中国の外交部と話してもあまり意味がないが「やらないより」はいい

By -  公開:  更新:

外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4年ぶりに開催された日中安保対話について解説した。

中国の外交部と話してもあまり意味がないが「やらないより」はいい

日中安保対話で発言する中国の孫衛東外交部副部長。右は張保群国防部国際軍事協力弁公室副主任=2023年2月22日午前10時17分、外務省(代表撮影) 写真提供:産経新聞社

日中安保対話、4年ぶりに開催 ~双方が懸念を伝達

日中両政府は2月22日、外務・防衛当局担当者が安全保障政策を協議する「日中安保対話」を都内で開催した。2019年2月に北京で開催して以来4年ぶりとなる。両政府は自国の安全保障政策を説明し、安保・防衛分野の意思疎通を継続、強化することで一致した。

連携を高める日米を牽制する目的も

飯田)海空連絡メカニズムをどうするかについても、今年(2023年)春の運用開始に向けて引き続き調整したということです。

宮家)それはそれでいいのだけれど、それって、まだ(連絡メカニズムが)できていないということでしょう?

飯田)10年以上やっていますが、できていません。

宮家)4年ぶりの開催ですが、コロナ禍の影響もあったのでしょう。でも、この3年は日米連携の次元が高まったような気がするのです。

飯田)日米の連携が。

宮家)安保3文書も改定し、日本はようやく普通の国のように国家安全保障問題を議論するようになった。中国側も、ウクライナ戦争があったこともあり、ロシアへの傾斜を深めています。そういう意味では、そろそろ協議をやらなければならなかったのですが、日本はいつでもやれるので、恐らく中国側にやる気がなかったのだと思います。

飯田)コロナが理由だったのかも知れませんが。

宮家)おそらく強く出て、日米を牽制しようと思ったのではないでしょうか。しかし、コロナ禍は明けたが、日米の緊密化がかなり進んでしまったので、両国の間に楔を打つことは不可能だと悟ったのでしょう。日米が今後どのような対応をするのか、日本と「話し合ってみないとわからない」と考えたのではないかと、勝手に推測しています。

米ソ冷戦時代と同様の状況になりつつある米中・日中関係 ~不測の事態に陥らないためにも定期的な会合は必要

宮家)いずれにせよ、この手の議論はしなければならないことです。対立や緊張が深まれば深まるほど、不測の事態、もしくは誤算による無駄な衝突が起こる可能性があるからです。

飯田)対立や緊張が深まれば深まるほどに。

宮家)定義として正しいかどうかは別として、今後米中、日中は米ソ冷戦時代のように緊張も対立もあるかも知れない。しかし、何とかこれをマネージし、コントロールする。制御することで「不測の事態だけは避ける」という状況になりつつあるのだと思います。米中も、日中も。

飯田)米ソ冷戦時代のように。

宮家)その意味では、こういう会合を定期的に開き、連絡メカニズム、ホットラインをつくることは重要です。ホットラインをつくっても、電話に出なければそれで終わりですけれど、それでも、つくること自体に政治的な意味があるわけです。

飯田)ホットライン。

宮家)そうすることで、少しでも不測の事態を避けなければいけません。

嫌な人間ほど会わなければいけない ~対話をやめてはならない

飯田)日本の世論のなかでも、一部では「対話など一切やめて面会謝絶にしてしまえ」という向きもありますが。

宮家)逆です。嫌な人間ほど会わなければいけないのです。

飯田)お互いに言い合って、「あいつはいつも通りにこういうことを言っているのだな」とわかっておいた方がいい。

宮家)これならば、こいつは、まだ大丈夫だなと。逆に「こんなことを言い出したぞ。おかしい」とか、まったく態度が違っていたり、本音で会合の場外でも話せないとなれば、これは新たな対応を考えなければならない。

中国の外交部と話しても意味がない ~判断し権限を持つのは人民解放軍

宮家)問題は、中国の外交部と話してもあまり仕方がないということです。彼らは政策の立案機関ではなく、単なる実施機関なのです。日本は安全保障政策を外務省と防衛省が一緒に企画立案していますが、中国は外交部が安全保障政策をやっているとはとても思えません。もちろん国務位の国防部がやっているとも思えない。

飯田)中国の場合は。

宮家)それは人民解放軍、共産党がやっているからです。中国との安保協議でも日本側は十分責任のある人たちが動いていると思うし、それなりの判断や権限もあると思います。

飯田)日本側は。

宮家)ところが、中国側から来る人たちが、そのような権限を持っているとは思えません。もちろん、やらないよりはいいですけれど、本当は解放軍の中枢とやるべきなのです。しかし、アメリカですら解放軍の人たちと話そうとしても、中国側は出てこなかった。現在はさらにそうだと思いますよ。

飯田)解放軍の人たちは。

宮家)更に言えば、解放軍のなかでも対外的な渉外担当だけが出てきて、奥の院の人たちは出てきませんから。

飯田)実際に作戦立案や全体の戦略を練っている人。

宮家)だから、渉外係に過ぎない外交部と話しても仕方がないのです。

外交部とでも定期的に話ができれば、やらないよりはいい ~情報として文章は上がっていく

飯田)中国の憲法のなかでも、その上に共産党があり、党がすべてを領導する。

宮家)中央軍事委員会があるわけですから、普通なら中央軍事委員会とやらなければいけないのだけれど、あの国は普通ではないので。

飯田)そのトップは習近平氏です。かつてオバマ政権のときに、アメリカがサイバー攻撃に苛まれた際も、結局はトップ会談をしなければならなかったことがありました。

宮家)外交部とでも定期的に話ができれば、やらないよりはいいわけです。外交部も勝手なことを言っているわけではなく、連携を取って動いているのですから。

飯田)そこで言ったことは当然、情報としては上に上がっていく。

宮家)内容は文章として上がっていくと思います。それがどのくらい重んじられるのか、外交部の意見がどれだけ反映されるかはまた別の話です。

王毅・共産党政治局員が日本での閣僚級の外務大臣という立場 ~外相は中央委員でしかない

飯田)我々が考えているような外交部長、日本で言うところの外務大臣のような権限ではない。

宮家)王毅さんはいま政治局員ですよね。

飯田)そうですね。

宮家)政治局員は25人いるのですが、25人といえば日本では閣僚級の人たちですよね。

飯田)王毅さんでも閣僚級。

宮家)後任の中国の外相は中央委員でしかありません。200人くらいいるうちの1人ですから、日本でいえば国会議員程度のレベル。王毅さんは日本でいえば閣僚級の外務大臣なのです。

番組情報

飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組HP

忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。

Page top