経済安保法案成立へ  国による基幹インフラの事前審査実施は「一歩前進」

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数量政策学者の高橋洋一が5月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。経済安全保障の強化を図る新たな法案である「経済安全保障推進法案」について解説した。

経済安保法案成立へ  国による基幹インフラの事前審査実施は「一歩前進」

2021年11月19日、看板掛けを行う岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202111/19kanban.html)

経済安全保障推進法案 ~参議院内閣委員会で可決、5月11日の本会議で可決・成立へ

経済安全保障の強化を図る新たな法案である「経済安全保障推進法案」は、参議院内閣委員会で5月10日に採決が行われ、自民・公明両党や立憲民主党などの賛成多数で可決された。法案は11日の参議院本会議で可決・成立する見通し。経済安全保障の強化を図る新たな法案は衆議院を通過したあと、4月13日に参議院で審議入りし、内閣委員会で審議が行われていた。

基幹インフラの事前審査

飯田)法案では4つの柱を掲げておりました。半導体などの重要な製品のサプライチェーンについて、また、軍事転用可能な機微技術の特許非公開などが注目されています。どうご覧になりますか?

高橋)すべて重要ですが、特に注目しているのは、基幹インフラの事前審査です。基幹インフラというのは、電気やガス、航空、鉄道などです。このような基幹インフラに企業が参入する際、国が初めて事前審査できるわけです。

飯田)初めて。

高橋)いままではありませんでした。国による事前審査がないと、いろいろな問題が地方で起こるのです。

国による基幹インフラの事前審査がないために、地方で海外企業などでも参入しやすい ~上海電力の問題

高橋)このような国の制度がなければ、地方などには簡単に参入できてしまうのです。チェックするのは「事業ができるかできないか」だけなので、いろいろな企業が入ってしまう。いま中華系のものが洋上の電力にも入ってきていますが、そこが海流や海底などを調べて、さまざまな重要情報がダダ漏れしているという新聞記事もありました。

飯田)なるほど。海底の情報は大事なのですね。

高橋)ものすごく重要です。事前審査でどこまでチェックできるかという問題はありますが、一応はこういう法整備があれば、地方の人も外資系企業を入れるときの1つの参考になると思います。

飯田)国による事前審査があれば。

高橋)いままでこういう制度はありませんでした。国がやらなければ、地方は緩いので、既にいろいろなものが入って問題になりつつあるのです。特に海外企業になると、地方政府の方ではわかりません。

飯田)海外企業になると。

高橋)今後、地方のインフラに関しては、国の審査を受けて、クリアしたものを入札資格者にするというやり方になると思います。それがいままでなかったので、大阪の上海電力の問題などが起こるのです。あれは入札の手続きにダミー会社を入れて、そのあとに上海電力が入ったということです。地方はいままでも、入りやすいと言えば入りやすかったのです。

飯田)なるほど。

高橋)特に安全保障に関しては、国が方針を示さないと、地方政府では示せないのです。安全保障は国の専門業務のようになっているのですから、地方では無理です。きちんとした事前審査ができるかどうか。さらに、それを地方政府がどのように活用するのか。

基幹インフラに関して国が事前審査をするということは一歩前進

飯田)いままでだと、例えば地方が独自に条例をつくろうとしても、「法律がないのにどうするのか」となってしまうわけですか?

高橋)審査ができないでしょう。安全保障の観点から、地方政府が審査をするということはあり得ませんし、できません。そうすると、日本に密かに忍び込んでおかしな活動をしようと思う外国企業は、地方に行くでしょう。いろいろな情報も入手できるし、審査も緩いということであれば、そういうことになってしまいます。それが今回、経済安全保障に関連して国が事前審査を行うというのは、一歩前進だと思います。

経済安保法案成立へ  国による基幹インフラの事前審査実施は「一歩前進」

政協全国委、新年茶話会を開催(北京=新華社記者/鞠鵬)= 2020(令和2)年12月31日 新華社/共同通信イメージズ

既に中国系企業が参入している ~いままで野放図だった

飯田)ある意味、いままでは経済活動の自由のようなもので、緩すぎたところがある。

高橋)そうですね。特に基幹インフラについて、外資では中国系企業が日本にたくさん来ています。いままで野放図だったということの反省から、今回の話が出てきたのではないかなという気がします。

飯田)この法案は、5月11日の本会議で可決・成立する見通しです。

(※編集部注:2022年5月11日朝時点の情報)

IT関連の事前審査が役人にできるのかどうか ~デジタル庁などでの教育が必要

飯田)「経済安全保障推進法案」については、衆参両院でいろいろ審議されていました。さまざまな論点も出てきましたけれども、結局、今回は方針が出ている4本柱でやると。小林鷹之大臣も答弁で話していましたが、「これで終わるものではない」ということです。

高橋)それはそうでしょう。最初は不十分ですし、これからバージョンアップしていかなければなりません。しかし、バージョンアップの前に、そもそもIT関連の事前審査が役人にできるのかどうかについては、心もとないですよね。

飯田)事前審査するにしても、情報の部分が……。

高橋)全然わからないでしょう。私も経験があります。30年ほど前、金融関係で海外からの新商品が来たのですが、審査できないわけです。私はその担当官に指名されて、全部やらされたことがありましたが、難しかったです。最新の金融技術のようなものが山ほど新商品として来るのですが、それを見なければならない。

飯田)向こうから文献を取り寄せたりするのですか?

高橋)最新の金融技術だから、普通の役人には無理なのですよ。どうしようもないという感じでした。現状もこの話に近いのではないですか。IT関係などは大変だと思いますよ。例えばマルウェアをある企業が取引先から入れてしまったとき、どのように防ぐかということを審査しなければいけないのでしょう。とても大変ですよ。

人の部分の審査をどうするのか

飯田)他にも、人の部分の審査をどうするのかという話もあります。国家公務員等々に関しては特定秘密保護法がありますが、それをどこまで適用できるのか。また学術系はどうなのかという話にも当然なります。

高橋)いまはいろいろな手段を使ってくるので、審査するにしても、緩い審査をしていたら全部スルーパスになってしまいます。ですから、実効性があるかどうかということも問題になります。デジタル庁かどこかで教育しないと無理ではないかなという気がします。

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