クアッドがNATOのような「軍事同盟」になることを恐れる中国
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評論家の石平氏が5月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。クアッド首脳会合に対する中国の反応について語った。
クアッド首脳会合、共同声明で中国を念頭「威圧的行動に強く反対」
日本、アメリカ、オーストラリア、インドによる4ヵ国の枠組み「クアッド」の首脳会合が5月24日、総理官邸で開かれ、共同声明が発表された。中国を念頭に、現状を変更し、地域の緊張を高めるあらゆる威圧的で一方的な行動に強く反対するとし、また4ヵ国の首脳が包括的で強靭な自由で開かれたインド太平洋への揺るがない関与を新たにすると表明した。
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具体的に安全保障の枠組みに進めないと形式的なものに終わる恐れも
飯田)「クアッド」の共同声明に対して中国が反応していますが、どうご覧になりますか?
石)共同声明自体は概ね評価できるのですが、中国を名指ししなかったのは問題だと思います。また、クアッドの枠組みができてから数年経ちます。そろそろNATOのような、安全保障の枠組みに具体的に進めるべきです。このままでは形式的なもので終わる恐れもあります。
NATOのような軍事同盟になることを恐れる中国
石)一方で中国は、バイデン大統領が日本に来てからの一連の動きや、台湾問題も含めて、クアッドに対しては神経を使っています。クアッドという枠組みが将来、NATOのような軍事同盟になることを彼らは恐れているのです。
飯田)NATOのようになることを。
石)バイデン大統領の台湾問題に対する発言に関して、中国はそれほど激しく反応しなかったけれども、クアッド首脳会合の開催当日にロシアと爆撃機の共同飛行をしたり、日本大使館に対して異議を申し立てるなど、かなり過剰に反応しています。クアッドという枠組みがNATO的な軍事連携に発展していくことを、中国が恐れているからです。
「自由で開かれたインド太平洋」を気にしていなかった中国の誤算
数量政策学者・高橋洋一)中国がクアッドを意識しているということですが、「AUKUS(オーカス)」、「クアッド」、「ファイブ・アイズ」という3つの枠組みがあります。アジアのなかで日本だけが枠組みの一部に入っているのですが、それは中国にとって脅威なのですか?
石)中国は、昔は日本を下に見ていたのですが、気が付くと安倍政権以降、日本が中国包囲網の中心になっているのです。
飯田)安倍政権が「自由で開かれたインド太平洋」の旗を掲げ、その後進められていることに対して、思うところがあるのでしょうか?
中国が戦狼外交や覇権主義戦略を進めた結果、クアッドができた
石)当時の安倍首相がこの構想を出したとき、中国はまったく気にしていなかったのです。しかし、その枠組みが目の前にでき上がってしまったということが、彼らの誤算でした。習近平政権がこの数年間、戦狼外交や覇権主義戦略を進めた結果、クアッドという枠組みができ上がったということに彼らは気が付いていないのです。
飯田)なるほど。
石)そもそも昔はオーストラリアもインドも、中国との関係は悪くなかったでしょう。
飯田)そうですね。
石)中国はインドもオーストラリアも、自分たちの方から敵に回してしまったのです。クアッドができ上がったいちばんの功労者は習近平さんかも知れません。
政権が変わったオーストラリアへの中国の反応
飯田)オーストラリアは政権が変わりました。労働党になっても、中国に対しての反応は変わらないですか?
石)オーストラリアの国内事情はそれほどわかりませんが、新たな首相が就任してからクアッドに参加しています。オーストラリアの新首相が就任してすぐに、李克強首相が祝電を送ったのですが、何の反応も示していません。
中国が企むソロモン諸島での軍事基地建設 ~南シナ海の緊張を高めることに
飯田)中国の王毅国務委員兼外相が、ソロモン諸島などを訪問するということですが、南洋の国々に対して、いろいろ中国は手を出していますね。
石)そうですね。オーストラリアが中国から離れて、クアッドやAUKUSもできた。中国はそれに対抗する枠組みをつくらなければなりません。しかし、ついてくる国が少ないので、結局、中国の経済援助なしでは成り立たないような国々を束ねて対抗することになります。ソロモン諸島で中国が軍事基地をつくろうと企んでいますが、それは南シナ海の緊張を高めることになると思います。
飯田)甘く見てはいけないということですね。
石)甘く見てはいけません。
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