“住民投票によるウクライナ4州支配” その裏にあるロシアの「ジョージアでの成功体験」

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日本経済新聞コメンテーターの秋田浩之が9月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。住民投票により賛成多数を得たと主張し、ロシアへの併合を申請した親ロシア派支配のウクライナ4州について解説した。

ウクライナ南部ヘルソン州で「住民投票」に1票を投じる女性 2022年9月25日 (タス=共同) 写真提供:共同通信社

親ロシア派支配のウクライナ4州、プーチン大統領へロシアへの併合を正式申請

ロシアのタス通信によると、親ロシア派が支配するウクライナ東・南部の計4州で、ロシア編入への賛否を問う「住民投票」とされる行動、開票とされるものが終了し、最終的な集計結果が発表された。いずれも賛成が大多数を占めたと言っており、親ロシア派のトップらがプーチン大統領に併合を正式に申請した。これに対し、ウクライナ政府は住民投票を「茶番劇」だとして、正当性を否定している。

2008年に同様に偽りの住民投票でジョージアの国土の2割を手に入れたロシア ~その結果諦めてしまったジョージア

飯田)アメリカのブリンケン国務長官も、「併合などしたら追加制裁も辞さない」と発言していましたが、こんな無茶苦茶をよくやりますね。

秋田)実は、私は9月上旬にジョージア(旧グルジア)の首都・トビリシに出張してきたのです。トビリシはロシアと国境を接しているのですが、ジョージアはウクライナよりも早い時期、2008年にロシアに侵攻されているのです。

飯田)2008年に。

秋田)いまロシアがやっているような住民投票がロシア主導で行われて、国土の20%が事実上、独立していると主張する地域があるのです。

飯田)国土の20%。

秋田)南オセチアとアブハジアです。その国境にも行ってみました。「ジョージアはさらに反ロシア的になっているだろう」と思って行ったのですが、2008年からいまに至る間に、ロシアに対して融和的な方向に変わってきていたのです。

飯田)そうなのですか。

NATOに加入していないジョージアは抵抗できなかった ~ロシアの成功体験となっている

秋田)なぜかと言うと、既に2割も国土を獲られて、「(これ以上争っても)長期戦になるだろう」と諦めてしまっているのです。これ以上、ロシアに抵抗しても危ないと。NATOに入っていればNATOが守ってくれますが、ジョージアは入っていませんから。

飯田)1国で対処しなければならない。

秋田)ロシアはこれを成功体験だと思っているのでしょうね。いまは反発しているけれど、国土の一部を住民投票という、偽物の投票によってでも獲ってしまえば、いずれは格闘技で言うところの「タップ」をするだろうと。ジョージアがそうだったではないかと。

飯田)同じことをウクライナでも行う。

秋田)やろうとしているのだと思います。

支配された地域の住民を徴兵・動員し、ウクライナと戦わせる意図も

秋田)さらに心配なのは、支配した地域はロシアということになりますから、その地域に住んでいる人たちは徴兵・動員の対象にもなると思うのです。

飯田)そもそもウクライナの人たちであったにも関わらず。

秋田)ロシア国籍になってしまったわけですから。

飯田)彼らはそう主張している。

秋田)ヘルソン州の一部では、国外への移動も制限しているという話もあるので、支配地域を維持するために「ウクライナ人を動員してウクライナと戦わせる」ということも狙っているのではないでしょうか。

飯田)ロシア側の意図としては同士討ちをさせ、「お前たちに撃てるのか」とウクライナに突きつける。

ロシアの国土なら、ウクライナが取り返せば核兵器による報復の可能性も ~ロシアの「脅しを掛ける手段」

秋田)そういう意味では、単に面積を奪う以上に、ある意味では悪質です。深刻な行為だと思います。

飯田)ウクライナの戦意の部分を削ごうとする。

秋田)さらには、よく言われていますが、国土が深刻な脅威を受けた場合、核によって報復するということをロシアは軍事戦略として定めています。ここはロシアの一部になったという解釈ですから、攻められれば核兵器で報復する可能性もあるのです。その対象地域になってしまったということも、彼らは言いたいのでしょうね。

飯田)そうやって脅しをかける。

秋田)脅しをかける手段なのだと思います。

飯田)単に領土拡張を狙うというよりも、そちらの部分。

秋田)面積を獲っただけであれば、ウクライナが入っていって取り返したら、またゼロになるわけです。心配なのはロシア軍の兵士として動員をかけ、その地域に住んでいるウクライナ人を、ウクライナ軍に対して戦わせるということです。

2022年4月27日、議会関係者との会合で演説するプーチン大統領=ロシア・サンクトペテルブルク(タス=共同) 写真提供:共同通信社

NATOに入れてもらえず、ロシアと折り合うしか道がなかったジョージア ~日本のように日米同盟によってアメリカが守ってくれるわけではない

飯田)ジョージアの例を考えると、彼らにとっては一国で強大なロシアと対峙するのは、それだけ難しいことなのですか?

秋田)私も今回、「ジョージアが極めて反ロシア的な急先鋒の国」であると思い、そのような視点から記事を書けないかと思ってジョージアへ行ったのですが、蓋を開けてみたらまったく逆の方向に進んでいるというのは、ある意味で驚きました。

飯田)蓋を開けてみたら。

秋田)ただ、考えてみれば当然で、彼らは日本と違い、アメリカが守ってくれるという保証はないわけです。ずっとNATOに入りたいと言ってきたのに、未だに入れていません。

飯田)加入できていません。

秋田)いまから10年前までは、親欧米政権であるサアカシュヴィリ政権が続いていましたが、やはりNATOに入れないと諦めてしまう。そして「折り合うしかないな」と思うのです。裏を返すと日本は、日米同盟があるおかげで、いま普通に過ごせているということだと思います。

飯田)一国として。しかし、現場に行かないとわからないことですね。

秋田)本当に驚きました。考えてみれば、そうなりますね。

「10年かけてジョージア化してウクライナ全土を親ロシア化する」というロシアの「プランB」

飯田)ロシアの意図としては、ウクライナもそうしたいと狙っている。いまのところ、ウクライナ側は士気も高いし、「全部取り返すのだ」と反転攻勢していますよね。

秋田)世論調査でも、自分たちが勝つと信じている人たちが9割以上ですし、あくまでも戦うのだということです。もちろん、いまのところウクライナはジョージアのようにはなっていません。

飯田)いまのところ。

秋田)しかし、西側の支援が息切れしてきて、ロシアがずっと占領地域を併合したままの状態が続けばどうでしょうか。ジョージアは侵攻から14年経ちましたが、14年後にそういう状態が続いたときには、そういうことになってしまう危険もあると思うのです。人情としては。

飯田)今回の「住民投票」と称されるものに移ってきたのは、廣瀬陽子さんが「長期化の兆しなのだ」と言っていますが、ジョージアの例を取ると、10年以上のスパンをロシアは考えているかも知れない。

秋田)そうみていると思います。ロシアの「プランA」はウクライナ全土を親ロシア化するということです。まだそれも諦めていないと思いますが、「プランB」として、まずは10年かけて「ジョージア化する」ということを考えているのではないでしょうか。

飯田)10年かけてジョージア化する。

秋田)西側でもパイプラインが壊れたので、欧州の支援もいずれ息切れする可能性があります。2008年当時はブッシュ政権がジョージアを全面支援したわけです。しかし、いまジョージアを全面支援するという機運はありません。ロシアからすれば、ウクライナをジョージア化するという「プランB」の視点から言うと、決して失敗しているとは思っていないのではないでしょうか。

西側諸国は絶対にウクライナへの支援を途切れさせてはいけない

飯田)そうすると、NATOやG7などの西側諸国が支援を途切れさせたり、息切れするというのがいちばんまずい手段。

秋田)それは絶対にしてはいけません。この「プランB」がジョージアとウクライナでうまくいってしまったら、ロシアは国境は越えないかも知れませんが、次はバルト3国やポーランドなどに「逆らっても無理なのだから宥和的になりなさい」という圧力を強めていくでしょうし、それがうまくいくと勘違いしてしまいます。

飯田)そうですね。

秋田)トビリシで国際会議に出たのですが、欧米のロシアの専門家や軍事専門家が大勢集まって議論していました。いろいろな議論がありましたけれど、ウクライナについては「絶対に支援を途切れさせてはいけない」ということを強い意識を持って議論していました。

今後は中国の影響が強まることも考えなければならない

飯田)さらに言えば、それを権威主義的な国である中国がどう見ているか。

秋田)ロシアは脅迫によって相手を屈服させようとしているわけですが、中国の場合は爆弾を落とすだけでなく、お金を落とす能力があります。

飯田)なるほど。

秋田)そこは、より中国の方が能力が高いのではないでしょうか。気を付けなければいけません。中国の影響が強まっていくことも考えなければいけないと思います。

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