岸田内閣は「家計の痛みに鈍感」 増税するならば国民に信を問うべき

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前日本銀行政策委員会審議委員の片岡剛士が1月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田内閣の防衛増税や子育て支援に対する姿勢について解説した。

岸田内閣は「家計の痛みに鈍感」 増税するならば国民に信を問うべき

【第211通常国会】マスクを外し施政方針演説に臨む岸田文雄首相=2023年1月23日午後、衆院本会議場 写真提供:産経新聞社

岸田総理、防衛費の増額や衆議院の解散などについて「適切に判断」と発言

1月25日、国会では岸田総理大臣の施政方針演説に対する与野党による代表質問が衆議院本会議で始まった。立憲民主党の泉代表から防衛費増額に伴う増税、いわゆる「防衛増税」について「衆議院の解散総選挙で国民の信を問うべきだ」と追及されたのに対し、岸田総理は次のように述べた。

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岸田総理)財源確保にあたっては国民のご負担をできるだけ抑えるべく、行財政改革の努力を最大限行うこととしている。何について、どのように国民に信を問うかは、時の内閣総理大臣の専権事項として、適切に判断してまいります。

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家計の痛みに鈍感な岸田内閣 ~「家計の負担感を弱めよう」というスタンスが見えない

飯田)増税について、いろいろと出てきますけれども。

片岡)岸田政権は家計への痛みに鈍感というか、負担感を強めるような話に対して、それを「是正しようというスタンスがあまり見えないな」というのが正直なところです。

飯田)家計への痛みに対して。

片岡)ガソリン価格が上がっているときに、家計に対して値段が上がった部分を補填するのではなく、企業に対して補助金を出すという話になった。要は「元売りに負担してもらおう」という発想に至っているのです。

飯田)ガソリン価格の上昇において。

片岡)最近、子育て支援や教育の方面で、少しお金を配ろうという話は出てきていますが、油断すると、体面としては「増税」のような議論も出ていて、なかなか油断できない感じがあります。

子育て対策の財源を社会保険料で賄うなど、痛税感が薄い領域に持っていこうとする

飯田)「子育て給付」というような話が施政方針演説で出てきたと思ったら、各紙サブの見出しに「財源は社会保険料」などと書かれていて、「また上がるのか?」と思いました。あれも天引きされることになりますよね。

片岡)サラリーマンの方の場合、社会保険料が引き上げられると実際には痛みがあるのですが、その痛みを直接的に目に見える形で「減ったな」と反映される機会は、あまりない部分があります。

飯田)そうですね。

片岡)ですから痛税感が薄い領域を中心に、じわじわと知らないうちに負担が強まるような格好に持っていこうとしている部分があると思います。

社会保険料を財源にすることは、所得の低い人には負担が大きい

片岡)社会保険料自体は、人頭税的な性格を持つので……。

飯田)国民1人ひとりに一律に課すというような。

片岡)ある意味、負担が掛かれば掛かるほど、逆進性があるという特徴も重要だと思います。

飯田)逆進性がある。

片岡)社会保障は弱い方、ないしはハンデを抱えた方々に対して手厚く給付し、サービスを与えるのが本義なわけです。その人たちに対する給付の財源として、同じ階層の人たちに痛みが伴うような負担感を押し付けると、結果的にプラスマイナスがゼロになってしまい、「意味がない」という話になりかねません。

飯田)人頭税として基本的に1人ずつ掛かり、同じ税率だということになれば、金持ちは同じ税率だったら楽だけれど、所得の低い人はきつくなっていきますよね。

増税するのであれば、国民に信を問うべき

片岡)配慮は必要だと思います。また、増税するのであれば、国民に信を問うべきではないでしょうか。

給与明細をよく見たとき、社会保険料に痛さを感じる

飯田)増税の話について、“エドタ”さんから、ツイッターで「給与明細を見たときに社会保険料がいちばん痛さを感じます」といただきました。明細を見れば痛さを感じるけれども、見ない人は感じずに「この給料か」となってしまうところです。

片岡)忙しすぎて、なかなか銀行口座を確認できない方からすると、どうかなという話かも知れません。

岸田内閣は「家計の痛みに鈍感」 増税するならば国民に信を問うべき

2023年1月24日、会議のまとめを行う岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/24taisakuhonbu.html)

選挙もせずに「増税」を行うのは国民が納得しない

飯田)「解散して信を問え」という意見ですが、この間の選挙公約に「増税まで載っていただろうか」と考えると、やはり信を問うべきです。安倍さんの時代は増税を止めることに対しても、「信を問う」として解散がありましたからね。

片岡)消費税の引き上げに関しても、経済動向に配慮しつつ2回延期しましたからね。その上で「どうしても」という話になり、「やむなく行った」という流れでした。安倍さんご本人の気持ちを忖度すると、そういうことだと思うのです。「増税」の話が出たとき、そのまま選挙もしないで実行することになれば、国民の納得は得られない気がします。

増税によって内需を大幅に悪化させ、事故を起こしかねない ~慎重に進めるべき

飯田)片岡さんが審議委員を務められたタイミングは、安倍政権、菅政権、そして岸田政権と。政権ごとの財政や税も含めた経済に対する考え方は、時期によって風向きが変わるものなのですか?

片岡)私が審議委員だったときは、基本的にあまり変わっていなかったと思います。ただ、インフレ率も含めて徐々に情勢が変わってくるなかで、岸田政権としても、少し早いとは思うのですが、「いよいよ増税を」という話が出てきているのが現状だと思います。

飯田)情勢が変わってくるなかで。

片岡)こうした変化は経済状況に応じて起こり得ることだと思うのですが、安易にブレーキを掛けてしまうと、ダメージが予想以上に大きくなる可能性があります。

飯田)安易にブレーキを掛けると。

片岡)世界経済の動向もあまりよろしくないなかで、日本経済としては内需が重要なわけですが、内需の状況を大幅に悪化させるような政策に急転換すると、急ブレーキになってしまう。スリップして事故を起こすことにもなりかねないので、やはり慎重であっていただきたいと思います。

増税がこれから伸びようとするサービス消費に水を差すことになりかねない

飯田)片岡さんがご指摘された家計の部分に対して、内需を分解していくと、個人消費は大きなウェイトを占めるわけですよね。

片岡)現状、企業利益は最高益に近い状況になっていて、設備投資が盛り上がっているわけです。そして今度は賃上げしようかという動きが企業のなかで出てきている。

飯田)賃上げしようかと。

片岡)そういう状況で、消費だけがあまり盛り上がっていない。コロナ禍でサービス消費が盛り上がっていなかったこともあり、全体的に財消費中心で、従来に比べると2つのエンジンがない状況でした。

飯田)コロナ禍では。

片岡)いまは片一方だけであまり力が強くないと思うのですが、コロナ禍の状況から徐々に脱却するなかで、サービス消費が増えていく。これから伸びていくというところで「また増税か」、「所得に対して負担感を高めるのか」という話になると、せっかく上がってくる流れが萎みかねません。そういうところが心配です。

飯田)景気の気は気分の気などと言いますが、そういう部分に敏感なのですか?

片岡)働きかける必要があると思います。

飯田)アベノミクスにも当初、「期待に働きかける」という言葉がありましたよね。

「防衛費のために増税を」ではなく、いまこそ「所得拡大を」

片岡)いまの局面は「防衛費のために増税を」ではなく、いまこそ「所得拡大を」です。賃上げのために、政府としても所得拡大のサポートを具体的に進めることが重要だと思います。

飯田)資産所得ではなく、率直に「所得」にして欲しいですよね。

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