日米間でつくられたルールの雛型がインド太平洋経済枠組み(IPEF)に応用されていく

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ジャーナリストの須田慎一郎が8月1日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。7月29日に開催された日米の経済版2プラス2について解説した。

日米間でつくられたルールの雛型がインド太平洋経済枠組み(IPEF)に応用されていく

「日米経済政策協議委員会」(経済版2プラス2)の初会合後、共同記者会見する(左から)萩生田経産相、林外相、ブリンケン米国務長官、レモンド米商務長官=2022年7月29日、ワシントン(共同) 写真提供:共同通信社

日本とアメリカが経済版2プラス2の初会合を開催

日本とアメリカの外務、経済閣僚が経済分野の議論を行う、いわゆる経済版2プラス2の初会合が7月29日に行われた。会合では中国やロシアの脅威を念頭に、「ルールに基づく国際経済秩序」を主導すると明記した共同声明が採択された。

新行)日米の外務、防衛の閣僚が安全保障について議論する、2プラス2の経済版という位置づけになりますね。

須田)経済安全保障をめぐる議論を日米間で連携してやっていきましょうということで、具体的に実務面が動き始めたということです。いちばん大事なのはルールに基づく国際経済秩序を日米間で主導していく、「法による統治」という概念が大前提にくるのです。

新行)法による統治。

須田)法による統治というのは重要なキーワードで、中国やロシアは法による統治ができていないということです。何もロシアや中国を排除するわけではなく、ロシアや中国も「法による統治ができるのであれば、どうぞこちらの陣営に入ってください」と言いつつ、「どうせ入ることはできないだろう」という前提なのです。そういう建付けで中国に対しての包囲網を築いていこうという形になっています。

メーカーサイドが部品、製品の安全を保証する「認証」 ~ハッキングなどによる被害が起きた場合は、認証したメーカーが損害賠償を負う

須田)注目されるのは、先端技術の共同開発や半導体などの重要物資におけるサプライチェーンの強化です。これから何が行われるかというと、重要なキーワードとして「認証」というものがあります。

新行)認証。

須田)「この部品、製品は安全だ」ということを、メーカーサイドが保証することが認証なのです。安全というのが何かと言うと、ハッキングリスクがないとか、中国でつくっていないなどという安全性の証明を、メーカーサイドが行うということです。結果的な問題として、後々になって技術流出が起こった、ハッキングによる被害が起こったときの損害賠償は、一義的には認証したメーカーが負うというルールが前提になってくるのです。

日米間でつくられた雛型がIPEFに応用されていく

須田)メーカーサイドも相当な義務を負うことになるのです。いま申し上げたような仕組みをこれからどうつくっていくのか、構築していくのか。今後、日米間でその協議を進めていくことが大きなポイントになると思います。結果的にそこでつくられた雛型が、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に応用されていくのだろうと思います。

ハッキングやデータ漏洩を防ぐためにはどうしたらいいのか

新行)日本とアメリカの経済版2プラス2で話し合ったことがベースになり、それがIPEFに応用されるということですか?

須田)まず、ここで基本的なアウトラインを決めましょうということです。今後、この問題は日米間が主導する形で進めていきましょうという方向になると思います。注目されるのは通信分野などです。6Gの時代を迎えるとIoT(Internet of Things)という、ありとあらゆるものがインターネットに接続されていくことになり、家電製品なども通信との融合が進んでいく。そのなかでハッキングやデータ漏洩のリスクも負うことになります。「それを防ぐためにはどうしたらいいか」というのが大きなテーマになってくるのだろうと思います。

新行)そうなると、日本企業も考えていかなければいけないですよね。

須田)中国は除外されていますが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアの電子戦は激しいではないですか。それをめぐって、ロシアとの間でインターネット網を遮断するという動きがもう起こっているのです。それについて、「どういうルールづくりのなかで遮断していくか」というところも今後、議論されることになると思います。

最先端技術を持つアメリカを中心としたネットワーク陣営に入るのか、アメリカより劣るローカルな中国陣営に入るのかを問われる各国

新行)IPEFに広がっていくとなると、さらに日米間での内容も発展する可能性があるということですよね。

須田)おそらく、最先端の技術を持っているアメリカを中心とする陣営に加わるのか、技術的にはアメリカよりもはるかに劣っているローカルな中国陣営に加わるのか。「そのどちらを選ぶのか」ということが近い将来、各国に問われることになるでしょう。

新行)どちらを選ぶのか。

須田)両方とも、というのはあり得ません。「どちらかを選ぶ」という選択肢です。選ばれるように魅力的でグローバルなネットワーク構築をするため、日米間で連携しましょうというのが隠された意図なのです。

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