「児童・生徒の自殺者数が過去最多」はどうすれば変えられるか

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ジャーナリストの佐々木俊尚が3月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。過去最多となった日本における児童・生徒の自殺者数についてコメントした。

「児童・生徒の自殺者数が過去最多」はどうすれば変えられるか

※画像はイメージです

2022年、全国で2万1881人が自ら命を絶つ ~児童・生徒は過去最多

厚生労働省が発表した確定値によると、2022年の1年間に自ら命を絶った人は全国で2万1881人となり、2021年に比べて874人(4.2%)増。児童・生徒は高校生が354人、中学生が143人、小学生が17人、合わせて514人となり、統計がある昭和55年以降、初めて500人を超えて過去最多となった。

飯田)厚労省としても、各省庁と連携しながら対策を進めたいとしています。

佐々木)要因はたくさんあると思うので、一言で「こういう傾向だ」とは言えないと思います。コロナ禍で少し減少して、「会社に行くことがいかに抑圧が強いか」ということも言われましたが、コロナ禍が収まってくると逆にまた増えてきている。

底抜けに明るく好奇心旺盛だった200年前の日本人

佐々木)2022年に亡くなられた歴史家・渡辺京二さんの『逝きし世の面影』という本があります。幕末や明治期に訪れた欧米人が日本に滞在して見聞きしたことを日記に書いているのですが、それを大量に集めて「当時の日本人はどうだったのか」を見ている名著です。それを読むと、当時の日本人はとても明るく陽気で、笑い出したら止まらないのですよ。

飯田)テンションが高かった。

佐々木)好奇心旺盛で、いつもニコニコしている。仕事はきちんとするのだけれど、一方では朝から酔っ払っているときもある。自分の好きな時間に好きなように仕事をして、それでも素晴らしい建築物や細工をつくっている。礼儀正しく質が高いのだけれど、底抜けに陽気だったということが書かれているのです。

暗い顔で足を引きずるように出勤する現代の日本人 ~明るく陽気な日本人のDNAはどこへ行った

佐々木)その後の200年ぐらいで、「なぜこんなに暗い顔になってしまったのか」といつも思うのです。朝、霞が関辺りで地下鉄を乗り換えると、みんな怖い、あるいは悲しそうな顔をして、足を引きずるように歩いているではないですか。

飯田)通勤時。

佐々木)日本人はDNAとして「明るく陽気な」ところがあったはずだから、そちらに戻ればいいと思うのですが。

働いている時間は経営者に管理される

佐々木)かつては労働者と言ってもタスク型なので、農業でもその日の仕事が終わったら、自分の自由時間が得られた。職人も「〇月までに1軒の家を建てる」という内容が決まっていれば、それ以外は自分の裁量でいくらでもできた時代でした。そこから、いまのように時間給の仕事になってしまって、働いている時間は上司や経営者に管理される。

飯田)現代社会では。

佐々木)「お前の自由ではない」となってしまった結果、いまのような辛い労働に虐げられる社会になってしまったのかなと思います。だからと言って江戸時代に戻れるわけではないし、難しいのですが。

飯田)江戸時代には戻れないですからね。

自分の裁量で仕事ができる部分も少なくないリモートワーク

佐々木)もう少し自分の裁量で、自由になる世界に戻れないかなと思います。リモートワークは割と自分の裁量で仕事ができたのです。合間にシチューを煮込んでいても大丈夫なわけだから。

飯田)オンライン会議中に実は、という。

佐々木)下半身はジャージだったりね。それが幸せに戻る1つのきっかけになっているのかなと思います。リモートワークも完全になくなるわけではなく、大企業中心に制度化されているので、昔のようにすべての人が出社することもなくなってきていますし、徐々に変わっていくのかも知れません。

子どもの精神的幸福度が38ヵ国中37位の日本

佐々木)一方で、日本特有の同調圧力の強さは何とかならないかと思います。

飯田)同調圧力の強さ。

佐々木)国連児童基金(ユニセフ)が各国の子どもの幸福度をまとめた2020年の報告書がありますが、死亡率の低さや肥満率などの身体的な健康では、日本は38ヵ国中1位なのです。

飯田)身体的な健康においては。

佐々木)ところが、生活満足度などの精神的幸福度は、38ヵ国中37位です。体は健康だけれど、心は健康ではないというのが日本の特徴です。

飯田)なるほど。

佐々木)質問の仕方にもよると思うし、どの言語でどう提示するかによっても変わってくるとは思いますが。

飯田)国際調査は難しいですからね。

クラスのような同調圧力の強い組織形態が日本人を不幸にしてしまう可能性がある ~大学ではいじめは少ない

佐々木)だから一概には言えないと思うのですが、同調圧力が強い学校の教室などは影響するかなと思います。いじめで誰かが亡くなると、校長先生が「みんなで仲よくしましょう」と言うではないですか。

飯田)言いますね。

佐々木)でも、「みんなで仲よくしましょう」と言うと「先生、佐々木くんは仲よくしていません」と誰かが言い出して、佐々木くんがいじめられるようなことが起きるのです。

飯田)そこでいじめが起きてしまう。

佐々木)しかし、小中高はクラスがあるからいじめが起きるのだけれど、大学ではいじめが少ないですよね。

飯田)みんな好き勝手やっていますし。

佐々木)クラスがなく、同調圧力を感じにくいからです。学級や部活のような「同調圧力の強い組織形態が日本人を不幸にしてしまう可能性がある」ということを、もう少し我々は考えた方がいいのではないかと思います。

常に空気の圧力で押し流されるように変わっていくのが日本の世論 ~「ネガティブな同調圧力になって自殺を増やすようなことにならない仕組み」をつくることが重要

飯田)マスクのこともそうですが、他人に対して興味がありすぎますよね。

佐々木)そうですよね。

飯田)「放っておけばいいのに」と思うのですけれど、みんな放っておけないのですよね。

佐々木)マスク着用も3月13日から個人の自由になりましたが、初日に行きつけのスポーツジムに行ったら、外しているのは4人に1人ぐらいでした。でも翌日になると、外している人が半分くらいになったのです。

飯田)2日目には半分に。

佐々木)みんな「自分の自由な判断で」というよりも、周りの様子を見て「まだ外している人が多くないな」と思ったら外さない。逆に外している人が増えてきたら外す。

飯田)周りを見て。

佐々木)今後、もし外す人が増えてきたら、一気に加速して着用しなくなると思います。常に空気の圧力で押し流されるように変わっていくのが日本の世論です。

飯田)よし悪しも含めて。

佐々木)そういう民族性は仕方がないので、うまくプラスへ働くように、「ネガティブな同調圧力で自殺を増やすことにならないような仕組み」をつくる方が大事だと思います。民族性は変わらないですから。

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