外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が5月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。5月10日に行われる尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の就任式について解説した。
韓国大統領就任式 ~アメリカはハリス副大統領の夫を派遣
韓国では5月10日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の就任式が行われ、正式に新しい政権が発足する。アメリカのホワイトハウスは4日、韓国で10日に開催される尹次期大統領就任式に、ハリス副大統領の夫・エムホフ氏を代表とする使節団を派遣すると発表した。なお、エムホフ氏は「セカンドジェントルマン」と呼ばれている。
飯田)「ファーストレディ」ではなく、ハリスさんの夫として「セカンドジェントルマン」と呼ばれています。
宮家)バイデンさんは韓国に別途行くわけですよね。大統領自身が行くのですから、その10日くらい前だけれども、大統領が参列するわけにもいかない。奥さんが行ってもおかしくないのだけれど、今回は副大統領の夫が行かれるということで、韓国の人たちはどう感じますかね?
飯田)セカンドジェントルマンが行くということを。
宮家)中国は副主席の王岐山さんを送り、日本からは外務大臣が行かれるという話です。
飯田)林芳正外相が。
宮家)保守の尹錫悦次期大統領としては、できるだけ多くの要人に来て欲しいというのは当然だと思いますが、各国とも微妙なところです。
野党が強い議会で、法律も通せない ~どこまで尹錫悦次期大統領が政策を実現できるのか
宮家)私は尹錫悦さんが基本的に正しい判断をする人だと思っているから、状況は変わるのだろうと思います。しかし、彼が何をやりたいかということも大事だけれど、周りの環境を含めて、彼がそれを実行できるのかどうかが重要だということです。
飯田)思い通りにできるのか。
宮家)今回の勝利はものすごく僅差でしたよね。その意味では、大統領との関係で、野党になる人たちも決して力が削がれたわけではない。実際に今議会では野党の方が強いのだから。
飯田)次の野党が。
宮家)完全なねじれですよね。それがあって、大統領が法律を通そうにも通してくれないでしょう。それどころかつい最近は、いまの大統領を守るためと報じられているけれども、検察の捜査権を奪う法案を強行採決しました。もっとも、検察に捜査権があっても全然おかしくないと思うのですけれどもね。
飯田)検察から捜査権を取り上げるという。
宮家)原則論を言えば、検察の捜査権があって、警察はその代わりをやっているわけですから。不思議なことをするなと思うのだけれども、背に腹はかえられないのかも知れません。
飯田)現在の文政権をしては。
宮家)そういう状況で、果たしてどこまで次期大統領の言っていることが実現できるのかを考えると、諸手を挙げてという状況ではないと思います。
慎重に様子を見る各国
宮家)その意味では、各国とも慎重に考えてお手並み拝見というところだと思います。韓国とアメリカの関係は決して悪くないのですよ。しかし日韓は悪い。アメリカは日韓関係を何とかよくしたいと思っているに違いないのです。
飯田)日韓関係を。
宮家)そう考えたときに、新大統領は本当にそれができるのだろうかと。アメリカは日本も大事だし、韓国も大事なのです。両者がうまくいかないとなると、対中戦略の観点から考えても、いいことは1つもありません。せっかく「AUKUS(オーカス)」をつくり、クアッドをやっているところで、日韓がうまく機能しないというのは問題です。バイデン政権は一生懸命考えた末にこうなったのだろうなと思います。
対日政策が180度変わるということは期待できない
飯田)韓国のいまの文在寅政権もそうだし、その前の朴槿恵さんも中国に近かった。そこからようやく、アメリカと歩調をある程度合わせられる政権になった。アメリカとしては、ここで何とかしたいと思うけれども、その前の2つの政権で棘が刺さってしまった。
宮家)どこまでできるのか。やはり今も「アメリカよりも中国」、「日本よりも北朝鮮」という人たちがいることは事実ですから。
飯田)韓国の国会には。
宮家)彼らはまだまだ50代くらいですから、影響力を維持できるかどうかは別として、あと20年ほど政界にはいるわけです。そう考えると韓国の政策、特に外交政策や対日政策が今後180度変わるということは、まず期待できないでしょう。それを念頭に置いて、決して悲観的になる必要はないと思うけれども、楽観もできないと思います。
日韓問題について、日本は言うべきことを言うべき
飯田)日本としては、いわゆる徴用工問題など、「ボールは向こうにあるのではないか」という問題が多いわけですよね。
宮家)先日、アメリカの友人が「こんな記事を書いた」とメールで送ってきたので、読ませてもらったのだけれども、アメリカからすれば日本の言うこともわかるけれど、韓国の言うことも理解できるといった調子なのです。
飯田)アメリカからすれば。
宮家)私は、韓国がもし本当に民主主義であって、三権分立であるならば、仮に最高裁が1965年の日韓基本条約について異議を唱えたとしても、もしくはそれを無視したとしても、「行政府は何か言わなければいけないだろう。三権分立なのだから、チェックアンドバランスを行うべきだろう」ということを彼に言いました。
飯田)なるほど。
宮家)それが全然なく、1965年の基本条約を引っくり返すというのは、ゴールポストを動かすだけではなく、ゴールポストをなくしてしまうということではないかと。そんなことでいいのかということを言ったのだけれど、「……」と怒っていましたね。
飯田)アメリカの友人は。
宮家)アメリカからすると、そう見えるのです。「韓国は問題だが、日本もよくない」と思っている人がいることは事実です。ですから、我々は言うべきことはきちんと言うべきだと思います。最近の話ではありません。1965年の枠組みというものにチャレンジをされたら、それは我々だって黙っていられないでしょう。
東アジアの安定維持には日米韓の連携が必要
飯田)ここで沈黙してしまえば、「イエス」と言うことと同じになってしまう。
宮家)それはいけません。ただ、それと同時に、日米韓が連携しない限り、この地域の安定維持は難しいことも事実です。日韓関係改善はどうしてもやらなければいけないと思います。
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