ロシアに対して最も効果を上げている「アメリカの情報戦」
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が5月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシアのウクライナ侵攻における「情報戦」について解説した。
アメリカの「情報戦」
飯田)ウクライナ情勢についてさまざまな報道もされていますが、宮家さんは産経新聞に隔週で書かれている「宮家邦彦のWorld Watch」でも、情報戦について触れていらっしゃいます。
宮家)アメリカはロシアに対して、軍隊は出さない。直接軍事介入はしない。しかし、それ以外のことは何でもやる、とこれまで私は言っていたのですが、なかでも、最も効果的なものの1つが情報戦です。
飯田)最も効果的なものの1つが。
宮家)アメリカは去年(2021年)の4月くらいから、既にロシア側の動きを察知して注意喚起し、懸念を表明していた。11月くらいからは、国防・国務両長官をウクライナに派遣し、同国を「支援する」、ロシア軍には異常な動きが見られると警告していた。そして、現在に至っているわけです。
アメリカの情報によってロシアの将軍が殺害された
宮家)その意味では、アメリカは情報戦をリードしてきたと思います。ポイントは3つあります。まず第1に、今回のアメリカの情報戦は情報力が圧倒的でした。ロシアの将軍がウクライナ軍に殺害されましたが、どこにいるのかという情報をアメリカが教えたということを、ニューヨーク・タイムズが報じていました。これも情報戦の一部なのです。「誰がどこにいるのかわかっているのだぞ」という脅し、抑止ですね。
情報を開示するということはリスクも伴う ~それでも徹底的にやる
宮家)第2に、情報を開示するということは、秘密を開示するということで、これは長期戦を覚悟の上でのことだと思います。情報は「ただ」ではないので、電子的に聞く場合もあるけれど、当然、人的な情報源もあるわけです。それは極秘中の極秘なので、ある情報を不用意に「ポロッ」と言ってしまうと、誰が言ったかわかってしまう。
飯田)情報源が。
宮家)ですから、秘密の情報を開示するということは、情報源がわかってしまうということなのです。そのリスクがあるにも関わらず、今回、惜しげもなく情報を開示したということは、アメリカは今回「徹底的にやるのだ」ということです。
情報をうまく使うことで抑止にもなる
宮家)3つ目に、いちばん大事なポイントなのですが、戦争というのは、実際に撃ち合うような交戦だけではないのです。情報をうまく使うことによって、抑止も可能だし、実際にどうしても戦わざるを得なくなったときに、相手に関する情報を知れば、これは孫子の兵法と同じです。相手を知ればいいわけですから。
飯田)孫子の兵法と同じ。
宮家)極めて強い抑止力になるということです。抑止力というと、普通、日本では「敵基地攻撃能力」というようなことを言うのだけれども、攻撃力だけではなく、抑止力の一環として情報戦を本気で考えなければいけません。そのためには対外情報機関がなければいけない。しかし、それが今の日本にはないのです。
飯田)いまは日本にはないですよね。
宮家)この3点が私はポイントだと思います。
抑止が効かないときもある
飯田)アメリカはそれほど前から情報も出しながらやってきたけれど、結局、ロシアは侵略を行った。この事実を見て、「抑止は効かなかったではないか」と指摘する声もありますが。
宮家)抑止というのは効かないときもあるのです。今回、抑止は失敗してしまった。でも、失敗にはいくつか理由があるのです。こちらが余計なことを言って失敗したのではなく、むしろプーチンさんが判断を間違えたのです。バイデンさんがアメリカ軍は介入しないと言ったことが理由ではないと、私は思います。
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