2学年下の“ドラ1”浅野翔吾との争いも 巨人・秋広優人、勝負の3年目

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、来季(2023年)勝負のプロ3年目を迎える巨人・秋広優人選手にまつわるエピソードを紹介する。

2学年下の“ドラ1”浅野翔吾との争いも 巨人・秋広優人、勝負の3年目

【プロ野球練習試合巨人対ロッテ】8回 残塁するもベンチでタッチをかわす巨人・秋広優人=2022年2月17日 那覇市 写真提供:産経新聞社

日本シリーズが終わり、既に来季に向けた戦いは始まっています。若手選手たちの鍛錬の場として、毎年宮崎で開催されている「みやざきフェニックス・リーグ」も10月31日で終了。ここで存在感をアピールしてみせたのが、巨人・秋広優人選手(20歳)です。

10月30日の中日戦では「4番・一塁」で先発出場。3回、1-2と1点ビハインドで秋広に打順が回りました。カウント2ボールから、中日先発・根尾昂が投じた3球目、インローの真っ直ぐをとらえて振り抜くと打球は右翼フェンスを越えるソロ本塁打に。

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『カウントが有利だったので甘いところを振りに積極的にいこうというところです』

~『スポーツ報知』2022年10月31日配信記事 より(秋広優人のコメント)

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秋広はこの日もう1打点を挙げ、2打点とアピールしました。その翌日、10月31日の阪神戦にも秋広は「4番・一塁」で出場。阪神先発・小川一平から第1打席にライト前ヒットを放つと、1点ビハインドの3回、1死一・二塁の場面で右中間スタンドへ2試合連発となる逆転3ラン! フェニックス・リーグ最終戦を5打数3安打3打点の大活躍で締めくくりました。

試合後の、秋広のコメントです。

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『ヒットを打とうというよりは自分のスイングの形でやることをどちらかというと心がけているので、それがいい結果につながっている』

『ここから試合はしばらくなくなりますけど、練習とか自分の形のスイングができるように心がけたいと思います』

~『スポーツ報知』2022年10月31日配信記事 より

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今年(2022年)はフェニックス・リーグでは開幕から6試合ヒットがなく苦しんだ秋広。二岡智宏監督のアドバイスを受けてフォームを修正し、いい感触を取り戻したようです。本人にとっても収穫の多い日々だったのではないでしょうか。

巨人は11月2日から宮崎で若手を主体とした秋季キャンプを行います。参加選手は24人で、坂本勇人が11年ぶりに参加を表明。外国人のウォーカーも参加するなど、3年ぶりのV奪回に懸ける原監督の思いが伝わってきます。秋広ももちろんメンバー入り。休む間もなく、ここでまた体をいじめ抜くことになりそうです。

秋広は、二松学舎大附属高時代は通算23本塁打の長打力に加え、俊足と強肩も併せ持った左の大砲として注目され、2020年、ドラフト5位で巨人に入団。巨人では馬場正平(=ジャイアント馬場)以来となる身長2メートルの大型選手として話題を呼びました。

1年目の2021年には春季キャンプで1軍入りを果たし、オープン戦にも出場。そのまま開幕1軍も期待されましたが、開幕前に2軍落ち。1年目は1軍出場を1試合だけ経験しましたが、ほとんどをファームで過ごしました。

2年目の今季(2022年)は背番号を、かつて松井秀喜がつけていた「55」に変更。これだけでも球団の期待の高さが窺えます。秋広は春季キャンプ前に、中田翔の自主トレに参加を志願。中田とは特にゆかりもなく、しかも中田は右打者です。中田も「何で俺と?」と聞いたそうですが、秋広の熱意に負けて参加を了承。共に汗を流しました。

秋広は、中田の自主トレに志願した理由をこう語っています。

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『日本ハムの時から守備が一番うまいなと思っていたことと、2軍で一緒にやっていたときにすごい練習熱心だと。タイトルも取られている方が、ああいう姿勢でやっていたのが勉強になった。それに比べて自分はもっとやらなきゃいけないと思い、姿勢を勉強したいと思いました』

~『サンケイスポーツ』2021年12月24日配信記事 より

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秋広が1年目、オープン戦に出場したときに、巨人は日本ハムと対戦。秋広が出塁したとき、日本ハムの一塁を守っていたのは中田でした。そのとき、長身をイジられたという秋広。中田のそんな気さくな一面も、秋広が自主トレ参加を志願した理由かも知れません。

今季、昇格を期待する声もあったなか、結局1軍出場はなかった秋広。しかし2軍では、イースタン・リーグに109試合に出場。打率.275、9本塁打、38打点の成績を残しました。1年目の2軍成績は、82試合に出場して打率.229、8本塁打、26打点でしたので、3部門とも向上していることになります。

特に今季、秋広がファームで記録したシーズン98安打はイースタン・リーグトップの数字。秋広の場合、長身であるがゆえに、ストライクゾーンは上下に広くなります。相手バッテリーから見ると、打ちづらいヒザ元を攻めたくなってくるところ。実際、インコース低目を突かれるケースが多いようです。

ヒザ元に来た球をどうさばき、ボール球になる変化球を見逃すか。ここが課題の1つで、中田に自ら自主トレ参加を志願したように、教えを請うことに貪欲な秋広。坂本も参加する秋季キャンプは、いい勉強の場になりそうです。

そしてこの秋は、秋広にとって大いに刺激になる出来事がありました。巨人は今年のドラフトで、高松商業高の外野手・浅野翔吾を指名したのです。昨年のドラフトでは、高卒野手の指名はありませんでしたが、来季は初めて「2学年下の後輩野手」が入ってくることになります。

しかも浅野は1位指名。当然、来年のキャンプでも注目され、チャンスも与えられるでしょうし、ウカウカしていると先を越されるのは言うまでもありません。内外野の違いはありますが、秋広は出場機会を増やすため外野を守ることもあり、直接の「ライバル」でもあります。

むろんこの2年間、ファームで汗まみれになって培った経験値では負けていません。秋広も、浅野のことは大いに意識しているようで、フェニックス・リーグの試合後も、こう語っています。

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『2年プロで経験してる分、新人の選手よりは良くないといけない。負けないように頑張ります』

~『スポーツ報知』2022年10月31日配信記事 より

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おそらくこのオフは、休み返上で練習に励み、正月の自主トレを迎えるであろう秋広。3年ぶりのV奪回に若手の成長は不可欠ですが「55番」はいつまでもファームにいていい番号ではありません。秋広が来季、1軍のレギュラー陣をどれだけ脅かすことができるかも、V奪回の大きなカギになりそうです。

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