理解できない韓国政府の意図~徴用工訴訟で韓国裁判所が公示送達
公開: 更新:
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月5日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。いわゆる徴用工訴訟で韓国最高裁が新日鉄住金(現・日本製鉄)に賠償を命じた問題で、韓国の大邱地裁浦項支部が日本製鉄への財産差し押さえ命令の「公示送達」を決めたとする報道について解説した。
徴用工訴訟~韓国の大邱地裁浦項支部が日本製鉄への財産差し押さえ命令の「公示送達」を決定
公示送達とは、裁判所のWEBサイトで訴訟関連書類を一定期間公示し、当事者に伝達されたとみなす手続きのことを言う裁判用語である。いわゆる元徴用工訴訟で賠償を命じられた新日鉄住金(現日本製鉄)の韓国内の資産、株式が差し押さえられた問題で、大邱地方裁判所浦項支部が差し押さえ命令決定を日本製鉄側に知らせる「公示送達」の手続きを行っていたことが、3日にわかった。この訴訟をめぐっては、公示送達の手続きが取られたのは初めて。菅官房長官は4日の会見のなかで、「差し押さえ資産の現金化は深刻な状況を招くため、避けなくてはならない」と警告している。
飯田)国を跨いでの裁判になりますので、国の機関を通して書類を送ろうとしたら、「うちではこれは受け取れません」ということになったので、「では張り出しておきます」というのがこの手続きだそうです。
現金化が動き始めたら日韓関係は決定的なものになる
宮家)決めたのは韓国の地方裁判所ですが、これによって手続きが進むということですから、韓国側はこれを続けるということでしょうね。いちばん上の上級審が言っているわけだから、仕方がないのかも知れないけれど、これは日本にとって大変なことです。もし、本当に現金化が動き始めたら、それはレッドラインだと思います。多くの日本の方もそう思うでしょう。状況が決定的なものになって、日韓関係が元に戻らなくなってしまう可能性が高いと思います。
韓国政府の外交政策は変わりつつある
宮家)韓国では総選挙があって、与党が予想以上に圧勝した。考え方は2つあって、仮に大負けすれば「これは支持率を挽回しなくてはならない」となり、日本に厳しくなるだろう。逆に、勝って政権に余裕があるなら、無茶する必要はないということになるのだろうと思っていました。けれども、今回は総選挙で与党が勝った上に現金化を進める、止める気がまったくないということになると、これはもう、韓国の外交政策が変わり始めたのだな、と実感します。
日韓基本条約と日韓請求権協定によって解決済のこと
飯田)この話が出て来たときにも言われていましたけれども、1965年の日韓基本条約と日韓請求権協定によって、もうすでに戦時中の賠償というもの…あそこは日本国であったわけなので賠償ではないのですが、それに関しては解決しているのです。
宮家)問題解決をしたということです。そうでなかったら、1965年からの日韓関係というのは成り立たないわけです。韓半島を併合したのですから、過去には問題があった。しかし、それをアメリカも水面下で努力して、日韓でまとめたのが1965年の合意です。これに韓国の一部の人たちは文句を言っていたかも知れないけれども、国家が約束したことですから国際法上の拘束力があるわけなので、それを韓国政府は守らないといけないのです。ところが、何とそれを、途中でひっくり返すのですよ、韓国は。
飯田)「最高裁が言ったから従うしかない」というようなことになっています。
宮家)最高裁が言っているということは百歩譲ってわかる。だけど、韓国も三権分立の民主主義の国でしょう、あなたたち政府は行政権でしょう。だったら行政権の長として「そうは言っても、国際法があります。従って、行政の立場からするとそれはできません」と司法府に言うべきなのです。言わなかったら、国際的に信用はゼロになりますよ。ところがそれをやらないのです、いまの韓国は。こうなると、「どうつき合っていいかわからない」という気持ちが出るのは当然だと思います。
飯田)日本としてはもう、「こんなことは受け入れられない」と言うしかない。
宮家)しかも、韓国がゴールポストを動かすということは、これが初めてではありません。慰安婦のときもそうです。「解決する気はないのね、どうやってあなたたちと話したらいいの?」という気持ちが深まるだけで、まったく生産的ではないと思います。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。