次期大統領選への大きな「痛手」となるバイデン大統領の「機密文書問題」

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青山学院大学客員教授でジャーナリストの峯村健司が1月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。バイデン大統領の自宅から見つかった機密文書について解説した。

次期大統領選への大きな「痛手」となるバイデン大統領の「機密文書問題」

2023年1月12日、バイデン大統領による出迎えを受ける岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/13usa.html)

バイデン大統領の自宅から新たに機密文書6点が見つかる

アメリカのバイデン大統領が、副大統領時代の機密文書を持ち出していた問題で、司法省は1月20日、バイデン氏の自宅を家宅捜索し、新たに機密文書を含む6つの資料を押収した。バイデン氏の弁護士が21日未明に明らかにした。

飯田)個人事務所や自宅から見つかったそうです。副大統領時代ですから、オバマ政権のときですか?

峯村)上院議員時代のかなり古いものもあるということです。中身が気になって調べていますが、ウクライナ関係の資料もあるのではないかと言われています。ウクライナとバイデンさんで言うと、ハンター・バイデンさんの話があります。

飯田)息子さん。

峯村)それをどうしても考えてしまいますよね。機密文書の数については、トランプさんは100点以上なので、バイデンさんの方はまだ少ないのですが、これは数の問題ではなく、質の問題です。

飯田)質の問題。

峯村)「どのようなものがあったのか」が重要です。

バイデン大統領にとって次期大統領選における大きな痛手となる ~トランプ前大統領の機密文書問題を責め立ててきた民主党

峯村)バイデンさんが近く出馬表明するのではないかという話も出てきています。

飯田)2期目の大統領選へ向けて。

峯村)しかし、今回のことは痛手になると思います。私が昨年(2022年)末にアメリカに行ったときは、民主党が中間選挙も勝って、「このまま上手くトランプ側を追い込んでいけば勝てるだろう」と踏んでいました。その最大の理由が、トランプ氏の機密文書問題だったわけです。そこを厳しく責め立ててきた。ところが、同じ構図でバイデンさんも見つかったとなると、そのまま自分に返ってきてしまいます。

飯田)わかりやすいブーメランですね。

峯村)これ以上のブーメランはありません。それが1つ。

自宅から機密文書が出てきたことで思い出される、2016年のヒラリー・クリントン氏の「メール問題」 ~二重にバイデンさんに不利に

峯村)もう1つは、「家から機密文書が出てきた」というと、多くのアメリカの人は、2016年の大統領選挙の際に起きたヒラリー・クリントンさんのメール問題を思い出すわけです。

飯田)なるほど。

峯村)当時ヒラリーさんは、自宅に届け出ていない個人サーバーをつくってやり取りしていた。そこに機密情報も入っていて……という話でした。

飯田)そうでした。

峯村)これは二重に、バイデンさんにとって不利になるのではないかと思います。あのときの選挙も、ヒラリーさんの方がトランプさんに対して優勢だったけれど、一気にメール問題で「ガタガタガタ」と落ちていったのです。「オクトーバーサプライズ」と言われていますが、スキャンダルとなってヒラリーさんが負けたケースです。それが早い段階で出てきたことは、バイデンさんにとって大きな痛手になりうると思います。

バイデン氏側の弁護士が中間選挙が終わるまで隠していたのではないかという批判

飯田)大統領が「2期目もやる」と言うと、党内では反対しづらいのかも知れませんが、こうなってしまうと、表明すらできなくなってしまうのではないでしょうか?

峯村)そこまで影響するかどうかはわかりませんが、バイデン氏は最初から不人気でしたし、発言に関しても「記憶力に問題があるのではないか」と疑問視する声もあります。

飯田)年齢も高齢ですものね。

峯村)「大丈夫か?」と思っていたけれど、中間選挙で「意外と頑張ったではないか」と評価を盛り返していたのですが、今回のタイミングです。そのタイミングも問題なのです。

飯田)タイミングも。

峯村)バイデン氏側の弁護士が、もっと早く見つけていたのに隠していて、「選挙が終わってから出したのではないか」という批判が出ています。

飯田)見つかっていたのに、選挙が終わるまで隠していたのではないかと。

峯村)中間選挙前にこの話が出てきていたら、民主党は勝てていなかったのではないかと言われています。おそらく私も、勝てていないと思います。そう考えると、トランプ氏の支持者も含めて、また「違法な選挙だ」と言いやすくなってしまう。大きな問題になると思います。

次期大統領選への大きな「痛手」となるバイデン大統領の「機密文書問題」

米オハイオ州で開かれた共和党候補の集会で演説するトランプ前大統領=2022年11月7日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

次期大統領選は2020年よりも劣化した「バイデンVSトランプ」になる可能性も

峯村)一方で今回、ワシントンに行って思ったのですが、共和党もトランプさんに対抗する強力な候補者がいないのです。フロリダのデサンティスさんは知事選に勝って、勢いがあるのですが、会った人に言わせると、大統領選に重要な「カリスマ性に欠ける」と言う人が多かったのです。

飯田)そうなのですね。

峯村)スマートだけれどカリスマ性に欠ける。トランプさんが2016年の選挙で勝ったのは、観衆を魅了する一種のカリスマ的があったと感じています。デサンティスさんの場合、そこが厳しいのではないかと思います。

飯田)カリスマ性に欠ける。

峯村)対する民主党の方も、バイデンさんがあの体たらくになってきて、副大統領のハリスさんを推す人はほぼいない。

飯田)ハリスさんも。

峯村)他の候補がいるかと言うと、「この人だ」という人が出てきていません。そう考えると最悪のシナリオは、2020年のような「バイデン対トランプ」となる。

飯田)同じ2人に。

峯村)しかし、どちらも問題を抱えていて、2020年よりも劣化した「バイデンVSトランプ」という、究極の選択になる可能性が出てきています。

飯田)盛り上がらない大統領選になってしまいますよね。

峯村)盛り上がらないですよね。

岸田総理が訪米した際に記者会見がセットされなかったのは、機密文書問題について突っ込まれてしまうから

飯田)岸田首相が訪米した際、会見がセットされなかったのは、この問題に突っ込まれる可能性があったからではないかと言われています。

峯村)おそらく関連しているでしょう。機密文書問題について突っ込まれてしまうので会見しなかった可能性があります。

飯田)記者から。

峯村)基本的にホワイトハウスの会見では、アメリカ側の記者は日本のことなど誰も聞きません。ほとんど大統領の話になってしまうので、会見しなかったのではないでしょうか。

失言の数も多いバイデン大統領

飯田)外交への影響で言うと、議会の陣容が変わって、特に下院議長がなかなか選出できなかった。予算などでも「ウクライナ支援が滞るのではないか」と言われていますが、それだけではないですね。

峯村)それだけではなく、「大統領本人が」という話になってきますので、深刻な問題です。また、「本人がこの深刻さをわかっているのか」も疑問です。最初にこの問題が出てきたとき、記者会見で「路上駐車をしていたわけではなく、鍵のかかる車庫に入れていたから大丈夫だ」という発言がありました。本人はジョークで言ったのでしょうが、笑えるものではなく、「そういう話ではないだろう」と思いました。

飯田)持ち出していることそのものが問題ですよね。

峯村)トランプ氏のインパクトが強過ぎて、「バイデン氏はまともだ」というイメージがあるのですが、副大統領時代のバイデンさんを取材したこともあるけれど、トランプさんもバイデンさんも大差ありません。失言の数もそれほど変わりません。そういう意味でも、トランプ氏と相似形にみられる今回の問題は、バイデン氏にとっては大きな痛手になると思います。

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