アメリカは「蚊帳の外」 イランとサウジ、関係正常化へ
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが3月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イランとサウジアラビアの外交関係正常化について解説した。
イランとサウジアラビアが外交関係の正常化で合意 ~アメリカの中東外交の失敗
イランとサウジアラビア両政府は3月10日、中国の仲介のもと、互いの大使館を再開させて外交関係を正常化することで合意したと発表した。両国は2016年にサウジアラビアでイスラム教シーア派の指導者が処刑されたことをきっかけに、イランにあるサウジアラビア大使館が襲撃され、外交関係を断絶していた。
飯田)イラン外務省のカナニ報道官は13日、バーレーンとも正常化したいとの期待を表明しています。間に中国が入っているのですね。
クラフト)「アメリカの中東外交の失敗」ということに尽きると思います。あの地域におけるアメリカの存在感と影響力が、著しく低下している。そこに中国が付け込んだのです。表向き、アメリカは評価していますが、内心は極めて警戒していると思います。
国内を抑えるためにイランを攻撃する可能性のあるイスラエル・ネタニヤフ政権 ~ネタニヤフ政権を止められないバイデン政権
クラフト)もう1つ、さらに重要なことがあります。先日アメリカ国務省の高官と話したときに、「ウクライナ問題や台湾有事などいろいろあるけれど、どうなのか」と聞いたところ、「それどころではないのだ」と言うのです。
飯田)それどころではない。
クラフト)中東戦争の懸念を抱いているのです。週末にも50万人規模のデモがあったのですが、いま、極右派であるイスラエルのネタニヤフ政権が国内問題を抑止するため、外に敵対関係をつくったのです。
飯田)国内を引き締めるために。
クラフト)トランプ政権のときはネタニヤフ政権と関係が良好であり、グリップも完全に効いていたので、イスラエルは勝手なことをしませんでした。しかし、バイデン政権は周りの中東諸国とも関係が悪く、ネタニヤフ政権に対してもまったくグリップが効いていないのです。
飯田)バイデン政権は。
クラフト)従って、アメリカとしてはネタニヤフ政権を止められない状況にあります。イランのウラン濃縮度は現在84%と言われており、これが90%になると核兵器が製造できます。
イランへの「核合意の再交渉」のアプローチも失敗
クラフト)これを理由に、ネタニヤフ政権が攻撃するのではないかと言われているのです。アメリカ側は本来であれば、「そんなことはダメだ」と言ってイスラエルを止めるのですが、それができないために、アメリカ政府は非常に危惧しています。
飯田)攻撃するのではないかと。
クラフト)「核合意の再交渉をしたい」と水面下でイランにアプローチしたら、それを今度はイランに暴かれてしまい、非常に危うい状態です。
飯田)水面下での交渉を。
クラフト)トランプ政権はいろいろな問題がありましたが、中東外交においては最も中東和平に近付いた大統領だと思います。外交関係も良好でしたが、バイデン政権は大失敗してしまっている。
水面下での最大の地政学リスクは中東
飯田)トランプ政権のときは、イスラエルとサウジアラビアの接近のようなことも言われていましたし、UAEとの間には国交正常化などもありました。その辺りがすべてご破産になりそうなのですか?
クラフト)完全にアメリカは蚊帳の外です。中東戦争が起きようものなら、日本も一気にエネルギー不足に陥りますし、インフレ高騰になります。そしてウクライナ問題でもロシアを助けることになります。原油価格の高騰で財政が増えるので、戦争においてもロシアの財政が楽になるのです。すべての状況が悪化するため、水面下における最大の地政学リスクは中東なのです。
注視しなければならない中東 ~ウクライナや台湾が注目され、ノーマークに
飯田)このタイミングで中国の習近平国家主席がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談する計画が報道されています。そうなれば、これも話題になりますよね?
クラフト)裏で話していると思います。いろいろなところで中国の存在感が増しているのは、アメリカの外交政策が行き詰まっている結果であり、危惧すべき状態です。世界中がウクライナや台湾を見ているので、中東はノーマークなのですが、実はいま中東は相当、注視しなければいけない地域です。
飯田)しかも越境して爆撃する場合、イスラエルはかつてイランまでは行っていませんが、イラクの原子力施設を爆撃した実績がありますよね。
クラフト)何をするかわかりません。問題は、あの地域は国家間の戦争だけでなく、それに乗じていろいろなテロ組織が出てくるため、他の国を攻撃しかねないのです。昔であればアメリカの力で抑え込めたのですが、いまはそこまでの力がないので、どのような状況になるのか見込めません。国務省の高官はとても危惧していました。
本来であれば、親米のサウジアラビアがイランを抑えることもできるのだが
飯田)イランとサウジアラビアが手を組むことになると、構図が一変してしまうかも知れません。
クラフト)本来であればサウジアラビアは親米なので、アメリカに協力してイランを抑え込むこともできるのですが、それもできないかも知れません。
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