北朝鮮が新型ICBMを日本のEEZ内に着弾させた「意図」
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ジャーナリストの須田慎一郎が11月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日本のEEZ内に着弾した北朝鮮の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)について解説した。
北朝鮮の新型ICBM、日本の排他的経済水域に意図的に落下か
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は11月19日、北朝鮮が新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を18日に行い、金正恩総書記が現地指導を行ったと報じた。18日午前に北海道の渡島大島(おしまおおしま)沖の日本の排他的経済水域内に落下したミサイルを指すとみられ、朝鮮中央通信では、公海上の予定水域に「正確に着弾した」と伝えている。
飯田)G7外相はICBMを発射した北朝鮮に対して、国連安保理が「一段の重要な措置」を取ることを求めたという報道もあります。
須田)大陸間弾道ミサイルは戦略核ですから、明らかにアメリカに対するメッセージであることは間違いないのだろうと思います。
飯田)相当高く撃ち上げましたけれども、普通の射角なら1万5000キロくらい飛ぶのではないかという分析が出ていました。
須田)いわゆる「ロフテッド軌道」というもので、高高度に上げる飛ばし方です。
北朝鮮がアメリカに望む2つのポイント ~二国間協議と体制保証
須田)北朝鮮の動きは、先代の金正日体制のときから一貫しているのです。ポイントは2つあります。1つは北朝鮮の体制保証をめぐって「アメリカと二国間の直接協議を求める」ということです。2つ目は、経済支援やそれ以外の問題よりも、「体制保証をアメリカ側から取り付ける」ことが北朝鮮にとってのトッププライオリティなのです。ところが、いまのところバイデン政権においては二国間協議に消極的ですし、やったとしても実務者協議だということで、「これについては門戸を開いていますよ」という状況です。
飯田)実務者協議については。
須田)加えて、トランプ大統領時代に一部は変わったのかも知れませんが、体制保証に関して北朝鮮は口約束ではなく、文書に落とし込むことを求めているのだけれども、一貫してバイデン政権は否定的です。
飯田)否定的。
須田)一方、米韓合同軍事演習では、日本の岩国から例のF35Bという垂直離着陸ができるような、まさに朝鮮半島向けの兵器が今回の演習に加わりました。相当な危機感を北朝鮮サイドは持ったのだろうと思います。
米韓と北朝鮮の戦端が開かれた場合は「日本も無傷ではいられない」という威嚇でもある
飯田)北朝鮮のICBM、そして核実験に対してですが、「それをやったら行動する」ということをバイデン大統領は習近平国家主席との首脳会談のなかでも話していました。
須田)さらに今回の米韓軍事演習では、戦略爆撃機を飛ばしています。そういった意味では、瀬戸際の攻防がエスカレートしている状況にあります。
飯田)エスカレートしている。
須田)日本のEEZ内に落ちてきたということは、朝鮮半島情勢に対峙しているのが米韓だけではなく、日本との連動がある。先ほど申し上げたように、F35Bは岩国から飛んでいったアメリカ海兵隊の航空機です。北朝鮮とアメリカ、北朝鮮と米韓の戦端が開かれることになると、「日本も無傷ではいられない」という威嚇だと思います。
現在の防衛力で十分なのか ~「危機に合う」体制を整えなければならない日本
飯田)そうなると、核を持って狙ってくる国が周りにひしめくようなところに、日本はいることになります。
須田)いまの防衛力で事足りるのかどうか。兵器のクオリティや量、そして予算の問題があります。「対GDP比2%」が次の国会の予算審議のなかで大きな議論を呼ぶと思います。
飯田)そうですね。
須田)急ピッチで進めなければならない状況でしょう。加えて敵基地攻撃能力についても、着地して整備を進めなければならない。そして、これは安倍元首相の遺産だと思うのですが、集団的自衛権の行使を可能とした安保法制だけで足りるのかどうか。やはり憲法改正、つまり9条2項の改正に踏み切る必要があるのかどうかも議論するべきです。すぐそこにリスクがあるわけですから。一連の全体構造のなかで、日本も「危機にどう向き合うのか」という体制をきちんと整えないと相当、危ないと思います。
韓国内で議論される「核兵器保有論」
飯田)韓国などを見ると、自分たちで核を持つ、あるいはアメリカとの間でシェアリングすることについて、具体的に議論されているという話も聞きます。敵基地攻撃などという話から、もっと危機的な状況ではないかという指摘もありますけれど、いかがですか?
須田)以前から韓国内の各種論文を見ていると、日本以上に「核兵器保有論」が掘り下げて議論されています。これまでの議論をみると、アメリカが抑制しているだけであって、アメリカの抑制がなければ韓国はおそらく核兵器を保有する可能性も高いのです。
飯田)アメリカがむしろ止めているという。
須田)止めている。
飯田)核ドミノが起こらないようにというのは、アメリカは気にしますものね。
須田)韓国内部としては、核兵器の必要性を感じている。それはそうですよ。38度線を挟んだ隣に核兵器保有国があり、アメリカがどこまで韓国を守ってくれるかも不透明ですから。そこでトランプ元大統領が「日本も韓国も核兵器を保有するべきではないか」というような、核兵器保有の容認を言い出したわけです。
飯田)自分たちで守るべきではないかという。
須田)その発言に対して、日本は強く戸惑ったのだけれども、韓国国内では一部それを歓迎する声があります。もともと核兵器保有論はあるのですから。アメリカが「持ってもいいよ」と言うのならば。
飯田)「では」という。
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