アメリカから「半年遅れる日本」に今度起こる「サービスインフレの上昇」

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経済アナリストのジョセフ・クラフトが4月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の企業に求められる新たなリスクヘッジについて解説した。

アメリカから「半年遅れる日本」に今度起こる「サービスインフレの上昇」

※画像はイメージです

秋ごろに労働者不足からサービスインフレが上昇する ~アメリカから半年遅れる日本

飯田)林外務大臣の中国訪問から、米中対立についてもいろいろと言われています。中国でビジネスを行う場合、生産やサプライチェーンも含めて分離しなければならない。そこにはコストも掛かってくる。これが早晩終わるわけではないと思うと、インフレもそう簡単には終わらないのでしょうか?

クラフト)かねてから米連邦準備制度理事会(FRB)は、「粘着性のインフレ」を指摘しています。

飯田)言っていますね。

クラフト)「急激には下がっていかない」という覚悟を決めなければいけないのだと思います。日本は半年遅れでアメリカを追っています。アメリカはコロナから明けて半年くらい経ちますが、いま、労働不足によってサービスインフレに見舞われています。

飯田)労働者不足で。

クラフト)日本もいま労働不足が言われ始めていますが、パートタイムの時給が上がってくると、秋口から年末に向けてサービスインフレが上がってきます。政府の還元策を入れて3%少しですが、いまのインフレはなかなか下がらないのではないかと思います。

企業はコストダウンだけでなく、政治コストや地政学リスク、サプライチェーンのリスクなど、さまざまなリスクでコストが上がっている ~これを価格転嫁しなければならない

飯田)労働の話から説明されるところもありましたが、それだけではなく、サプライチェーンの組み換えなどもあります。半導体の輸出規制の話なども出ていますが、これもアメリカから再三、催促されていたことです。これが別の品目にも広がって、広範囲にコストを押し上げるようなことも考えられますか?

クラフト)あり得ると思います。いままでの企業は戦後50年、とにかくコストダウンだけに集中していればよかった。しかし、いまは政治コストや地政学リスク、サプライチェーンのリスクなど、さまざまなリスクでコスト高になっています。これを価格転嫁できる企業とできない企業が出てきている。いろいろなリスクに晒されていますが、上手くやっていかなければなりません。

テスラが中国で販売する車のほとんどは中国圏のサプライチェーン ~政治リスクを軽減

クラフト)テスラがいい例です。テスラが中国で販売する車のうち、ほとんどのサプライチェーンは中国圏です。アメリカで販売するテスラは西側圏でサプライチェーンを賄っています。つまり中国からすると、中国で売っている車は中国のサプライチェーンなので、政治リスクが少ないのです。アメリカもそれに対しては制裁をかけない。上手く分けています。

飯田)中国国内で売っているテスラのバッテリーは、他のものと違ってレアメタルなどを使っていないバッテリーだと言われるのは、そういうことなのですね?

クラフト)そうです。おまけにイーロン・マスク氏は、習近平国家主席の大学の顧問を務めるくらい媚を売っているのですが、それによって政治リスクを軽減しているのです。

飯田)そうなのですね。

クラフト)単に安くつくるという経営から、政治リスクをどのように上手くマネージしていくかという方法が、いまの経営者に問われているのだと思います。

今後は地政学抜きでは事業はできない ~中東が盲点

飯田)地政学の本が売れているのは、そのようなリスクを各々感じ取っているところがあるのですね。

クラフト)もはや地政学抜きでは国際的な事業はできません。国内もそうです。いまウクライナ情勢や台湾有事などと言われていますが、私がもう1つ盲点だと思っているのは中東です。

飯田)中東が盲点。

クラフト)中東情勢が今後、混乱していく可能性があります。イスラエルの政局もいま、非常に荒れています。イスラエルとイランが戦争などを起こしてしまった場合には、原油が高騰してしまうなど、さまざまな地政学リスクが混在しています。そのようなところも見極めながら、各企業はどうやって修羅場を乗り切っていくのか、経営手腕が問われています。

自分の企業にとって何がリスクかを分析しヘッジしなければならない

クラフト)日本の経営者は、いままで地政学リスクや政治リスクにあまり携わってこなかったため慣れておらず、できているところとできていないところがあります。しかし、事業に対する重要なリスクコントロールは避けられないと思います。

飯田)確かに中東に関しては、エネルギー企業やプラント企業、あるいは商社など、直接関わる人たちは詳しいのですが、直接関わらなくても原油高騰などの影響はありますよね?

クラフト)ですので、自分たちが直接中東で販売していなくても、エネルギーコストの高騰や輸送網の遮断など、自分の企業にとって何がリスクなのかを改めて見極め、分析して、それに対するヘッジが必要となります。

飯田)リスクを分析して。

クラフト)いままでの拠点が1つであれば、大きなリスクとなるので2つつくらなければならない。そうするとコストが掛かるので、それを価格転嫁しなければならない。価格転嫁するにはブランド化するなど、付加価値をつけなければいけない。いままでのコストを下げればよかった経営から、付加価値を見出してリスク管理をしなければいけない経営になってきたのだと思います。

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