中国が「ものづくりの拠点」「大きな市場を狙いに行く場」という時代はもう終わる

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ジャーナリストの有本香が10月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本企業における中国との今後の関わり方について解説した。

中国が「ものづくりの拠点」「大きな市場を狙いに行く場」という時代はもう終わる

中国共産党中央委員会統一戦線工作会議が2022年7月29、30両日、北京で開催。習近平 中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が出席し、重要演説を行った。(北京=新華社記者/姚大偉)= 配信日: 2022年7月31日 新華社/共同通信イメージズ

中国の製造拠点を見直し、国内に戻す企業が増加

飯田)習近平氏の3期目続投が確定し、新体制についての報道が出ています。日本から進出している企業にとっても、判断のしどころだということです。

有本)いまは円安であり、日本国内では円安を否定的に捉える報道も多いですが、日本の製造業にとってはチャンスです。実際に拠点を国外から日本国内に返すという決断をしている企業もありますし、それだけではなく、「中国の製造拠点を見直す」と発表している企業はかなりあります。

飯田)直近の新聞でも、富士フイルムビジネスイノベーション(旧富士ゼロックス)が上海の複合機工場を閉鎖するという記事が出ています。

半導体を中国に売らないアメリカ ~「ウイグル強制労働防止法」により新疆ウイグル自治区で生産したものも米・欧州ではほとんど流通させない

有本)そうですね。大手がそうなってきていますし、先端技術を持っている企業も戻ってくる方向になっています。あとは日本国内の環境、電力コストなどを改善していく必要があるのではないでしょうか。アメリカは「半導体をもう中国には売らない」と言っているではないですか。

飯田)そうですね。

有本)さらに、私が追いかけているウイグル問題で言うと、アメリカは6月に「ウイグル強制労働防止法」を施行しています。強制労働の疑いが排除できないものは、全部アメリカには入れないという法律です。同じような法案を欧州委員会も提案しました。

飯田)欧州連合(EU)が。

有本)おそらく欧州議会はこの法案を通しますよ。それがヨーロッパの国々に下りていって法制化されれば、アメリカでもヨーロッパでも原則、新疆ウイグル自治区で生産したものはほとんど流通させないことになります。

欧米の市場から排除された中国産の太陽光パネルを日本が受け入れることで、日本が人権問題のレッテルを貼られる可能性も

有本)日本にも大いに関係があるところで言うと、太陽光パネルです。今後、中国産のものはアメリカやヨーロッパから排除されていくでしょう。

飯田)その一部は新疆ウイグル自治区でつくられている。

有本)そうですね。中国が世界シェアの8割を持っていて、そのうち6割ぐらいが新疆ウイグル自治区でつくられています。ですから、こういうものがアメリカやヨーロッパの市場から排除されると、日本に来るわけです。日本は急いで対策を立てて実施していかないと、むしろ日本が国際社会のなかで「人権をないがしろにして経済活動を行っている」というレッテルを貼られかねません。

飯田)日本企業が実際に損を被ることになる。中国産の製品がアメリカやヨーロッパに輸出できないと、それ以外の国々に輸出して採算が取れるかという、具体的な話になってきます。

中国でつくり売る、国内に入れるという日本企業の流れを抜本的に見直さなければならない ~「ウイグル強制労働防止法」のような法律を日本政府も考えるべき

有本)そういう点からも、中国でものをつくって売りさばいていく、あるいは国内に入れるという日本企業の流れ・モデルは、抜本的に見直さなければいけません。しかも日本政府はいまのところ、デューデリジェンス的なガイドラインを「企業や業界でつくってください」と言っている。しかし、「それは無理でしょう」という話です。それが無理だからアメリカは法律にしたのです。

飯田)アメリカは。

有本)ヨーロッパも同じことをしようとしているのだから、ここは政治のリーダーシップでというところですが、日本は財界も永田町もまだまだその認識には遠いですね。

飯田)安全保障の部分では危機感があるのですが、経済の部分だと「中国は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に入ろうとしているのだから、日本が仲介すべきだ。日本のチャンスだ」と言う人もいます。

有本)TPPはそもそも、中国を入れないというところに意味があったわけですから。

飯田)ルールを見ると、とてもではないけれど入れないような高いレベルですよね。

有本)入れませんし、「我々はそういうレベルで付き合える国と通商関係を結んでいくのですよ」という、一種の違う意味での経済安全保障でしょう? 古い言い方をすれば「経済ブロックをつくろう」ということです。価値観を同じにできる。むしろ「アメリカが抜けてしまったから中国が入りたいと言っている」ではなく、日本は事実上の事務局ですから、かねてから希望している台湾を入れる。あるいはアメリカにもう1回戻ってもらうような働きかけをすべきです。

飯田)その前段階として以前、「イギリスが入るのではないか?」という話がありました。

有本)そうですね。これも継続して話し合っていくのではないでしょうか。ただ、TPPは環太平洋ですよね。

飯田)ネーミングとしてはそうですね。

有本)「どこが環太平洋なのだろう?」と思うことはありますが、中国をいままでのように「ものづくりの拠点です」「大きな市場を狙いに行きます」と言うのは、もう終わりだということですね。

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