政策アナリストの石川和男が5月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の日韓関係について解説した。
韓国を再びホワイト国へ ~安倍政権時にホワイト国から除外
飯田)日韓首脳会談が韓国・ソウルで行われ、岸田総理が帰国しました。今後の日韓関係ですが、輸出管理においての優遇、グループA(旧ホワイト国)に関して、韓国はホワイト国の指定から外れていました。それを「再びホワイト国に指定する」と経産省が発表しましたが、実際問題はどうなのですか?
石川)10年以上前に、日本は韓国を貿易上の優遇対象となるホワイト国に指定しました。しかし、ホワイト国にするには基準があるのですが、安倍政権の辺りから、韓国側が基準を満たさなくなってきたのです。
飯田)事前審査を免除するようなものですよね。
石川)日本から輸出したものが、日本からすると「同盟国ではないところに横流しされているのではないか」という疑いが出てきたので、ホワイト国から除外することになった。
当時はたまたま徴用工問題で日韓関係がギクシャクしているとき
石川)当時は、たまたま徴用工問題で日韓関係がギクシャクしているときでした。韓国側から見ると、「韓国が徴用工問題で厳しい態度を取るので、政治的な報復として、韓国がきちんと守ってきたホワイト国としての基準を日本は認めないのだ」ということになった。そして、韓国側も日本をホワイト国から外したのです。
韓国が日本をホワイト国に戻したので日本も対応したわけではない ~あくまで基準を満たしたから
石川)それが今回、尹大統領になってから「日本はホワイト国でいいではないか」と言い始めた。それに対して、韓国の態度が軟化するなら日本側も軟化しようということで、現在の状況になったと考える国民は多いと思いますし、私自身も一瞬「そうかな?」と思いました。
飯田)日本も合わせて韓国をホワイト国に戻すと。
石川)しかし、実際にはそのような甘い考えではなく、きちんと基準がお互いにある。「そこに合致する」ということで、以前のようにホワイト国に戻そう、という話になっているはずなのです。
飯田)あくまでも基準をクリアしたから戻すのだと。
石川)それがたまたまこのようなタイミングになったので、いかにも日本が「韓国側が譲歩してきたから、では日本も」と、政治的な話でこうなったと思っている人も多いかも知れません。
飯田)そう思うでしょうね。
石川)担当しているのは経済産業省ですが、決してそうは言わないと思います。政治的な話ではなく、あくまでも「韓国側も基準を満たしているので、日本は認めましたよ」と言うと思いますし、実際そのような部分が多いと思います。
政治の部分もあるかも知れない
石川)ただし、「政治」の「治」は治めると書きます。ホワイト国にする基準は政策なのです。政策とは事務的であり、1つの法律の基準に基づくものですが、政治は若干それをオーバーライドして、「そうは言ってもこの辺りで少し妥協しましょうか」となりがちです。
飯田)政治は。
石川)今回も少なからず、そういう部分があったかも知れません。ただ、それは誰にも証明できません。せっかく貿易関係がいい方向へ進んでいるので、できればこの部分はこの部分で、これからも丸くいって欲しいと思います。
福島第一原発処理水の海洋放出 ~韓国の専門家による視察団受け入れへ
飯田)今回の日韓首脳会談後に発表されたものの1つですが、福島第一原発の処理水の海洋放出について、韓国から専門家が来て視察を行うという話が出てきました。
石川)皆さんもご存知の通り、3.11 、いまから12年前に福島第一原発で事故が起きました。原発の下には地下水が流れており、どうしても放射能で汚染されてしまいます。「汚染水」という言葉がありますが、そのまま流すのはよくないということで、それを処理したものを「処理水」と言うのです。
文在寅政権時には韓国の査察を拒んだ日本
石川)処理水をどうするのかと言うと、いまはタンクに溜め続けているけれども、そうもいかない。ある一定の基準以下にすれば、海洋放出してもいいし、日本の他の原子力発電所や韓国も含めた原発を持っている国は、放射能に汚染された水がある場合、きちんと処理して海洋放出しているのです。
飯田)韓国も同じはずです。
石川)同じことを福島第一原発でも行うだけです。日本人や国際原子力機関(IAEA)などの国際的に原子力を見る機関からすれば普通のことですが、そこに文句を付けてきたのが日本の近くにいる国々の皆さまで、その筆頭が韓国です。
飯田)非難する筆頭が。
石川)韓国は前政権のときには「汚染水を流すな」と言っていました。日本側は、「これは汚染水ではなく処理水だ。あなたたちと同じことをやっているのだ」と言ったのですが、やはり日本と韓国はギクシャクしてしまいます。そこで韓国は「自分たちにも査察させろ」と言っていたのですが、日本は国際機関もいいと言っているのだから問題ないとして、突っぱねていたのです。
尹政権になり関係が改善されたので韓国の専門家による視察団受け入れへ ~政治的なセレモニー
石川)しかし今回、お互いの関係がよくなってきたので、韓国が「視察する」と言うのなら「では入って見てください。安心してください」と、日本側も胸襟を開いたという話です。
飯田)確認するというよりは、政治的なセレモニーの部分が大きいのですね。
石川)私はそう思います。
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