細田問題は「永田町政治の課題」を凝縮している
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ジャーナリストの鈴木哲夫が6月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。立憲民主党が提出した岸田内閣と細田衆院議長に対する不信任決議案について解説した。
立憲民主党、内閣不信任決議案・細田衆院議長への不信任決議案を提出
立憲民主党は6月8日、物価高への政府の無策ぶりは看過できないなどとして岸田内閣に対する不信任決議案を提出した。また、週刊誌にセクハラ疑惑が報じられ言動が議長としての資質に欠けるとして、細田衆議院議長に対する不信任決議案も提出している。
飯田)提出されると最優先で審議するということで、きょう(9日)、本会議で採決が行われます。否決の方針というところですが(※編集部注:2022年6月9日朝時点の情報)。
鈴木)与党含めてですね。2つ出ているので、分けて考えなければいけないと思います。内閣不信任案というのは、嫌な言い方ですが、恒例のような形です。しかし、野党のある種の姿勢であり、責任であるとも思います。
飯田)内閣不信任案は。
鈴木)ただ、なぜ内閣不信任なのか、その理由について国民が納得できるかどうかというところは絶対に必要です。
内閣不信任案「政府の物価高騰対策が不十分」だけでは弱い ~コロナ禍での対応はどうだったのか
鈴木)内閣不信任については、「物価高に対する無策ぶりを看過できない」ということですが、少し弱いのではないかという気がします。
飯田)弱い。
鈴木)コロナ禍はまだ終わってはいないと思っています。私は「コロナ難民」と言っていますが、この2~3年で溢れていった人たちや亡くなった人たちがとても多いのです。そのような人たちへのアフターケアを、何もしていないのではないでしょうか。そもそも、これだけコロナ禍で多くの人が苦しんだのに、対応はどうだったのか。それも含めた内閣不信任の理由であればわかるのですが、今回の理由だけでは少し弱いかなと思います。
細田問題に関して、細田衆院議長は疑惑についての説明責任がある ~スキャンダラスな問題だけではない
鈴木)むしろ、内閣不信任よりも、細田さんの不信任の方が重要です。細田問題については、週刊文春が続けて報じているスキャンダラスな話もあります。これも、もちろん大事です。
飯田)今度は選挙における実質買収のような報道も。
鈴木)週刊文春が頑張って報じているのですが、私はそれよりも「10増10減」についての発言が……。
飯田)定数是正について。
鈴木)小選挙区制度そのもので「2大政党を目指す」と言って、いまの制度を取り入れたのに、政治がほとんど努力をしていないと思います。国民は民主党政権のときに勇気を持って、政権交代でこの制度をやってみようということになったけれど、政治側は相変わらず2大勢力になる気配もありません。
問題のある細田衆院議長の数々の発言
鈴木)その意味では、選挙制度そのものも含めて議論するべきなのに、「10増10減案に賛成、反対」というのは、「いまの制度では自民党の議席が多いから、これが減るのはどうか」というところに拠って立つように見えてしまうのです。
飯田)自民党の議席が多いから。
鈴木)国会は自民党だけではありません。少数政党など、いろいろな人たちがいて、そこで何かを決めなければいけない。それをリードする人が議長です。この人が個人的なことを言うのはどうなのかという問題もあります。
飯田)党籍を外れてということになると。この方は、ある意味では全員の代表でもあります。
鈴木)そのような資質の問題もありますし、選挙制度だって本質的な議論になっていないのではないか。他にも、100万円しかもらっていないという発言もありました。
飯田)そうですね。月100万円しかもらっていないと。
鈴木)これも政治家が稼業になっているという意識など、いろいろなことが細田問題にはあるのです。細田さんはそれらのことに議長として、しっかりと説明責任を果たさなければいけないのですが、それがありません。
細田問題は永田町の政治の問題を凝縮している ~細田衆院議長への不信任案の行方を注視するべき
鈴木)これは、いまの永田町の政治の問題を凝縮しているような話です。細田問題を各党がどのように扱うのか。維新などは採決の際に欠席するという形で対応していますが、むしろ自民党も試されていると思います。国会のトップのあり方も含めた本質的な問題なのです。自民党はどのように反応するのか。多数派ではありますが、自民党も国会の一員です。その意味では、細田さんの不信任案の行方を私たちはしっかりと見守り、各党の言い分に耳を傾けなければいけないのだと思います。
飯田)選挙制度1つを取っても、1票の格差を是正すればするほど、地方の声が上がらないではないかという指摘もあります。
参院選での「見せ場」となる細田問題と内閣不信任 ~そこにどの野党が乗るか
飯田)内閣不信任案についての対応も含めて、みんな参院選を意識しながらやっているという感じでしょうか?
鈴木)その通りです。立憲の幹部を何人か取材したのですが、最後の見せ場は、細田議長の問題と内閣不信任だと言っていました。今回、野党が選挙でなかなか結束できていないということもあるのですが、そこへの踏み絵のようなもの……乗ってくるのか、こないのか。完全に決別するのかどうかということも含めて、選挙を意識してこのカードを切っていくということです。
飯田)参院選を意識して。
鈴木)狙い通りいくかどうかは別にしても、とにかく参議院選挙は近付いています。各党も調査を行っていて、立憲などはもう3回ほど調査しています。自民党も6月の頭くらいにやるという話です。「自民党が余裕のある戦い方をしているな」という印象はありますが、ゴールデンウィーク前とは、状況がかなり変わってきています。
野党共闘は12議席 ~どう影響するか
鈴木)新しい人たちが出馬しているということもありますし、最初は維新に勢いがあったのですが、それが落ち着いてきているということもあります。今回、気になる野党の1人区の話ですが、32議席のうち12議席しかできませんでした。
飯田)共闘が完成した数が、ということですね。
鈴木)そうです。立憲としては、地域に任せるということで「政党対政党」という色を消したのですが、立憲の幹部の言い分としては、「32議席すべてやったとしても、本当に勝ちにいけるのは10~12議席くらいしかない。前回も獲ったのは10議席しかありません。その意味では、後退していない」と言うわけです。しかし、32議席すべてで対決構図ということになると、やはりムードが違ってきますよね。それが影響してくると思うのですが。
飯田)違いますね。
鈴木)現実的に12議席で勝負をかけているのだから、12議席でもいいのだと言うのですが、私としてはどうなのかなという気がします。
日本維新の会がどこまで伸ばすか ~「緩み」が心配な自民党
鈴木)もう1つは、維新がどうなるのかということもあります。また、自民党も数字的には余裕がありますが、東京などでは、いまのところ自民党は2人立てていて、「優位なら2人とも」という数字は出ています。ただ、東京は無党派が日本で最も多いので、どのような風が吹くのかがわかりません。それによって、一気に変わる可能性もあるのです。
飯田)無党派が多いだけに。
鈴木)自民党は東京で組織割、票割がうまくいかなかったことが過去にもありますよね。丸川珠代さんが勝って、保坂三蔵さんが落ちてしまったこともありました。最後の1議席のようなところでどうなるか。比例も調査では18議席くらいいくのではないかという予測もあるのですが、比例も風が吹くと変わってきます。自民党も決して気を抜いてはいけないということで、現場を引き締めています。
飯田)そうですよね。とある首都圏の衆議院議員の方に取材をしたら、やはり「緩み」というものを心配していました。
鈴木)ありますね。そういう意味では、まだ1ヵ月あるのだから、ということなのだとは思いますが、現状ではそのような感じです。
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