外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が4月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾・蔡英文総統とマッカーシー米下院議長の会談について解説した。
台湾・蔡英文総統とマッカーシー米下院議長が会談
飯田)台湾の蔡英文総統がアメリカのマッカーシー下院議長と会談しましたが、どうご覧になりますか?
宮家)台湾外交と中国外交のせめぎ合いですね。中国は台湾を締め付けようとして、台湾と外交関係を持っている国を1つずつ潰していき、その数を減らそうとしています。
2017年以降、台湾と国交断絶した国は中南米で5ヵ国 ~主要国との関係を質的に向上させる台湾
宮家)それに対して台湾は、数は仕方ないとして「量よりは質だ」とばかり、アメリカを含めた主要国との関係を質的に向上させようとしています。いままでは外交関係がない、政治関係がないということでしたが、これからは限りなく外交関係に近いような形で、質的な向上を図っている。
飯田)今回のアメリカのように。
宮家)アメリカに行き、アメリカのナンバー3である下院議長に会った。下院議長が台湾に来るという手もあるけれど、中国が反発し過ぎると困りますから、ああいう形になったのでしょう。アメリカとしては台湾に対する支援を示し、中国の圧力には屈しないという姿勢を示す。台湾としては、バランスを取って実質的な関係レベルの向上を図るということです。
党大会のあとでもあり、強く反応していない中国
宮家)中国も今のところはそれほど強く反応しているわけではありません。2022年は、(ペロシ前下院議長が訪台した際に)大演習を行って総スカンを食らいましたから、むしろ自重しているようです。しかも今回は下院議長が台湾に来たわけではありません。党大会も終わっていますし。もし党大会の直前に来られたら、それは怒ると思いますが。
飯田)2022年8月は、秋に党大会が控えていましたね。
宮家)2ヵ月前でしたから、騒がざるを得なかった。そういう意味では、中台の「量対質」の外交攻勢は非常に興味深いと思います。
馬英九さんがいま中国に行って、どれだけ政治的な意味があるのか ~中国に歓迎されるということは台湾では歓迎されない
飯田)一方、台湾の前総統である国民党の馬英九氏が中国を訪問しました。現職と前任の総統が別のところに行っていますが。
宮家)馬英九さんが、アメリカに行ってから中国に行くのならわかりますが、既に国民党には後任がいますから、アメリカには行けないわけです。後任はアメリカとの関係をもっと上手くやろうとして人材を送っていますし、ワシントンには国民党のオフィスもあります。
飯田)ワシントンに。
宮家)そういう意味では、馬英九さんがいま中国に行って、どれだけ政治的な意味があるのだろうかと思います。つまり、中国に歓迎されるということは、必ずしも台湾では歓迎されないわけですからね。上手くバランスを取っているという感じではありませんね。
飯田)なるほど。
宮家)中国は自分の好きな人だけを呼びますし、嫌いな人は呼びません。その意味では、中国に好かれてしまったのではないでしょうか。
飯田)馬英九さんが。
宮家)好かれたことが本当にいいことかどうかはわかりません。
飯田)あのようなニュースが出ると、「国民党は中国寄りで、民進党はアメリカ寄り」というように、二元対立的に思ってしまいますが、決してそんなことはないのですか?
宮家)経緯としては、そういう時代もあったかも知れません。しかし、いま中国の圧力に対して、「台湾は中国と1つになって大陸に友好的になりましょう」という台湾の政治家が、どれだけ票を集められるかということです。20年前なら別として。そこが大きな違いだと思います。
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