ニッポン放送「ザ・フォーカス」(12月16日放送)に産経新聞客員論説委員・国際医療福祉大学の山本秀也が出演。日韓の貿易管理当局による局長級会合について解説した。
日韓・輸出規制をめぐる局長級会合~外交駆け引き続く
日本政府と韓国政府は16日、輸出規制をめぐる局長級会合を都内で開いた。日韓の貿易管理当局による局長級会合は3年半ぶり。また、これに先立って15日にはスペインのマドリードで茂木外務大臣が韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相とおよそ10分間対話し、12月下旬の日韓首脳会談の調整を進めることを確認している。最悪と言われている日韓関係がここへ来て動き出したが、今後どのような展開を見せるのか予断を許さない。
森田耕次解説委員)日韓の貿易管理当局による局長級会合はおよそ3年半ぶり。日本からは、経済産業省の飯田陽一貿易管理部長らが出席。韓国からは産業通商資源省の李浩鉉(イ・ホヒョン)貿易政策官らが、それぞれ出席しました。韓国側は今回の局長級会合で、安全保障上の輸出管理で優遇措置を取っている「ホワイト国」から韓国を除外した事案を含め、日本に撤回を求めました。これに対し日本側は、一連の対応は安全保障上の貿易管理に関する国内の運用の見直しだという姿勢を崩していません。日韓対立が深まるなか、11月に軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効回避に絡んで、貿易管理について対話を再開することで合意しており、今回の局長級会合に至ったということです。一方、茂木外務大臣は日本時間の16日未明、訪問先のスペインの首都マドリードで韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相とおよそ10分間対話し、局長級会合について進展を期待する考えを共有したということです。
山本)3年半ぶりということですが、一連の流れは続いています。関連する動きとして、GSOMIAをギリギリのところで延長に踏み切りました。16日の会合はいまのところ、お互いに原則論の言い合いでしかないという印象ですね。
森田)まずは会って話を再開しましょう、ということですかね。
山本)話し合いが持たれたこと自体が関係の1つの駒なのですが、問題は韓国側が求めていることと、日本側が主張していることがまだ嚙み合う状態になっていないということですよね。韓国側はフッ化水素をはじめとする半導体の3品目について、「ホワイト国」に戻してくれと言っているわけですが、日本側は原則論をあくまでも主張しています。ここの話し合いが嚙み合わない限り、歯車は前に進まないですよね。
日本政府のポイントが全部入っていた菅官房長官の発言
森田)この会合について菅官房長官は、16日午前の記者会見で次のように述べています。
菅官房長官)政策対話の結果を予断することはできませんが、輸出管理については国際的な責務として運用して行く方針であります。そもそも、相手国と協議して決定するような性質のものではないと。
森田)相手国と協議して決定する性質のものではない、ということですから、意見交換の場だという感じでしょうか。
山本)いまの菅さんの発言のなかに、日本政府のポイントが全部入っていたと思います。ただ、もう少し通商問題を離れて、日韓関係がいまのままで健全かと言われれば、そうだとはとても言い難い状態ですよね。GSOMIAは北朝鮮の核ミサイルの脅威が現実に存在している以上、地域の安定において1つの重要な要素を持っているわけです。これの意味づけについてはお互いに考えなければならないし、アメリカも強く言って来たので延長ということになりました。しかし、これは簡単に解けるパズルではないですね。
森田)確か韓国はGSOMIAを延長すると決定したときに、「1~2ヵ月ほど日本の態度を見て、変化がなかったら改めて破棄を検討する」と言っていましたよね。
山本)言っていましたが、本当に破棄してしまうと、韓国の安全保障にも返って来る話なのですよね。そこは冷静にならなければいけないと思うのですが、いまの状態では冷静にと言っても話は通りません。一方で、今月(12月)末の日韓首脳会談は日中韓の枠のなかでということになるわけですが、これをやりましょうという意思確認をマドリードでできたのは、進展のように見えます。
10分の対話ではお互いの主張を言い合うのみ
森田)中国へ安倍総理が訪問した際に、日中韓の首脳会談と併せて、日韓の首脳会談が開けるかどうか調整しているようですね。
山本)日本側としては、ここまで関係をおかしくしてくれたのは、韓国のありとあらゆる出方の問題だという意識も当然あります。とりわけ、いわゆる徴用工問題です。これは司法まで絡んで来る話ですから、政治的に落としにくい話ではあります。これを前に進める方法を考えなければ、日韓関係はなかなか元に戻らないでしょう。
森田)スペインで開かれた日韓外相会談でも、いわゆる元徴用工の裁判の問題が話題になったようです。解決するのが重要だという認識は一致したのですが。結局、賠償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みというのが日本の立場です。韓国は司法判断には介入できないという、主張の応酬でした。
山本)10分間ということは、通訳を挟むとそれ以上のことはとても言いようがないですよね。
森田)日韓首脳会談を開いて、急に何かが進むということもなさそうですね。
山本)それも期待し難いです。ただ、会談ができるのならば、やった方がいいという気はします。
ザ・フォーカス
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パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。