第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱利廣が3月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。前年比1.6%上昇した公示地価について解説した。
2023年の公示地価 ~前年比1.6%上昇
国土交通省は3月22日、2023年1月1日時点の公示地価を発表した。全用途の全国平均は前年比1.6%上昇。2022年の上昇率は0.6%だった。新型コロナウイルス感染拡大の影響が和らいで地価回復が鮮明となり、2年連続でプラスとなった。
飯田)全国約2万6000の調査地点のうち、6割弱が上昇したという数字が出ています。景気がよくなっているのでしょうか?
永濱)コロナからの正常化という意味で、最も端的に示されるのはサービス関連の消費ですが、それを見ると確かに、2021年末くらいから徐々に正常化へ向かいつつあります。
飯田)2021年末くらいから。
永濱)まだ元には戻っていないのですが、そのようなところも反映しているのではないでしょうか。今後はインバウンドも戻ると思いますので、商業地の方が上昇幅は拡大していくという見立てだと思います。
コロナ前の状況に戻っている欧米に比べると景気回復が遅れる日本
飯田)ひところ言われていましたが、コロナ禍で使えずに積み上がった預金も出てきているのでしょうか?
永濱)若干は出てきているのですが、欧米などに比べると弱いですね。アメリカはコロナ前以上に貯蓄率が下がり、消費が上がっています。ヨーロッパはちょうどコロナ前に戻ったくらいです。
飯田)ヨーロッパはコロナ前の状況に戻った。
永濱)日本はまだそこまで戻っていない状況です。ただ、ゴールデンウィーク明けには感染症法上の位置付けも見直されますので、徐々に戻るとは思いますが、欧米に比べると遅れている感じがします。
地方圏で上昇しているのは札幌、仙台、広島、福岡の主要4市 ~それ以外は相変わらず厳しい
飯田)WBCなど明るい話題もありますが、景気がいいのか悪いのか微妙な感じですよね。
永濱)今回の公示地価も、全体で見れば上がっているのです。ただ、地方圏も上がっているとは言え、上がっているのは札幌、仙台、広島、福岡など主要な地域です。
飯田)主要4市。
永濱)私は不動産関連の講演も行っていて、地方の不動産を調べることがあるのですが、上がっていないところも多くあります。上がっているのは中核都市が中心で、それ以外は厳しい状況が続いているのではないでしょうか。
飯田)そこを温めていかないと、全体として個人消費が盛り上がるところまでいかないのですね。
永濱)中核都市以外でも、観光資源があるところは期待できますが、どこにでも魅力的な観光資源があるわけではありません。そういうところは今後も厳しい状況が続いてしまう可能性があります。
不確実で重要な要素である金融政策 ~拙速な政策転換は上がってきた地価に水を差しかねない
飯田)コロナ禍からの需要回復についてですが、政権も期待しているから財政出動するというより、小出しにしているのでしょうか?
永濱)地価について、もう1つの不確実かつ重要な要素が金融政策です。日銀は4月から植田新体制で動き始めますが、いまのところの見立てでは、植田総裁は反リフレでもないし、リフレでもありません。
飯田)反リフレでもリフレでもない。
永濱)基本的には、これまで黒田総裁が広げてきた大風呂敷を畳む方向なのだと思います。ただ、拙速には動かないと思うので、「慎重にやってくれる」というイメージでしょうか。そうなると緩和の強化は考えにくい。
飯田)緩和を強化する方向は。
永濱)まかり間違って(金融緩和からの)「拙速な出口」のようになってしまうと、順調に上がってきた地価にも水を差しかねません。そういった意味では金融政策が重要だと思います。
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