新首相候補に「女性」「マイノリティ系」……ジョンソン首相とは逆の方向で巻き返したい保守党

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経済アナリストでSBI FXトレード社外取締役のジョセフ・クラフトが7月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。英与党・保守党の党首選挙について解説した。

新首相候補に「女性」「マイノリティ系」……ジョンソン首相とは逆の方向で巻き返したい保守党

2022年7月7日、ロンドンの首相官邸前で辞意を表明するジョンソン英首相(イギリス・ロンドン) AFP=時事 写真提供:時事通信

保守党党首選の候補者は11人

イギリスのボリス・ジョンソン首相の辞意表明を受けて始まった与党・保守党の党首選挙に7月10日、リズ・トラス外相が立候補した。これで立候補者は11人となった。英紙「デイリー・テレグラフ」で出馬を表明したトラス外相は、就任初日から減税政策を始めると約束した。

飯田)(現地時間の)11日にも会合が開かれて、選挙の日程やルールなどを決定する予定だそうです。焦点は減税などの税金問題だと言われています。11人が立候補するというのもすごいですよね。

クラフト)1つのポイントとして、これは国民投票ではなく、議員による投票だということです。7月21日までに決めるということは、あまりにも議論の時間がありませんが、これらの候補をよく知っている同じ党の議員らが投票するということで、そこは短縮できると思います。

飯田)保守党の議員の投票ということで。

クラフト)それにしても、これだけの有事のなかでの選挙の争点が「減税」というのは、寂しいような気もします。人気取りの方に動いているのではないでしょうか。

ジョンソン首相とは逆の方向で巻き返したい保守党 ~同じ白人男性ではなく、女性、マイノリティ系の候補が有力

飯田)ジョンソン首相がコロナ禍でパーティーを行った。あるいは政権幹部の痴漢行為があり、スキャンダルによって辞任に追い込まれました。外交などとはまったく別の次元でしたね。

クラフト)本当に残念ですね。1つのポイントとしては、思想的にも、ジョンソン首相とは逆の方向で巻き返したいという党の狙いがあるのではないでしょうか。そういう意味で、有力候補としては女性、あるいはスナク氏のようなインド系、マイノリティ系の候補なのだと思います。

飯田)女性、またはマイノリティ系。

クラフト)白人男性だと、いままでの古いしきたりやジョンソン氏に近すぎるというイメージから、その後の選挙が戦いにくいので、モーダント通商政策担当相やスナク前財務相が有力なのだと思います。トラス外相も女性で力量のある方なのですが、ジョンソン氏に近く政策的には変わらないので、どうなのでしょうか。

ウクライナへのイギリスからの支援に影響はあるのか

飯田)ここで選出された人が新しいイギリスの首相になるということですが、外交に与える影響は大きいのでしょうか?

クラフト)とても大きいですね。最も注目しているのはウクライナで、イギリスの支援がこれまで以上に続くのかどうかということです。基本的には誰が首相になっても、G7との連携とウクライナへの支援は変わらないのですが、首相によっては、思い入れが多少変わってくると思います。そこで距離が開くようなことになると、プーチン大統領に塩を送ってしまうことになります。そこはいままで通り、G7内で連携を取ってウクライナを支援していただきたいと思います。

飯田)ジョンソンさんは何度もキーウにも行って、強力にゼレンスキー政権を支える方針を明確にしていました。

クラフト)穿った見方にはなりますが、国内で批判が強かったので、成果の場をウクライナに見出そうとしていた部分があったのかも知れません。いずれにしろ、次の首相が誰になろうとも、ウクライナだけではなく、国内情勢にも目を向けることが想定されます。しかし、ジョンソンさんのやり方とは違ってくると思います。

欧州の足並みの乱れがプーチン大統領に塩を送ることになる ~EU内で喧嘩している場合ではない

飯田)ヨーロッパでの大国はフランス、ドイツ、イギリスなどですが、フランスのマクロン大統領は「早期停戦を模索する」という姿勢を見せています。ドイツは伝統的に、あまり外とは関わりたくないというところがある。ここのバランスを考えると、少し後押しが弱くなる方向に行きかねないということでしょうか?

クラフト)G7に出席した政府高官と話したときに、足並みの乱れがプーチン大統領に塩を送ることになるので、G7とNATOは「結束力、統一」というところを対外的なメッセージとして発信することに着手したそうです。今後もフランスやドイツ、イギリスなどの欧州を中心に足並みを揃えていかないと、ますますプーチン大統領の思い通りになってしまう。ここはしっかりと次のイギリス政権にも頑張っていただきたいと思います。

飯田)潜在的には足もとに、EUとの間で関税をどうするのかなど、イギリスも火種はいろいろと抱えていますよね。

クラフト)モーダント氏やスナク氏らは、もう少しブレグジットに関して現実的に、強硬派ではなく、上手くEUと連携が取れるのではないでしょうか。いまはEU内で喧嘩している場合ではありません。そこで上手くやれるといいかなと思います。

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