前日本銀行政策委員会審議委員の片岡剛士が1月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の景気動向について解説した。
中国の経済活動の停滞で中国への輸出が落ち込んでいる ~心配される堅調な企業の利益への影響
飯田)経済について、政府が1月の月例経済報告を出しました。景気の基調判断が11ヵ月ぶりに引き下げられましたが、足下は弱いですか?
片岡)基本的に景気の動向は緩やかな持ち直し基調だったのですが、やや天井に差し掛かってきている感じです。いつ天井から局面変化になるのかが今後の注目どころだと思いますが、局面変化で1つ気になるのは、海外の状況です。
飯田)海外の状況。
片岡)今回の月例報告でも出ていますが、特に輸出について、脱コロナのなかで中国の経済活動が停滞している状況を受け、日本から中国に向けた輸出が落ち込んでいます。
飯田)中国要因で。
片岡)堅調な企業の利益や、雇用等々への波及が弱まっていくのではないかというところが、少し気になります。
ゼロ成長が予測される欧米 ~雇用や消費にはまだ深刻な悪影響は出ていない
飯田)世界経済を見ると、中国もそうですし、ヨーロッパやアメリカはIMFなどの予測でも厳しいです。
片岡)基本的に欧米は、今年(2023年)はゼロ成長が見通されています。特に欧州に関して言うと、ウクライナ情勢の長期化もあって、天然ガス価格の高止まりが予想されます。食料品の値段も上がり、景況が悪くなるのではないかということです。しかし、その辺りは暖冬の影響もあって少し弱まる予測も出ています。とは言え、0%台の成長率が見通されているので、いいというわけではありません。
飯田)暖冬で弱まるけれど。
片岡)物価との見合いですが、なかなか物価が下がらないという話になれば、中央銀行が利上げを進めることになります。そうなると、悪影響が今後、増してくることになります。
飯田)利上げの悪影響が。
片岡)とは言え、アメリカもそうなのですが、利上げの影響は出てきてはいるけれど、雇用や消費にはまだ深刻な影響は出ていません。
日本国内で自立的な消費の拡大が起きてくることが重要
飯田)アメリカの失業率はさほど上がっていません。完全雇用に近い状態が続いているのではないかということです。
片岡)歴史的に低い失業率で、賃金上昇率も高い。だからこそ物価上昇率が高止まっているのです。
飯田)物価上昇率が高止まっている。
片岡)「いまの日本にやってもらいたいな」という姿です。企業側の賃上げの動きがあるなかで、海外経済にとらわれずに、国内で自立的な消費の拡大が起きてくることが重要だと思います。
このまま価格上昇が続けば、国民が耐えられなくなる可能性も
片岡)国内経済に目を転じると、月例報告のなかでも出ていますが、コロナ禍以降、いちばん回復していない部分は消費です。
飯田)消費。
片岡)消費については横ばい状態のまま、本格的に改善していないので、それが本格的な所得拡大を通じたデフレ脱却への話につながらない。現状、確かに値段は上がってきているのですが、大半が食料やエネルギーです。これは国内経済が温まった結果ではなく、海外の輸入品価格の上昇が原因で起こっているインフレなので、家計の暮らしとしては厳しい。
飯田)家計は苦しいまま。
片岡)いまは値段が上がっていても、コロナ禍で強制的に貯蓄していた部分があるので、何とか耐えられます。ただ、来年度に入ったタイミングでこのペースの値上げが進むと、耐えきれないのではないでしょうか。国内としては、それが今後どうなるのかがポイントだと思います。
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