ウクライナ情勢で「目が覚めた」 日本の「安保政策のパラドックス」

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が12月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。公明党が了承した「反撃能力」の保有について解説した。

ウクライナ情勢で「目が覚めた」 日本の「安保政策のパラドックス」

※画像はイメージです

「反撃能力」保有を公明党が了承

飯田)反撃能力、敵基地攻撃能力などいろいろな表現がありますが、自公が「反撃能力」保有で合意しました。

宮家)それは正しい方向なのですが、あえて言わせていただくと、「敵基地」云々というのは1956年の議論ですからね。66年前の議論なのです。あのときから基本的に変わっていません。もちろん公明党だけではなく、他の野党の人たちも。

飯田)66年前と。

宮家)なぜ、こんな議論を66年間もしているのか。少なくとも30年前にソ連が崩壊したあとで、中国が出てくるのはわかりきっていた話なのだから、「なぜやらないのか」とずっと思っていたのだけれど、誰も言えなかった。

安保政策のパラドックス

宮家)なぜ変わったのかと言うと、簡単な話で、ウクライナ情勢が激変したからです。それで日本は目が覚めた。「安保政策のパラドックス」という言葉があります。

飯田)安保政策のパラドックス。

宮家)つまり、安保政策があまりにも上手くいくと、空気のようだから誰も感じないわけです。そのため、攻撃的な手段も含めて、必要性自体を感じなくなる。これが「安保政策のパラドックス」と私が勝手に呼んでいるものです。

飯田)安保政策があまりにも上手くいくと。

宮家)それがようやくそのパラドックスが終わったという感じです。でも、反撃能力を了承したことは物事の終わりではなく、始まりなのです。

飯田)安保政策があまりにも上手くいくと。

宮家)それがようやく破れたという感じです。反撃能力を了承したことは物事の終わりではなく、始まりなのです。

飯田)これからである。

宮家)反撃能力を持つことについて、みんながタブー視しなくなったのであれば、どのような形で、どのようなところに抑止力の矛先を持っていくのか。

飯田)その抑止力を。

宮家)「最も効果的に抑止できる」ことは何か。いままでその議論がまったくないまま、「敵基地攻撃能力はいけない」で終わってしまった議論を、ようやく始められるという意味では、よかったと思います。

66年間、何をやっていたのか

宮家)しかし66年間、皆さん何をされていたのですかと思います。もし66年間やってきたことが「正しい」と言うなら、「いまさら了承しないでくれ」とも思います。

飯田)筋を通してくれと。

宮家)状況が変わったとは言え、通せるのであれば、逆説的に「いままでの安保政策があまりにもうまくいっていた」という証明なのではないですかね。

与党全体で具体的な議論ができることは一歩前進

飯田)ご指摘された1956年の議論は、当時の鳩山一郎内閣ですよね。「座して死を待つものではない」という。

宮家)あの答弁で一応、持てるという説明をしてきたわけですけれども。ようやく与党全体がこういう形になり、話が一歩先に進んで、より具体的な議論ができるのはありがたいことだと思います。

「必要にして十分な反撃能力」と言ってもいいのではないか

飯田)武器使用の3要件のなかの「必要最小限とは、どこのラインだ」というようなことが、また議論になってしまう。

宮家)国会でも議論がありましたね。私も当時、国会答弁をつくっていて、「必要最小限とはどういうことだろう」と思っていました。もちろん答弁としては説明できるのです。できるのだけれど、「必要最小限では足りないではないか」と普通は思いますよね。

飯田)必要最小限では。

宮家)「必要にして十分な」などと言うならわかるのですが。気持ちはもちろん平和主義でいいのだけれど、もう今は「必要にして十分な反撃能力」と言ってもいいのではないでしょうか。

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