課題が山積み 岸田政権の「2つの山場」
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ジャーナリストの鈴木哲夫が1月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2023年における岸田政権の今後について解説した。
2023年の政局の節目
岸田総理大臣は1月4日に行われた年頭記者会見のなかで「今年は覚悟を持って先送りできない問題への挑戦を続ける」と強調したが、1月23日から召集される国会での与野党の論戦に始まり、防衛費の増額、財源に関する問題、衆院解散など、課題は山積み。果たして岸田政権はこの難局をどう乗り越えるのか、2023年の政局の節目はどこにあるのか。
飯田)2023年の政局の節目ですが。
鈴木)今年は政局の年になる可能性が高いと思います。節目のようなものが早々に2つあるのではないでしょうか。
飯田)2つある。
鈴木)「文藝春秋」にもインタビューが掲載されましたが、菅さんが厳しいことを言い始めた。政策勉強会のようなものをつくって、「ポスト岸田へ動き始めたな」というのが私の感想です。
飯田)菅さんが。
鈴木)菅さんを長く取材していて、「いま何を考えているのか」を私なりにイメージしているのですが、官僚政治に対して、「政治主導で進めるのだ」という思いが菅さんはかなり強いのです。
飯田)政治主導で。
鈴木)以前の話になりますが、安倍政権ができたときに菅さんが官房長官になった。当時、取材させていただいたときに「官房長官として何をやりたいですか? 」と政策について聞いたのですよ。ふるさと納税など、いろいろとやっていたではないですか。ですから何をやりたいのか聞いたら、「内閣人事局という仕組みをつくりたい」と言ったのです。要するに、官僚人事を官邸が行うということです。
飯田)官邸が行う。
鈴木)官僚の人事権を握ることによって、霞が関をコントロールしなければ政治はできないのだという。いのいちばんに挙げたものがそれだったのです。
「官僚主導」にストップをかける菅氏
鈴木)最近の岸田政権を見ていると、霞が関の官僚というか、省庁の影が強く見えてきているでしょう。例えば増税には財務省の影が見えるし、原発の問題は経産省が見える。コロナに関するお金については、補助をやめるかどうかなども含めて厚労省の影が見えている。官僚主導というわけでもないけれど、その辺りに対して、菅さん自身が「私がストップをかけなくては」と考えているのではないでしょうか。
飯田)菅さんが。
鈴木)そういう意味では、政治主導がいきすぎても問題なのだけれど、「岸田さんは官僚側にぶれているかな」という気もするので、そういう菅さんの意味合いもあるのかなと思います。
「霞が関の方が上になっている」と菅氏が感じているのでは
飯田)確かに90年代からの一連の政治改革など、官邸の機能強化などは結局、「官僚主導だったものを政治主導に取り戻すのだ」という一連の流れがあった。まさにそこにコミットし続けてきた菅さんからすると、「苦労してここまでやってきたものを、巻き戻すつもりか」となるわけですね。
鈴木)安倍政権もそうだったではないですか。その危機管理を菅さんがやっていたから、安倍さんは政治主導でいろいろなことを進めてきたでしょう。お互いにチェックアンドバランスが大事ですから、官僚と喧嘩しろと言っているわけではないのだけれども。
飯田)適切な緊張感。
鈴木)そうですね。そういう緊張感が、現在は霞が関の方が上にいっているのかなと、菅さんは考えているのではないでしょうか。発言の裏側からそんなことを感じます。
政局の山場の1つは「統一地方選挙」 ~その結果が岸田批判につながる可能性も
鈴木)今年の政局なのですが、2つの山場のうち、まず1つは統一選です。
飯田)統一地方選挙ですか。
鈴木)今年の4月に行われますが、「自民党は厳しいのではないか」と言われている。地域事情もありますので、それほど自民党が大きく負けるかどうかはわかりません。保守の強いところは、意外と自民党は普通に勝てるのではないかという見方もあります。
飯田)保守の強いところでは。
鈴木)ある元選挙対策委員会のベテランの話ですけれど、都市部ではかなり影響があり、いまの自民党政権の支持率が低い影響が出てくるだろうと言っています。現に私が取材している東京の区議会議員は、自民党の候補なども「怖くて街頭に立てない」と。
飯田)怖くて立てない?
鈴木)「増税するのか」、あるいは「旧統一教会とあなたの関係は大丈夫なのか」などと、いろいろ言われてしまうからです。本当はいまこそ街頭に出ないといけないのだけれど。
飯田)名前を売らなければいけないのに。
鈴木)街頭に出れば、かえって火を付けてしまうかも知れない。だからいまは水面下で、支援者のところへ一生懸命まわって固めていると言っていました。だから都市部では影響が出るのではないかと思います。
飯田)なるほど。
鈴木)統一選の結果が、その後の組織内での岸田批判につながっていく可能性がある。ですから、統一選の結果がポイントです。
もう1つの山場は「G7広島サミット」のあと ~解散カードを切る可能性
鈴木)もう1つはサミット後です。
飯田)5月に開催予定のG7広島サミットですね。
鈴木)解散カードは、岸田さんにとって最大のカードなのです。菅さんもそうですし、河野太郎さんなどの岸田さんに文句があるような人たちも、解散になればみんな自民党のために一生懸命、選挙を行わなければいけないわけです。
飯田)そうですよね。
鈴木)自民党が勝てば、皮肉にも岸田さんが信任されたことになります。
飯田)自民党が勝てばそうなります。
鈴木)そういう意味では、岸田さんにとって解散カードは有効なのです。そこそこに勝つためには、支持率が少し上がったところで打つしかない。そのタイミングはやはり、サミットのあとです。
2024年の自民党総裁選に向けて、サミットから10ヵ月の間に解散
鈴木)広島サミットで世界に向けていろいろと発信しますから、「岸田さんはリーダーシップを取っているな」とか、「核廃絶を世界にアピールしたな」などとなる。それで支持率が少し上がれば、解散を打ってくる可能性があります。総裁選が来年の秋にありますから。
飯田)2024年秋に総裁選がありますね。
鈴木)ここで再選を目指すためには、それまでに解散しなければいけない。あまり近すぎると封じられますから。
飯田)近すぎれば。
鈴木)そうするとサミットが終わってから、だいたい10ヵ月くらいの間で、少しでも支持率が上がったときに解散カードを切る。ということは、サミット後は常に常在戦場というイメージを持っています。ですから2つの山場は、まず統一選の結果がどうなるのか。そしてサミットのあとにどう岸田さんが動くか、ということです。
最短では国会のあと
飯田)5月にサミットを行うということは、国会の召集は1月23日ですので、通常国会は150日くらいになります。延長なしでも、サミットが終わったときは、まだ国会は開いている最中です。
鈴木)開いていますね。その辺りからです。ただ、国会が終わって最後の方には当然、不信任だ何だという話になってきます。そこで解散を打つ。最短では、その辺りの可能性があると思います。
衆院選に勝てば、岸田氏を信任せざるを得ない
飯田)そこで勝って、「衆・参・衆」と3つの選挙に勝つことになると……。
鈴木)自民党内でも、もう下ろせなくなるでしょう。信任せざるを得ません。だから岸田さんにとっては最高のカードなのです。有権者はそれに対してしっかりと構えていなければならない。サミットだけではなく、去年(2022年)からいろいろなことが起きています。そういうものをしっかりと頭に入れた上での投票行動、1票を投じて欲しいですね。
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