いまこそ「呼び水」としての財政出動が必要 「横ばい」の4月の景気動向指数

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数量政策学者の高橋洋一が6月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。内閣府が発表した4月の景気動向指数について解説した。

いまこそ「呼び水」としての財政出動が必要 「横ばい」の4月の景気動向指数

2022年6月5日、記者の質問に答える岸田総理 ~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202206/05bura.html)

4月の景気動向指数、横ばいの96.8

内閣府が6月7日に発表した4月の景気動向指数の速報値は、景気の現状を示す「一致指数」が前月比で横ばいの96.8となった。新型コロナ感染拡大が落ち着いて社会経済活動が正常化しつつあり、小売業が堅調。基調判断は景気が拡大局面にある可能性が高いとする「改善」に据え置いた。

このタイミングで呼び水としての財政出動が必要

飯田)家計の消費などはマイナスで、4月の実質賃金もマイナス等々という数字も併せて報道されています。

高橋)よくはないです。よくはないので、こういうときには、呼び水として政府の方で財政出動するべきタイミングなのです。それをやらないと、チャンスを逃してしまいます。

飯田)チャンスを。

高橋)強制貯蓄の爆発だと言いますが、呼び水をしなければ無理だと思います。どうしてこれを自然に出てくると解釈するのでしょうか。自然に出にくいから、経済が大変になっているのだと思います。

一桁少ない補正予算 ~2.7兆円ではなく、27兆円に

飯田)ヨーロッパ、特にアメリカなどは強制貯蓄からの「ペントアップ需要」などと言いますけれども。

高橋)その前に、大きな財政出動をしているからです。

飯田)そうですよね。

高橋)大きな財政出動をすればそうなります。だから「呼び水が必要」だと言うのです。アメリカの財政出動の話を抜きにして、結果だけを言ってはいけません。いろいろなプロセスがあり、経済理論に基づく話なのです。このときに財政出動をすればいいのです。「2.7兆円」ではなく、「点を1つ取ったくらいの大きさにすればよろしいでしょう」と言っているだけですけれどもね。

飯田)今国会で成立した補正予算は2.7兆円でした。

高橋)点が余計なのです。「27兆円」くらいでよろしいのです。そうすれば、冷え切った消費のマインドも暖かくなるでしょう。

飯田)周りも使っていくということになれば。

財政出動をしてGDPギャップを埋めるべき

飯田)一方で、輸入価格が高騰し、全体の物価も上がっているという批判もありますが。

高橋)そのウェイトはどのくらいかというと、2~3割でしょう。物価に対するウェイトなんて。何より「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)」は、0.8%しか上がっていないのです。上がっているのは主にエネルギー関連と食料品です。だから本当にコストプッシュインフレなのです。

飯田)そうですね。

高橋)コストプッシュインフレになれば、すぐに転嫁するというのだけれども、需要がないので転嫁しづらくて困っているのではないですか。そのためにも転嫁できるように景気対策をやって、最終需要を高めることでGDPギャップを埋めればいいのです。簡単な答えなのですが、やらないので、なかなかうまくいきません。

飯田)そんなに財政出動したくないのですか?

高橋)したくないからこうなるのでしょう。「民間需要が出るからGDPギャップなど関係ない」と平気で言うのでしょう。この数字を見ると、あまり出ていないと思いますよ。

飯田)目先がどうなるかわからないときに、リスクを負ってお金を出すかというと、出しづらいですよね。

高橋)そういうときに、政府の方の役割があるのです。それが「呼び水」というものです。

いまこそ「呼び水」としての財政出動が必要 「横ばい」の4月の景気動向指数

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

「Go To キャンペーン」は呼び水の最たるもの

飯田)「呼び水」と言えば、「Go To キャンペーン」は予算もついていましたよね。止まっているのは政策判断として止まっているだけです。

高橋)何もしないから、止まっているのではないですかね。

飯田)放置しているから。政治家が「Go」と言えばすぐにGoになる。

高橋)こういうものは呼び水の最たるものです。

節電対策の一環として「断熱改修」に予算を付ける

飯田)一方で、国民に対しての要請ということで言うと、7日に関係閣僚会議が開かれました。「また夏に電気が足りなくなるかも知れないから、皆さん節電してください」と。「クーラーは28度に設定してください」というような話がありました。

高橋)経済活動と逆行しますね。

飯田)そうですね。

高橋)こういうときの対策としては、断熱改修などがいいのです。断熱改修すれば火力発電が少なくなるので、景気対策にもなります。

飯田)家を改修するということになれば。

高橋)断熱改修などは項目として入っているだけで、予算がほとんどないのです。やはり予算を付けないとダメですね。

飯田)かつて家電のエコポイントを付けた際は、こぞってみんな買い替えたことがありました。

高橋)断熱改修をすべき公共施設はあると思うのです。そういうところに予算を付ければいいと思います。

予算を付けることで景気の呼び水的な効果がある

飯田)今回は2.7兆円の補正でしたけれども、さすがに「それだけでは足りない」という話になりますよね。

高橋)本当は参議院選挙の前にやるのです。「遅ればせながら」になってしまうのでしょう。だから補正ということになっているのでしょうけれども。

飯田)次の補正、次の臨時国会でという。

高橋)選挙で戦いにくいのではないですか。2.7兆円だと、削った予備費を穴埋めするレベルですから。

飯田)半分以上はそれに使われる。しかも予算は、執行してから実際に効いてくるまではタイムラグがあります。

高橋)もちろんあります。それでもやった方がいいのです。民間は先が見えるから。

飯田)先が見えれば、それだけで呼び水的な効果もある。

高橋)すぐ効果が出なくても、先が見えるだけでいいと思います。

防衛費 ~補正予算から15兆円は出すことができる

飯田)仮にですけれども、参院選が終わって、そのあとの臨時国会で補正予算の話になったとして、やはり規模感はGDPギャップを埋めるくらいは必要なのですか?

高橋)必要なのですけれども、これで自民党が大勝したら、安心して何もしないかも知れない。それがあとで響いてくるのです。

飯田)防衛費の話なども、すぐにやらないとアメリカが怒るのではないかと思うのですが。

高橋)そうでしょうね。

飯田)本来なら補正につけるとか。

高橋)前も言ったかも知れませんが、補正予算で防衛費の話をするのが最も簡単なのです。骨太のなかでも一応、来年度予算になっているのでしょう。補正予算でやればいいのです。そうするとまた「財源が」と言うのだけれども、補正予算のなかにたっぷりとありますけれどもね。

飯田)いまの本予算のなかに。

高橋)たくさんあります。15兆円くらいは簡単に出せます。

飯田)15兆円も簡単に出せるのですか?

高橋)15兆円くらいは出せます。

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