ジャーナリストの須田慎一郎が6月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の米中関係について解説した。
バイデン大統領、電話などによる米中首脳会談の見通しを示す
アメリカのバイデン大統領は6月18日、中国の習近平国家主席と近く電話などによる会談を行うとの見通しを示した。滞在先の東部デラウェア州で記者団の質問に答えたもので、電話会談についてはブルームバーグ通信などが7月にも実施する方向で調整されていると報じていた。
飯田)記者団から習近平国家主席と電話やオンラインを通じて近く会談する予定があるかと聞かれ、「そうするだろう」と述べたということです。
須田)バイデン大統領の政治的な特色は交渉力なのです。内政の分野なのですけれども、対立するよりも交渉して、相手から譲歩を引き出すということに長けている。そんななかで、中国との間で交渉の局面にいよいよ入ってきたということです。中国サイドからそれなりのメッセージが水面下であったのだろうと思います。
食料品の輸入などには関税を下げる可能性もあるアメリカ ~ハイテク分野で依存する中国は「全面的にノー」とは言えない
飯田)交渉ということになると、いま取りざたされているのはトランプ政権時代に始まった制裁関税についてですが、この辺りも譲歩する用意があるのですか?
須田)先端技術あるいは通信の分野でデカップリングを進めていくところと、そうではないところの色分けをしていこうということです。後者においては、例えば食料品などはどうするのかという課題があり、完全に二分化ではありませんから。そこに関税の問題がかかってくるのだろうと思います。
飯田)国内のインフレも考えると、関税をどこかで引き下げたいというところもあるし、輸入する食料品など、安全保障に関係のない部分は下げてしまう可能性もありますか?
須田)下げる可能性もあるということです。中国としては、ハイテク分野の技術やノウハウは欧米に依存せざるを得ないという状況があります。中国として「全面的にノー」ということになってしまうと、結果として全体的にデカップリングが進んでしまうことになります。それは中国にとっても損失だということでしょう。
交渉はグラデーションの方向で進んでいる
飯田)ただ、相互依存の部分が、逆に相手に弱みを握られてしまうということもある。アメリカとしても、それほど間口を広げるわけにもいかない。
須田)そうですね。しかし「オール・オア・ナッシング」ということではなく、色合いとしてはグラデーションになるのではないでしょうか。そういう方向で交渉が進んでいるはずです。
アメリカが非難していた新疆ウイグル自治区のトップを左遷 ~中国から西側へのメッセージ
飯田)20日に日経が興味深い記事を国際面で出していました。
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『習政権、新疆前トップ「左遷」 人権抑圧政策で米が非難 党大会前、緊張緩和模索か』
~『日本経済新聞』2022年6月20日配信記事 より
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飯田)2021年まで新疆ウイグル自治区でトップを務めた陳全国という人ですが、かなり苛烈な統治をして、人権的にも問題があるということです。
須田)その人が政治局員候補だったのですが、農業部門担当に異動された。事実上の「左遷だ」という言われ方をしているのですが、これもアメリカに対する1つのメッセージです。譲歩する可能性もあるのだと思います。
飯田)強権的に対応した人の首を差し出すというような形で。
須田)しかし、完全に譲歩するというわけではなく、ある種のメッセージ性です。ここで西側諸国が問題にしていた人物を異動させて、見方によっては「更迭」のように映るわけです。「このメッセージをどう受け止めますか?」というところなのだろうと思います。
飯田)「こちらは動いたのだから、お前たちも動けよ」というような。
須田)そうですね。
「3期目」に向け、欧米との関係改善に動かざるを得ない習近平氏
飯田)これは党大会前と書いていますけれども、中国は秋にも党大会で国家主席の3期目続投が予想され、習近平氏の統治体制がより強まるのではないかと言われています。
須田)3期目に反対する長老たちが出てきているということが、中国発の情報で見られます。欧米との関係や経済問題、あるいはゼロコロナ政策での失政などを考えると、欧米との関係改善に動かなければ3選も見えてこない、永世国家主席の道も見えてこないということだろうと思います。
飯田)ロシアによるウクライナ侵略に関しても、「習政権はロシアに味方しすぎだ」というような議論が出てきているようです。
須田)とはいえ中国もそこに対しては慎重で、ロシアに経済的には協力するけれども、安全保障面では一線を画すというスタンスを取っています。ロシアが進めている北極海の天然ガス油田開発に関しても、いま中国は凍結の状態に入っています。
飯田)そうなのですね。
須田)そういう点では、ロシアとの関係も一線を画しています。その背景に「もっと弱れば、もっと安値で買い叩けるのではないか」という打算もあるのかも知れません。
飯田)いま日本が権益を持っている「サハリン1」、「サハリン2」を手放してしまうと、中国が獲るのではないかという議論がありましたが、中国もアグレッシブに行くというよりは少しすくんでいるわけですか?
須田)ロシアの足元を見ているということだと思いますけれどもね。
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