長年にわたり海外の犯罪組織を追ってきたジャーナリスト、片岡亮氏が3月20日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。各地で相次いだ広域強盗事件を巡り、犯行グループが特殊詐欺から強盗に犯行形態を変えた可能性が指摘されていることについて、「警察が(犯行グループのメンバーを)泳がせていたのではないか」との見方を解説した。
各地で相次いだ広域強盗事件で、犯行を指示した疑いがある渡辺優樹容疑者らが率いたグループのメンバーとされる山田李沙容疑者が17日、フィリピンから強制送還された。一連の事件は全国を震撼させたが、渡辺容疑者らの強制送還から1カ月以上が経っても、なかなか全貌が見えてこない。背景には巧妙に仕組まれた手口や犯罪組織があるようだが、一体どういうことなのか-。
片岡)犯行グループの拠点が海外にあるため、捜査が難しいのではないかと指摘されていますが、「警察が(犯行グループのメンバーを)泳がせていたのではないか」という話が最近になって聞こえてきました。
辛坊)いつ頃からのことなのでしょうか。
片岡)今から約10年前にフィリピンのアジトで日本人が捕まったことがあります。
辛坊)いわゆる「オレオレ詐欺」ですね。
片岡)そうです。一部は海外から電話をかけているとか海外に逃亡しているという情報がありました。そこで直接取材しようと考え、現地へ入り、犯人と接触した人にも話を聞くことができました。中には、偽造旅券を作っている「逃がし屋」と呼ばれる日本人もいます。また、「『ルフィ』の一味に仕事を頼まれたことがある」という人もいました。この取材の中で聞こえてきたのが、「日本の警察は振り込め詐欺グループを本気で捕まえようとしていないのではないか」という話です。
辛坊)どういうことですか。
片岡)日本の警察では、出世は点数化されています。ですから、大捕り物で長く時間をかけて事件を1件片付けるよりも、小者をたくさん捕まえたいという傾向が強いんです。
辛坊)なるほど。
片岡)振り込め詐欺には役割がいくつもありあますから、大人数が犯行に加わります。つまり、警察にとってみれば、小者をたくさん、しかも繰り返し捕まえられるため、出世の点数が稼げる都合のいい事件だといえます。これは、暴力団の摘発にも通じるところがあります。警察は絶対に認めない話ではありますが…。逆に、海外に拠点を置く犯罪グループからすれば、日本の警察はここまで追ってこないと考えるわけです。犯罪グループが海外に拠点を置く手口が長く行われてきた背景には、そうした要因があります。
日本とフィリピンは「犯罪人引き渡し条約」を締結していないため、捜査が難しいといわれていますが、そんなにハードルが高いわけではありません。東南アジアの国では不法滞在は、労働力を奪われたり禁止薬物が入ってきたりするため、非常に深刻な問題です。また、日本とフィリピンは貿易もそれなりに盛んですから、密輸などにも目を光らせる必要があります。そのため、実際には捜査協力はあります。ですから、一連の事件でも、日本の要請を受け、フィリピンはすぐに強制送還を行いました。
辛坊)一連の事件で日本とフィリピンの捜査当局などが本気になった理由は、振り込め詐欺で終わらず、強盗殺人事件で死者まで出てしまったためです。片岡さんがおっしゃっていることが全て真実かどうかはともかくとして、私の取材経験からも、「警察が(犯行グループのメンバーを)泳がせていたのではないか」という話のニュアンスは、よく分かります。
番組情報
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[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)