思惑は違うが原油減産に向かうロシアとサウジの「それぞれの事情」
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が10月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。OPECプラスが閣僚級会合で決定した原油の減産について解説した。
OPECプラスが大幅減産を決定
飯田)石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど主要産油国でつくる「OPECプラス」の閣僚級会合で、日量200万バレルの石油の減産が決まったということです。
宮家)いま値段が87ドル(※編集部注:2022年10月7日午前6時30分時点)を超えているわけでしょう。
飯田)1バレル当たり。
思惑は違うが方向としては減産となるロシアとサウジ
宮家)サウジとロシアが中心なのでしょう。両者とも思惑が違うのだけれども、方向としては減産になるわけです。ロシアの方は戦争をやっているから、続けるためには収入がなくてはいけない。どこかで叩き売りをやっているわけですけれども、全体の値段が上がればそこの値段も上がります。
飯田)ロシアとしては。
宮家)サウジの方は、必ずしも合理的な判断だとは思いませんが、本来であれば、サウジはコストを考えたら世界一と言っていい埋蔵量があるわけです。もし代替エネルギーが成功してしまって、石油がいらなくなったら、誰もサウジの石油を買わなくなります。少なくとも原料としては買うけれど、燃料としては買わなくなるでしょう。
飯田)代替エネルギーが成功したら。
宮家)サウジにとって最も賢い方法は、再生可能エネルギーが成功しないレベルの油価で消費国の石油依存が続けばいいわけです。「値段はほどほどがよかった」というのが、いままでの私の理解でした。
飯田)高すぎてもダメなのですね。
人口が急増するサウジの事情 ~価格を上げなければ1人あたりのGDPが減少
宮家)しかし、最近のサウジは若干変わってきているのです。前にも申し上げたかも知れませんが、私が外務省に入ったときは、サウジの人口は600万人でした。それがいまは2500万人を超えているはずです。
飯田)4倍。
宮家)30年以上経っていますが、すごい勢いで増えています。サウジの生産量は、基本的に1050~1100万バレルです。生産量は昔とほとんど変わっていないのですが、人口が4倍になるということは、値段が変わらなければ、1人当たりのGDPが4分の1になるということです。
飯田)そうですね。
宮家)そうすると、いままでは湯水のようにお金を使っていたけれども、それが全然できないのです。価格をある程度高くしなければいけないということで、ロシアと思惑が一致しているのだと思います。
飯田)なるほど。
宮家)しかし、これまでもみんな真面目に減産を守ったことなどないはずですから、多少の開きはあると思いますが、方向性として、これから200万バレルを一気に減らせるのでしょうか。マーケット的には、状況はタイトになっていくでしょうね。
経済が冷え込めば値段は思ったようには上がらない
飯田)減産によって石油の値段が上がることになると、特にヨーロッパやアメリカで影響が出ます。
宮家)日本もそうです。また状況は変わっていくでしょうけれども、それほど簡単にはいかない。需要と供給の問題がありますから、上げることによって経済が冷え込めば、思ったように値段は上がらないのです。この狐と狸の化かし合いは、70年代から過去50年くらいやっているものです。この動きを追いかけるのは専門家でも大変だと思います。
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