ジャーナリストの須田慎一郎が10月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。さまざまな商品やサービスの値上げへの物価高対策について解説した。
食品などの値上げ、10月はおよそ6700品目
原材料価格の高騰や円安進行を背景に、10月からさまざまな商品やサービスの値上げが行われている。帝国データバンクの調査では、10月に値上げされる食品や飲料の数は6699品目となり、9月の約2.8倍で、2022年に入ってから最も多くなっている。
飯田)物価高対策も臨時国会の注目点であり、いろいろとリークが出ています。電気代についても言われていますが。
異次元の金融緩和を維持するなかで、どのように財政出動するのか
須田)価格上昇が著しい一部の品目については、補助金を出すという形で乗り切っていこうという動きです。その一方で、日本銀行による異次元の金融緩和政策との整合性で言うと、利上げに対してプレッシャーが掛かっているのだと思います。
飯田)利上げに。
須田)いま利上げをしてしまうと、本当に景気が失速してしまいます。いまの金利水準を維持する、異次元の金融緩和を維持するなかで、どのように財政出動していくのか、必要なのかというところを考えるべきだと思います。
期間限定で消費減税をするべき ~なぜそのプランが出てこないのか
須田)不思議で仕方がないのは個別の品目に対して、例えば電気料金などに補助金を出すのはいいのですが、使っているお金に対して、実際に効果のある金額は減っていくわけではないですか。
飯田)そうですね。
須田)それなら、ありとあらゆる消費品目が物価高になっているのですから、一時的に、期間限定で消費税減税を行うのがいちばん効くのではないかと思います。減税は形を変えた補助金ですから。そういう議論がまったく出てこないところが異常です。やらなくてもいいのですよ。やるべきなのでしょうが、「やる、やらない」の話ではなく、そういうプランが出てこないことに強い違和感を持ちます。
消費者にメリットがあるのは消費税の限定的な減税
飯田)やらないうちからリークでさまざまな記事が出てきたりして、「これが既定路線です」、「補助金でいくのだ」という空気になっていますよね。
須田)総合経済対策プラス、どのくらいの規模の真水で財政出動するのかを考えあわせていく。すると、いちばん効果的であり「ストレートに消費者にとってメリットがあるのは何か」と考えれば、期間限定型の減税が最も効果がありますし、メリットがあると思います。
強制貯蓄を出すためにも期間限定型の消費税減税が効果的
飯田)考えられる批判として出てくるのが、イギリスの例です。トラス政権になり、減税を行うことが打ち出されていた。一方でイギリスの中央銀行はどちらかと言うと、利上げをするなりして引き締めようとし、そこがちぐはぐではないかということでポンドが売られてしまった。そのような事例が出てきますが、少し日本とは基盤の部分、経済の形が違うのかなと思います。
須田)事情が違いますしね。日本で期待できるのは、日本銀行が試算したところ、強制貯蓄が50兆円を超えて積み上がっているようです。
飯田)コロナ禍で使いたくても使えなかったお金が、貯蓄として貯まっているのではないかということですね。
須田)それをいかに消費に向かわせるか。考えてみると、期間限定型の消費税減税を行えば、その間に強制貯蓄が出てくる可能性があるわけです。総合的に考えると、最も効果的で近道だと思います。そういう案が議論されないことが異常なのです。
「議論の俎上にも載せない」のが財務省の作戦 ~前段階でつぶしてしまうので議論もされない
飯田)どうして議論されないのでしょうか?
須田)財務省が嫌がっているのでしょうね。
飯田)嫌がっている。
須田)期間限定型といっても、いざ元に戻すという状況になったら、政治判断として「先送りされるでしょう」ということで、「議論の俎上にも載せない」というのが財務省の作戦です。
飯田)補助金で一時的に対応するやり方が横行しているところがある。ガソリンのときも、ガソリンの暫定税率をなくせば、その分の価格が下がるのではないかという議論も一部ありましたが、すぐになくなってしまいました。
須田)つぶされたわけでしょう。
飯田)今回の電力に関しても、再生可能エネルギーの賦課金を一時的に止められないのか、という議論にはなかなかなりませんね。
須田)減税という道を全部ふさいでしまおうとして、議論の俎上にも載せないのです。俎上に載せてしまうと、「その方が魅力的で効果があるよね」ということになってしまうからです。岸田政権になってからはあからさまですよ。前段階でつぶしていくというのが、基本的な戦略ですから。
自民党内の政務調査会を舞台に議論して欲しい
飯田)「減税しようではないか」という議論が、10年~20年くらい前には巻き起こりましたが、その前に巻き戻ってしまった感じですね。
須田)自民党内の政務調査会を舞台に、ぜひその辺りを議論して欲しいですね。
飯田)新しく萩生田光一さんが政調会長に就いて、ここから先ですよね。旧統一教会の話で、萩生田さんも身動きが取りづらいのでしょうか?
須田)取りづらいところもありますし、将来の総理・総裁を目指すにあたり、ここで財務省のしっぽを踏むかどうかというプレッシャーはあります。萩生田さんの頑張りどころだと思いますよ。
異次元の金融緩和を続けてきた日銀の報告書 ~異次元の金融緩和だけでは、景気回復はできない
飯田)一方、金融緩和の部分で日本銀行の執行部も変わりますよね。
須田)変わっていくでしょうが、日銀は1年くらい前から、異次元の金融緩和に関する報告書をまとめているのです。それを見ると8年間、最終的には10年間とするのでしょうけれども、異次元の金融緩和をしてきてわかったことがあると。
飯田)異次元の金融緩和をしてきて。
須田)異次元の金融緩和だけでは、景気回復はできないということが判明したと。「8年やってきてそれか」という突っ込みもあるのですが、「何が必要か」というところがポイントなのですよ。
金融緩和と大規模な財政出動が必要 ~需要が増えるのを待つ
須田)異次元の金融緩和を続けるのと同時に、大規模な財政出動を行い、車の両輪で進めることが必要だという、中央銀行なりの結論をまとめたわけです。
飯田)金融緩和と財政出動が。
須田)飯田泰之さんが「チャンス待ち理論」と言われるところですが、金融緩和だけでは景気回復はできないから、その間に「財政出動あるいは外的要因で需要が増えるのを待つべきだ」という考えがあるのです。
飯田)需要が増えるのを待つ。
須田)そうなると、財政出動が必要になってきます。これをやるかやらないかというところです。先ほどの話に戻りますが、限界までは異次元の金融緩和を続けていこうというのが、私がレポートを見た限りでは日銀の総意だと思います。
飯田)正副総裁の交代時期を来年(2023年)の3月くらいに迎えますが、基本スタンスが変わらないのであれば、少し安心材料はあるのかも知れません。
異次元の金融緩和の賞味期限
須田)ただし、コアコア指数と言われているような、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の動きが2%を超えたら、また別の意味を持ちますからね。マイルドなインフレ、コアコア物価指数で2%を目指すというのが日銀のスタンスですから、それを超えるまでが異次元の金融緩和の賞味期限かなと思います。
飯田)現状、1.4%くらいまできています。あまり時間は残されていないのですね。
須田)そうです。そういった意味で、正副総裁が代わるということではなく、「残された時間は短い」ということです。
飯田)補正予算で財政出動が年明けまでいってしまうと、その時間がもったいないですよね。
須田)補正予算の規模感も非常に重要になってくる。1年後にやればいいではないかといっても、その間に異次元の金融緩和を合わせたら、意味がありません。
飯田)むしろ、やろうと思っても「物価が上がっているからできませんよ」という、時間切れのようなことも狙いとしてはあるのでしょうか?
須田)この臨時国会がラストチャンスなのだという意識を持ってもらいたいですよね。
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