上昇するぞ!」というような書きぶりのところもあります。
総供給が総需要を上回っているので価格には転嫁できない ~GDPギャップ相当の補正予算を打つべき
高橋)これらは仕入れ段階の話なので、商品に転嫁できるかどうかは、それぞれの商品の需要に依存します。品目の需要というのは、すべて足し算をして、また供給についても足し算をして、総需要・総供給を計算するのですが、実は総供給の方がまだ数%大きいのです。ということは総需要があまり大きくないので、転嫁できない業種が多くなると思います。
飯田)需要と供給の法則でそうなりますよね。
高橋)非常に簡単な経済学の話です。確かにコストプッシュにはなっています。ただし、どこまで転嫁できるのかということは、その製品にどのくらいニーズがあるのかによります。ニーズがないのに価格を上げてしまったら、より売れなくなってしまいますので、転嫁することができないのです。
飯田)そうすると、企業経営は少し厳しくなりますか?
高橋)需要がないところでコストプッシュが起きているというパターンなので、厳しいです。このような場合、総需要と総供給の差を表すGDPギャップという数字があって、本当はそれに相当するぐらいの補正予算を打つのがセオリーなのですが、そのような動きもないですね。
このままでは半年後に失業率が高まる可能性も ~30兆円以上あるGDPギャップは補正予算を打たなければ足りない
飯田)メールでも意見をいただいているのですが、「企業物価分がもし消費者物価に転嫁されると思うと、年金生活者の身としてはゾッとします。今月(4月)末に取りまとめられる緊急経済対策は、一過性の対症療法的なものなのか、しばらくの間は続けられるものなのか、推測はつきますでしょうか」ということです。自民党は12日に機関決定したということが出ています。
高橋)当面は予備費での対応となり、最大5兆円です。先ほどのGDPギャップは30兆円以上あると思いますので、補正予算を打たないとなると全然足りませんね。
飯田)13日の各紙経済面などでも、ガソリンのトリガー条項もやらず補助金のみという、「かなり期待外れだ」ということを言っています。
高橋)個別価格が上がっているときは、個別にかかる税金を下げるということで、ガソリン価格はその典型です。あとは消費税の軽減税率を行うのがセオリーなのですが、それをしないということは需給ギャップも放置されたままになります。経済理論から予測できるのは、おそらく半年後くらいに失業率が高まりますね。
飯田)半年後、失業率が高まってくる?
高橋)企業活動が落ちるという意味で。
飯田)人を雇っている場合ではないだろう、ということになるのですね。
高橋)場合によっては、「お客がいないから働くのも勘弁して」ということになるかも知れません。
6月初旬まで補正予算の議論をするべき
飯田)政府は相変わらず賃上げ要請をしていますが、雇用対策は別の部分でやらなければダメだということですか?
高橋)GDPギャップがあるうちは、雇用対策をいくらやっても効かないのです。それが埋まらない限り、雇用は増えません。いまは雇用調整助成金で失業率を抑えているところがあるので、これから半年ぐらいの間にリバウンドがあるかも知れませんね。
飯田)庶民の生活は非常に厳しいですよね。
高橋)選挙前なのにね。国会はそれほど忙しいわけではないので、6月頭まで補正予算の議論をすればいいと思うのですが。いまからやれば間に合いますよ。
飯田)いま国会のなかで重要法案とされているのは経済安全保障の関連法案で、これは衆院を通過しましたし、あとは「こども家庭庁」の設置に関わる基本法です。確かに予算委員会はそのままです。
高橋)国会を開いているので、補正予算を通すのが最も簡単でいい政策なのです。補正予算をつくるのも、それほど時間がかかるわけではありません。
飯田)そうなのですか?
高橋)「補正」ですから。ウクライナ情勢で大変になってしまったところを穴埋めすればいいだけです。
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