尾上右近 歌舞伎400年の歴史のなかで、初めて歌舞伎俳優と清元の二刀流となる

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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(4月26日放送)に歌舞伎俳優の尾上右近が出演。歌舞伎役者と清元の二刀流について語った。

尾上右近 歌舞伎400年の歴史のなかで、初めて歌舞伎俳優と清元の二刀流となる

尾上右近

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。4月25日(月)~4月29日(金)のゲストは歌舞伎俳優の尾上右近。2日目は、歌舞伎役者と清元の二刀流について---

黒木)7歳で初舞台を踏まれたのですね。

尾上)そうです。

黒木)お父様は清元総家七代目の清元延寿太夫さんでいらっしゃって、右近さんも清元でいらっしゃるのですよね。

尾上)はい、そうです。

黒木)歌舞伎俳優でありながら、清元の方もやっていらっしゃる二刀流ですね。どちらも大事だとは思いますが、初舞台を踏まれたときから、御自分で志すものはあったのですか?

尾上)「春興鏡獅子」という演目があるのですが、舞踊作品のお正月の物語で、前半は腰元という女中さんの役で、後半は女中さんに乗り移った獅子になって舞を納めるという能からとったような作品です。曾祖父の六代目菊五郎という役者を小津安二郎監督がフィルムに収めた映画があって、それを祖母の家で3歳のときに見たのをきっかけに、歌舞伎に目覚めました。

黒木)3歳のときに。

尾上)周りのみんなが戦隊もののヒーローに憧れているタイミングで、私は「鏡獅子になりたい」と思っていました。人生の衝撃は、それがいちばん大きいですね。それを上回る衝撃はこれまでないです。「これが好きだ!」と、ものを好きになる瞬間が好きなのですが、ものを好きになるということも、そのとき初めて経験したと思います。

黒木)そうなのですね。

尾上)それから歌舞伎の舞台を観に行くようになりました。父は清元という音楽の仕事なので、父が出る舞台を必然的に観に行くようになりまして、父のいとこが十八代目の勘三郎おじさんだったので勘三郎さんの舞台を観る機会も多かったです。「歌舞伎もきちんと観たい」と歌舞伎の魅力に目覚め始めて、「歌舞伎をやりたい」と思うようになりました。

黒木)歌舞伎をやりたいと。

尾上)そうこうしているうちに、7つのときに勘三郎のおじ様に声を掛けていただいて初舞台に立ちました。それまでも「思い出づくり」という大人の空気はあったようなのですが、私は「これがデビューだと、始まったぞ」という気持ちでした。

黒木)勘三郎さんの舞台が初舞台ですか?

尾上)そうです。

黒木)それはまた、カラーが違いますよね。

尾上)そうですね。でも踊りが好きだったので楽しかったです。3歳で歌舞伎に目覚めてから、日本舞踊のお稽古と清元のお稽古をずっとやらせてもらっていましたし、初舞台も舞踊劇だったので、「踊りが踊れる」「毎日発見がある」「毎日舞台に出られる」という、毎日がパラダイスのような感覚でした。千秋楽には号泣いたしまして、それがきっかけになりました。

黒木)歌舞伎をやるきっかけに。

尾上)清元よりも先に俳優としてのタイミングが訪れたので、清元の方もやらせてもらいたかったのですが、やはり実践することによる衝撃が大きかったので、そこから役者をやめるということは考えられなくなります。ずっとやっていくつもりでいて、当代の菊五郎のおじ様に声を掛けていただいて「尾上右近」という名前をいただきました。これはもうあとには引けないというか、役者としてはとんとん拍子で行ってしまったので「さて清元はどうしよう」と。

黒木)清元としては。

尾上)「役者を選んだなら、清元はどうするの?」と言われたときに、初めて「清元は役者をやっていたらできないのかも知れない」と気が付いたわけです。12歳くらいのときですね。

黒木)12歳のときに。

尾上)「清元を棒に振ることになるのか。でも役者をやめることは考えられない」と当時は思っていたのですが、うちの父の思いとか、私も清元をずっと続けていくなかで「プロとして両立できないものだろうか」という話になり、諸先輩方にご相談して、師匠の菊五郎のおじ様の許しがありました。

黒木)菊五郎さんの。

「とにかくやってみろ」ということになりましたのでやらせていただいていますが、そのなかで実践と経験をものにしていきたいです。これができるということになれば、例えば普通の歌手と歌舞伎役者をやってみるなど、やりたいことを全部できる環境につながっていく1つの可能性になるかなといまは思っています。

黒木)歌舞伎界のなかで、歌舞伎俳優であり清元でありという二刀流は右近さんが初めてだそうですが。

尾上)そうですね。

黒木)歌舞伎400年のなかで初めてなのですね。カテゴリーが違うものを飛び越えていくと可能性が広がりますよね。

尾上右近 歌舞伎400年の歴史のなかで、初めて歌舞伎俳優と清元の二刀流となる

尾上右近

尾上右近(おのえ・うこん)/ 歌舞伎俳優

■1992年5月28日生まれ。清元宗家七代目・清元延寿太夫(きよもとえんじゅだゆう)の次男。曾祖父は六代目尾上菊五郎、母方の祖父には俳優 鶴田浩二。
■2000年、7歳のとき、歌舞伎座『舞鶴雪月花』の松虫で・本名の岡村研佑で初舞台。12歳で・新橋演舞場「人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)」の長兵衛の娘・お久役ほかで二代目尾上右近を襲名。2018年1月、清元栄寿太夫を襲名。
■2017年『スーパー歌舞伎IIワンピース』では主役ルフィを演じた。
■俳優と清元の両立が注目を集めるほか、テレビ・映画・バラエティなどでも活躍。大河ドラマ『青天を衝け』などに出演し、初出演映画の『燃えよ剣』では、会津藩藩主・松平容保を演じ、第45回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞。
■5月2日~27日には、歌舞伎座で『團菊祭五月大歌舞伎』。第三部「弁天娘女男白浪」で、弁天小僧菊之助を演じる。
※團菊祭は、近代歌舞伎の確立に貢献した、九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の功績を称えるために、昭和11年から始まり、近年の歌舞伎座では五月興行の恒例の祭典として上演。

 

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

番組HP

毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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