キャスターの辛坊治郎が2月16日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。岸田政権が目指す構造的な賃上げを議論する「新しい資本主義実現会議」をめぐり、「ジョブ型雇用」を導入しやすくするため参考事例などの提示が検討されていることに対し、「『ジョブ型雇用』は賃下げの手段に使われてきた」と苦言を呈した。
政府は15日、岸田政権が目指す構造的な賃上げを議論する「新しい資本主義実現会議」を開いた。会議では、日本と他の先進国との間で専門的な職務の賃金に大きな格差があることが示された。ITの分野では、日本に比べアメリカが約1.6倍、ドイツは約1.5倍の水準だという。政府は、日本企業が優秀な人材を確保するには、年功序列で賃金が上がる制度では対応が難しいと分析。職務内容を明確に定めて成果で処遇する「ジョブ型雇用」を導入しやすくするため、参考事例などの提示を検討している。
辛坊)年功序列型雇用では日本の競争力がどんどん下がってしまうため、ジョブ型雇用に変えていこうというスローガンは、何十年も前から唱えられてきました。しかし、さまざまな企業がジョブ型を導入した結果、何が行われたかというと、賃下げの手段に使われてきたわけです。
これから話すことは、決して男女差別ではありませんので、私の申し上げたい趣旨をご理解ください。かつての企業には「40歳男性には家族を支えられるだけの給料を払う」といった慣行がありました。それが、男女雇用機会均等法が施行されたことにより、男女の賃金差そのものが差別だという認識に変わりました。
そこで何が行われたかというと、本来であれば女性の賃金を上げればいいのに、ジョブ型は男性の賃金を下げる理由に使われたんです。なおかつ、例えば同じ仕事の能力に関して40歳の従業員より28歳の従業員のほうが高ければ、28歳の従業員のほうの賃金を高くすることにつながりました。そうしたことをしてきた結果、今の日本が出来上がってしまったわけです。
本来は、その反省の上に立ち、どのように方向転換すべきかを考えなければならないはずです。それにもかかわらず、ニュースの中にあったように「職務内容を明確に定めて成果で処遇するジョブ型雇用を導入しやすくするため、参考事例などの提示を検討している」なんて、おかしくないですかね。何十年もジョブ型でやってきて今の結果があるのに、反省はないんですかね。
一世代前の発想だと思うことは、他にもあります。ニュースの中にもありましたが、「会議では、日本と他の先進国との間で専門的な職務の賃金に大きな格差があることが示された」ということですが、例えばファストフードの店員と比べても他の先進国とは大きな賃金格差があるんです。比べるべきは、そこではないと思いますよ。視点が間違っています。
景気が良く、なおかつ経営者の意識が高い企業で働く人たちの賃金はどんどん上がっていくけれども、賃上げの体力がない企業で働く人たちはどうしようもないわけです。最近、テレビで転職関係のコマーシャルが盛んに流れていますが、実際に転職前より待遇の良い雇用が果たしてどれほどあるのでしょうかね。
欧米であれば、賃下げの手段ではないジョブ型が行われていますから、ある程度のスキルがある人は転職後の賃金が試算できます。しかし、日本ではできませんから、会社を辞めたら非正規雇用に陥らないかという恐怖を感じている人は多いはずです。そうした状況の中で、いまだにジョブ型を導入しやすくするなんて、「何を言っているんだ」という感じです。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)