「マインドコントロールによる寄付の取り消し」は“やりすぎ”ではないか 旧統一教会被害者救済法案

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ジャーナリストの佐々木俊尚が12月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。旧統一教会被害者救済法案について解説した。

「マインドコントロールによる寄付の取り消し」は“やりすぎ”ではないか 旧統一教会被害者救済法案

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)日本本部(東京都渋谷区) 2022年7月20日  JIJI PRESS PHOTO / MORIO TAGA 写真提供:時事通信社

旧統一教会被害者救済法案、衆議院本会議で審議入り

旧統一教会の被害者救済に向けて、悪質な寄付を規制する新たな法案が12月6日、衆議院本会議で審議入りした。立憲民主党が、寄付の勧誘を行う法人などに課すとしている配慮義務を禁止行為とするよう法案の修正を求めたのに対し、岸田総理は「マインドコントロールによる寄付については多くの場合、取消権の対象になる」として理解を求めた。

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岸田総理)政府としては改正法案および新法案の国会審議において、法案の趣旨や目的について説明を尽くし、早期の成立に向け努力をしていくとともに、これらの法律がより実効的に運用されるよう、相談体制の強化等にも引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

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飯田)法案は、消費者契約法の改正案などとともに束ねられて出てきた形になっています。

佐々木)この話でいちばんのポイントは、「マインドコントロールによる寄付をどう扱うか」というところです。

マインドコントロールによる寄付の取り消しはやりすぎか ~「マインドコントロール」とは何か

佐々木)立憲民主党と維新の会は、マインドコントロール下で行われた寄付についても規制を求めています。それに対して岸田さんは、「マインドコントロールによる寄付は取消権の対象になる」と言ってしまったのだけれども、自民党・政府内からは、やりすぎだという意見が出たのです。

飯田)やりすぎだと。

佐々木)マインドコントロールとは何なのか、その定義が困難であるということです。

飯田)マインドコントロールの定義。

佐々木)あとは「信教の自由」にも関係します。マインドコントロールされているかどうかは内心の話であって、「あなたはマインドコントロールされている」と言われて、「いや、されていない」と言っても、されているかどうかは誰が決めるのかわからないわけです。

政府・与党内の「マインドコントロールは定義できない」という意見は妥当

佐々木)定義できない内心の問題にまで踏み込み、「これがマインドコントロールだ」と言ってしまっていいのか、という反発があります。「マインドコントロール(下の寄付)は取消権の対象にはしない方がいいだろう」というのが政府・与党内の意見でした。

飯田)マインドコントロールによる寄付について。

佐々木)しかし、岸田さんがそこを押し切ってしまったのです。私は政府・与党内の「マインドコントロールは定義できない」という意見の方が妥当だと思います。それを言うと、また「お前は旧統一教会の味方をするのか」と言われるので、非常に発言しにくい問題ではあるのだけれども、やはり宗教や内心の問題にはそこまで踏み込んではいけないと、私は自分自身の信条として思います。

信教の自由 ~誰にでも宗教は実在し、内心には踏み込めない

飯田)「自分の財産をどう使おうと勝手ではないか」という、憲法で保障されている財産権との兼ね合いもあります。実はその問題に踏み込んでいるのですけれども、そこを議論せずにやり過ごそうとしてしまっている。

佐々木)旧統一教会は「完全に悪だと社会的に断定されてしまっている団体だから、マインドコントロールはダメだ」と。「確かにそうだ」とみんな思うかも知れませんが、キリスト教やイスラム教、仏教などに当てはめてみるとどうでしょうか。

飯田)キリスト教や仏教などに。

佐々木)仏教における戒名には安いものから高いものまであって、高いものだと100万円する場合もあるではないですか。例えば100万円の戒名を買った親に対して、「あなたはマインドコントロールされている」と家族が言ったら、それを認めるのかという話になるわけです。

飯田)戒名の値段について。

佐々木)何をもってマインドコントロールと言うのか。我々が生きている日本国という現実社会の法律やモラルなど、ルールとは常に逸脱したところにあるのが宗教なのです。昔からそうですし、いまもそうで、たぶん未来もそうだと思います。

飯田)逸脱というのは、いい悪いという意味ではなく、まったく別のフィールドにあるということですね。

佐々木)その外側にあるものです。キリスト教にはイエスがいて、神がいて……というようなことは、社会のルールや法律としては何もないわけです。社会とは関係のないところにある。それを信じることは、常に社会から一歩外に出るわけです。

飯田)そうですね。

佐々木)キリストや神を信じていることは、一見するとマインドコントロールに見えなくもない。「宗教を信じるということは、マインドコントロールとどう違うのですか?」という話になりかねないと思うのです。

飯田)宗教を信じることと、マインドコントロールは。

佐々木)旧統一教会そのものに味方するという話ではなく、法律や国が宗教をどう扱うのかという問題です。そうは言っても、宗教を否定してしまってはいけない。宗教は存在するということです。あるものを「ない」と言ってはいけない。

飯田)宗教は存在します。

佐々木)国はそこまで踏み込んではいけないというのが、憲法に記されている信教の自由なわけです。内心に踏み込んではいけない。

飯田)内心には踏み込めない。

佐々木)だから今回の救済法案は、マインドコントロールのところで踏み込み過ぎではないかと思います。

宗教団体、内心を縛るのはいきすぎではないか

飯田)もちろん、(悪質な)勧誘行為や宗教2世については、個別具体的な問題としてあるので、児童虐待の部分で対応するなど、既存の枠組みのなかでもできるという指摘もあります。

佐々木)そうですね。第2次安倍政権で消費者契約法を改正したように、例えばものを買うときにクーリングオフできて、返金できる。消費者契約法を霊感商法にまで広げましたというような。今回は、ものを買うだけではなく、寄付行為に関しても返済できるようにしましょうということです。そういう行為について縛っていくことはOKだと思うのです。

飯田)寄付行為についても返済できるということは。

佐々木)行為について縛るのではなく、教団という団体そのものを縛るとか、あるいは内心に関することを縛っていくというのは、いきすぎなのではないかと思います。なかなか難しい議論ですけれどもね。

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