評論家の石平(せきへい)氏が6月13日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。中国・習近平政権の行方について解説した。
辛坊)中国は国家主席の任期を「2期10年まで」とする憲法の規定を2018年に撤廃しており、習近平国家主席が終身国家主席を目指していくのではないかという観測があります。一方、最近では中国国内でも「本当に3期やるのか」と疑問視されているような報道があるほか、海外メディアの中には「もう無理なんじゃないか」といった情報を流すところもあります。本当のところは、どうなんでしょうか。
石)習国家主席が強行すれば、続投はできますよ。習国家主席は、中央軍事委員会主席でもあり、人民解放軍を掌握しています。また、共産党の中にも習国家主席の子分は今もいっぱいいるんですから。ただし、強行すればできるんですけれども、3期目に入ったとしても果たして今までのようにワンマン体制を取れるかどうかは最近、疑問の声が挙がり始めていますね。
というのも、習国家主席によるこの数年間の政策はほとんど失敗に終わっていて、裏目に出ているんです。それで、共産党の中にも、一般の国民の中にも、「この人がさらに5年やったとしたら、共産党政権そのものが潰れるんじゃないか」という危惧が表れるようになってきました。空気感が変わったきっかけは、「ゼロコロナ政策」による上海のロックダウンです。あれは、やり過ぎでしたね。今、習国家主席の存在自体が中国にとっての大問題になっているといえます。
辛坊)中国のリスクの最大要因は習国家主席だと。
石)そうです。しかし、だからといって、習国家主席続投の流れを完全に食い止められるかどうかは微妙です。
辛坊)食い止めるような政治勢力などはないんでしょうか。
石)今は、ないです。政治勢力がそこまで結集されてはいないですね。
辛坊)そうなると、今の状況下でいうと、何だかんだ悪口、陰口をたたかれながらも、3期目をスタートさせるという見方が強いわけですね。
石)そういう可能性が高いです。とはいっても、習国家主席に対する抵抗勢力もあります。ただし、習国家主席の3期目を食い止めるというよりも、習国家主席が3期目をやるという前提で、3期目になったところで新しい指導部に抵抗勢力がどれくらい入れるかが焦点になるといえます。
辛坊)習国家出席が就任直後、「トラもハエもたたく」として反腐敗キャンペーンを掲げ、政敵を次々に追放したじゃないですか。あの追放された政敵の人たちが反撃に転じるようなことはないんですか。
石)追放された人々は皆、刑務所の中ですから、反撃のしようはないです。ただし、江沢民派とか、胡錦濤派の中で、習国家主席による問題のリスクの高さを認識している人が増えていることは事実ですね。抵抗勢力が李克強首相を担いで習国家主席に対抗するということもあるかもしれません。仮に習国家主席の続投を食い止めることができなかったとしても、新しい指導部の中で改革派が一部の力を持つようになった際には、習国家主席の独裁にさせないようにどうするか。おそらく、そこが今後の中国政局の焦点になります。
辛坊)さて、その中国ですが、国際的な懸案でいうと、台湾に手を出してくるのかどうなのかが気になります。ロシアのウクライナ侵攻がもしうまくいっていたら手を出していたのではないかという説がある一方で、ロシアのウクライナ侵攻が明らかに失敗してる状況の中では同じようなことはやりづらいだろうという見方もありますね。
石)問題は、中国がやりたいかどうかと、習国家主席がやりたいかどうかは、実は別問題なんです。習国家主席が3期目の続投を決め、さらに改革派勢力が新しい指導部で主導権を握ることできずに習国家主席のワンマン体制となれば、中国の国家的意思というよりも習国家主席という独裁者の意思が優先されるわけです。今のロシアと全く同じなんですよ。ウクライナ侵攻は、どう考えてもロシアのためにはならないです。しかし、プーチン大統領が決めたから、侵攻が行われることになりました。
中国の場合も、国家にとってどれだけメリットがあるか、逆にどれだけリスクがあるかという問題よりも、3期目の習国家主席が独裁者になると、完全にプーチン大統領のような存在になってしまうんです。そのような独裁者には周辺から新しい情報が絶対に伝わってきません。取り巻きは全てイエスマンですから。プーチン大統領がそうであるように、取り巻きはプーチン大統領が喜ぶような情報しか持っていきません。習国家主席も3期目に入ったら、そうなるんですよ。だから、台湾侵攻の危険性があるわけです。
辛坊)そうなると、今年秋に予定されている中国共産党大会で習政権がどうなるかは、日本にとっても大きな問題ですね。
石)注目すべきは、習国家主席が続投するのか。また、続投を決めれば3期目は新しい指導部が誕生するでしょうが、今の最高指導部の人たちの大半は年齢を考慮すれば引退することになる。新しい中央政治局常務委員会ができたときに、その勢力の均衡がどうなるか、そこが一番のポイントになりますね。
辛坊)聞けば聞くほど、今の中国に取材に行きたい気持ちがふつふつとわいてきました。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)