「ツイッター炎上」時代の終焉と「ウエストランド」の漫才の共通点

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ジャーナリストの佐々木俊尚が1月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「ツイッターの炎上」にみられる批判のあり方の変化について解説した。

「ツイッター炎上」時代の終焉と「ウエストランド」の漫才の共通点

「M-1グランプリ2022」で優勝したウエストランドの左から井口浩之、河本太=2022年12月18日 東京・六本木 写真提供:産経新聞社

ツイッター炎上時代の終わり

飯田)ついに終わりますか。

佐々木)「ツイッターで炎上」することが、いままで盛り上がってきたではないですか。誰かの失言に対してみんなが「ワッ」と批判する。それがある種のエンターテインメントになっていると言われていました。

飯田)SNSのなかでの。

佐々木)ここ数年、「燃やしてやろう」というような人がすごく増えてきています。そのような人が燃やして、みんなが「おお、燃えている」と楽しむというのは、少し変ですよね。

電車のなかで酔って若者を罵倒するお爺さんに加担する人はいない ~「ツイッター炎上」とはそういうこと

佐々木)電車のなかで酔っ払ったお爺さんが、若者などに「何だお前、この野郎」と怒鳴っていたとします。そのときに周りの人は「お爺さん、やめなさい」と言うか、黙認するかのどちらかです。お爺さんのうしろに立って「そうだそうだ、お前はけしからん」と言う人はいないですよね。

飯田)確かにいないですね。

佐々木)普通に考えればあり得ない。しかし、ツイッターではみんながそれをやっている。それはおかしいですよね。

2022年ごろから「燃やしている人の方が変ではないか」という風潮に変化してきた

佐々木)前までは燃やされている方がけしからんということで、面白いから虐めてやろうという感じだったのですが、「燃やしている人の方が変ではないか」となってきたのが、おそらく2022年ごろからの風潮です。

飯田)去年(2022年)ごろから。

佐々木)それを象徴的に感じたのが、2022年暮れのM-1グランプリでした。

小者感のある人が偉そうに悪口を言うウエストランドの漫才

佐々木)優勝した「ウエストランド」の2人組がいますよね。あれは昔のツービートのような「毒舌漫才の復活」と言われています。確かに小柄な井口さんの方が毒舌なのが面白いところです。

飯田)そうですね。

佐々木)何人かの人がツイッターで指摘していて、私も「そうだな」と思ってYouTubeで漫才を観て確認したのですが、井口さんの方が毒舌(の役割)であり、毒舌を振るわれた方を笑うのではなく、井口さんが小者に見えるから笑うのです。

飯田)小者が毒舌を振るうから。

佐々木)それが演出だと思うのですが、小者感のある人が偉そうに悪口を言っていることが「ダサい」というような笑いなのです。

炎上させている方が、「あいつは何で人を燃やしているんだ」と馬鹿にされているというように空気感が変わってきた

飯田)毒舌そのものに笑うのではなく。

佐々木)小者が偉そうに人を馬鹿にしているのがおかしい。これはまさに、いまのツイッターではないかと思うのです。

飯田)なるほど。

佐々木)毒舌によって炎上させられている方が笑われる対象になるのではなく、炎上させている方が、「あいつは何で人を燃やしているんだ」と馬鹿にされるように、空気感が変わってきているのだと思います。

飯田)大人げないではないかと。

佐々木)そうですね。

ツイッターの言論空間がリアル社会のまともな反応に近付いてきた

飯田)ツイッターの言論空間が成熟してきたということですか?

佐々木)電車のなかで酔って怒鳴っているお爺さんがいたら、それに加勢するのは変ですよね。リアル社会に近付けば近付くほど、リアル社会と同じような反応や心の動きになっていくのは間違いありません。ある意味、成熟したのと同時に、リアル社会のまともな反応に近付いてきていると言えるのではないでしょうか。

炎上させる方がやりすぎてしまった ~なぜあの人たちは毎回、探し出してきては燃やしているのだ

佐々木)もう1つは、炎上させる方がやりすぎてしまうということです。特にイデオロギー的な人がよくやるのです。最も典型的なのは、フェミニズム系の人たちです。

飯田)フェミニズム系の人たち。

佐々木)少しでも萌え系のイラストなどが公共空間のなかにあると、途端にそれを燃やそうとして、躍起になるというようなことを繰り返しています。

飯田)「見たくないものを見ない権利があるのだ」というような。

佐々木)「不快だ」というような主張です。最初のころは「それもそうだよね」という意見も多かったのですが、やりすぎた結果、「なぜあの人たちは毎回、探し出してきては燃やしているのだ」という反応になった。何でもかんでも燃やすのはやりすぎなのではないか、という空気が生まれてきたこともあると思います。

専門家の人によって、間違いを冷静に指摘されるようになった

飯田)そこに法律の専門家の方々が入ってきて、「そこまでやってしまうと、今度は言論の自由ともバッティングしてしまうよ」という冷静なカウンターが入ってくるようになりましたね。

佐々木)不快を理由に表現を規制してはならないという、あまりにも当たり前の原則なのですが、そこがきちんと指摘されるようになってきたことが大きいと思います。

飯田)そこが指摘されるようになった。

佐々木)日常のルールとして当たり前のことが、ツイッターのなかでもようやく取り戻されてきたのではないかと思います。

今後のSNSの役割 ~新聞を読まなくなったあと、世論の形成はSNSしかない

飯田)ここから先、成熟した言論空間になっていくのでしょうか?

佐々木)最近は「新聞がなくなる時代」というようなことが言われています。15年後には新聞の購読者がゼロになるのではないか、というような計算をしている人もいます。

飯田)新聞を読む人がいなくなるのではないかと。

佐々木)その先の世論形成は、やはりSNSしかないと思います。

飯田)世論を形成するのは。

佐々木)テレビやラジオ、Webメディアなどが記事を提供する。それに対してツイッターなどで人々がどのように反応するのかということです。テレビだけではなく、ツイッターもウォッチして、「ツイッターで世論がどのように動くのか」というようなところに、自民党政権はかなり呼応している部分があります。

飯田)自民党が。

佐々木)ツイッターで世論の反応を見るようなことが、新聞の世論調査に代わるものとして、少しずつ定着していくのではないでしょうか。もちろん、単純に信用してはいけないと思いますが、そこをどう見ていくのかという、分析力のようなものが求められると思います。

飯田)そことリアルをどのように補正していくのか。

佐々木)そうですね。

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