日本は、韓国に歩み寄らずとも、突き放さずに済む方法はあるのか

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ジャーナリストの佐々木俊尚が11月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。自民党・麻生副総裁の韓国訪問について解説した。

日本は、韓国に歩み寄らずとも、突き放さずに済む方法はあるのか

2022年5月18日、韓国・光州で開かれた光州事件の追悼式典で演説する尹錫悦大統領(共同) 写真提供:共同通信社

自民党・麻生副総裁が韓国訪問、尹大統領と会談の方向で調整

自民党の麻生副総裁は、韓国の政財界関係者からの招きを受け、11月2日から2日間の日程でソウルを訪問する。滞在中、尹大統領とも会談する方向で調整している。

飯田)政財界関係者らでつくる「日韓協力委員会」の日本側の会長を務めているということで、招きを受けて訪問するそうです。

慰安婦問題に関しては第2次安倍政権の際に解決したはず ~徴用工問題は日韓請求権協定で解決済み

佐々木)韓国メディアの報道を見ていると、「ついに日本側が歩み寄りか」という記事などが出ていて、日本での日韓関係の報道とは温度差があるようです。

飯田)日韓の報道で。

佐々木)慰安婦問題に関しては、第2次安倍政権のときに安倍さんが最終的解決として財団をつくり、10億円を拠出して終わったはずです。それを韓国側の文在寅政権がひっくり返して……。

飯田)「和解・癒やし財団」という財団もほぼ機能停止にしてしまった。

佐々木)徴用工問題に関しては、大昔の1960年代に日本政府が払った賠償金に含まれているのです。

飯田)日韓請求権協定。

佐々木)日本側からすると、もはや問題として存在しないので、歩み寄る理由が何もありません。

政治において民意が過剰に強い韓国 ~韓国が折れるしかないが、政権が折れると民意が総反発するのでできない

佐々木)韓国側が歩み寄るしかないのだけれど、韓国は日本よりもさらに民意が強いのです。民主主義ですから、政治を決定するためには、もちろん民意は最重要です。しかし、専門家の知見のようなものも同時に必要です。専門家の知見と民意、そして「国として何が得なのか、損なのか」を政治家が判断する。この3つくらいのバランスで成り立っているのだけれど、日本と比べると民意が過剰に強い感じの国です。

飯田)世論調査によって出てきた答えこそが最も正しいのであると。「それをやるべきなのだ」となってしまう。

佐々木)それでも「韓国は素晴らしい」と言っている日本人もいるわけですが、私は若干バランスを逸している部分があると思います。まさに徴用工問題や慰安婦問題がそうです。

飯田)バランスを逸している。

佐々木)外交的なバランスで考えれば、韓国が折れるしかないのだけれど、政権が折れると民意が総反発するのは目に見えているので、どうにもできないジレンマに陥ってしまっているわけです。

徴用工問題の韓国側の新たな腹案

佐々木)朝日新聞が面白い記事を出していました。

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『日韓分かつ「徴用工問題」解決見ぬまま4年 韓国側に新たな「腹案」』

~『朝日新聞デジタル』2022年10月31日配信記事 より

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佐々木)徴用工の賠償金をどう払うか。日本は払ったと言っているのだけれど、向こうは財団をつくって日本企業から寄付を募るという。でも、日本企業から見ても寄付する理由は何もないという話で、暗礁に乗り上げているわけです。

飯田)そうでしょうね。

佐々木)朝日新聞の記事によると、慰安婦問題でつくった慰安婦を支援する10億円の財団があります。それがストップしているのだけれど、残余金、まだ払っていないお金を徴用工の財団に繰り入れて、それを支払うというのです。

飯田)当然「目的外使用だ」ということになりますよね。

佐々木)「それでいいのか」という。

飯田)また朝日新聞の記事よれば、寄付を受ける主体の団体がすごい名前で、「日帝強制動員被害者支援財団」という。

佐々木)日本側から見ると、慰安婦問題のために払った10億円を、なぜそんな名前のところに使わなければいけないのかと思ってしまう。「ちょっと難しいかな」という感じがします。

日本は、韓国に歩み寄らずとも、突き放さずに済む方法はあるのか

2022年9月30日、記者の質問に答える岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202209/30bura.html)

安全保障上、日本にとって重要な存在である韓国

佐々木)一方、もう少し広い目で見ると、日韓関係は慰安婦問題や徴用工問題だけではなく、安全保障も含めて考えると韓国の存在は大事です。東アジアは中東などに比べれば、戦後一貫して平和な一帯だと思われていたのですが、いまや北朝鮮、中国、ロシアとみんな核を持っていて、しかも攻撃的な国に囲まれている。

飯田)そうですね。

佐々木)味方になっているのはアメリカだけで、韓国がフラフラしている状況のなかでは、在韓米軍の存在も含めて、韓国の戦略的位置はとても重要です。日本の防衛費をGDP比2%にしましょうという話がありますが、2%にしてもこのエリアにはNATOがないわけですから。

飯田)東アジアには。

佐々木)いくら防衛費をドイツ並みにしたとしても、防衛費としてはまったく足りない。「ミサイル防衛をどうするのか」という話などが出てきます。結局のところ、個別的自衛権だけではどう考えても無理です。

日本を守るためには日米韓で安全保障対策を維持するしかない

佐々木)だったらアメリカと連携、もしくは日米韓3ヵ国で安全保障対策をきちんと維持するしかないという話になってくるわけです。「対米追従」をやめろと言う人は右にも左にもいるわけですが、この状況で対米追従をやめて、どうやって日本だけで過酷な状況を生きていくのか。そう考えると、現実的にはあり得ないと思います。

飯田)やるとしたら本当にGDPの1割、10%くらいの防衛費を割かなければならない。そうしたら産業の構造、経済の構造そのものが変わってしまうことになります。

佐々木)国産の兵器が世界中を席巻するくらいにならないと無理ですよね。現実的には難しいので、そうなると日米韓で連携を取るしかないということだと思います。

どうすれば外交的なロジックを保ったまま、韓国を突き放さずに済むのか ~難しい舵取りが求められる日本

佐々木)アメリカとしては、日韓関係にはとりあえずコミットしない。コミットしないけれど、仲よくしてくださいと。「あなたたちも私たち3ヵ国の連携がないと困るでしょう?」というメッセージを出し続けているわけです。

飯田)アメリカは。

佐々木)日本としては、ロジックから言うと、韓国に歩み寄ることはあり得ないわけですし、韓国側から何とかしてもらうしかない。ただ、何もできないまま中国側に行かれても、それはそれで日本としては非常に困るわけです。

飯田)中国側に行かれてしまっては。

佐々木)日本はどうやって外交的なロジックを保ったまま、韓国を突き放さないで済むかという、非常に難しい舵取りがあるのかなという感じがします。

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