「ガソリン補助金」の問題点を前日本銀行政策委員会審議委員が指摘
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前日本銀行政策委員会審議委員の片岡剛士が1月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。開始から1年になる「ガソリン補助金」について解説した。
ガソリン補助金
政府の石油元売各社への補助金事業である「燃料油価格激変緩和補助金」、いわゆるガソリン補助金が、1月27日で開始から1年となる。経済産業省が発表した1月23日時点でのレギュラーガソリン1リットルあたりの全国平均価格は前週比0.1円安の168.1円で、3週間ぶりの値下がりとなった。
飯田)ガソリンだけではなく灯油なども含めたものですが、補助金好きな政権ですね。
ターゲットとなる価格への差額分を元売り会社に補助金として出し、価格を下げさせる政策
片岡)ガソリン補助金はターゲットとなる価格が決まっていて、それに対して足元の価格が上回っていると、元売り会社にその差額分を補助金として出すことで(価格を)下げるように促す政策なのです。
本来ある「価格によって消費者が消費するかどうかを選択する」価格の機能を弱めるところが問題 ~需要が減れば価格が下がるのが市場原理
片岡)価格の上下は、消費者側がものを消費するかしないかの1つの選択基準になるわけです。この政策の1つの問題点は、選択肢としての役割を果たす価格の機能を弱めようとするところです。
飯田)価格の機能を弱めようとするところ。
片岡)ガソリン価格が上がってしまえば、ガソリンをあまり使わなくてもいい人たちはガソリンを使わなくなり、需要が減る。需要が減れば当然、価格が下がっていく流れになるわけですが、そういう機能がこの政策によって失われてきている側面があります。
本来ある価格メカニズムを働かせるためには、家計に対して減税することが望ましい
片岡)本来であれば企業側も、省エネ方向に進めるインセンティブにつながるわけですが、そういうインセンティブを失わせているのが問題です。むしろ負担感を抑えて、「価格メカニズムを働かせるにはどうしたらいいか」を考えるのですが、そのためには家計に対して減税する方が望ましいと思うのです。
飯田)元売りに補助金を出すのではなく。
片岡)ガソリンの値段が上がっているけれども、それを使うか使わないかの選択肢はエネルギーを使う側に与え、その上で使うのであれば、使った金額に対して負担率を下げられるような減税策を講ずる方が合理的だと思います。
ガソリン価格を下げるための政策には議論の余地があるのでは
飯田)需要と供給のバランスで価格が決まっていくのは、まさに市場原理です。市場が歪んでいるというような話は、国債などの議論ではよく言われますが、相当歪める政策なわけですよね。
片岡)これは価格メカニズム、市場を歪める政策なわけですけれども、それによってメリットがあるからあえて行っているわけです。
飯田)メリットがあるから。
片岡)この場合は、元売り会社に対して補助金を与えることで、短期的に急騰しているガソリンの値段を下げることが目的なのです。ですから、それが達せられればいいわけですが、達成の仕方に関しては未だ議論があると思います。
ガソリンの値段は政策的にもっと下げられるのではないか
飯田)1月27日で開始から1年になりますが、思い返してみると、去年(2022年)のこの時期はガソリン価格が上がるなかで、いろいろな税金が乗っているではないかと。それを見直したらどうかという議論があったはずですよね。
片岡)「ターゲットの価格を下げてもよかったのではないか」という議論がありました。ただ、ガソリンの値段がどのくらい上がり続けるのかがわからない状態なので、高騰が予想以上に長期化すれば当然、必要な支出は増えるわけです。
飯田)高騰が予想以上に長期化すれば。
片岡)それに対して、また「財源が」という議論になる。「財源が必要だからこのくらいの金額にしようか」という話で決まっているということです。本来であれば、もっとガソリンの値段は政策的に下げられるのではないかと思いますが、あまり下がっていないところがあります。
所得が増えるような政策も併せて行うべき
飯田)ガソリン補助金は1年になりますが、それだけではなく、電気やガス辺りにも補助金を入れていく。税金を下げてくれないですね。
片岡)電気代も非常に上がってきています。それに応じて賃金が上がるような状況になれば、痛みは軽減されるのです。今回のように電気代やガソリン代に対して補助金を与えるという話だけではなく、そもそも所得が増えるような政策も、岸田政権は併せて進めるべきだと思います。
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