東京都医師会副会長で「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が5月9日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。管理職とメンタルヘルスについて解説した。
職場におけるメンタルヘルス ~メンタルヘルスに配慮するのも管理職の仕事
飯田浩司アナウンサー)職場でのメンタルヘルスとなると、一般社員の方々のことが多く取り上げられがちですが、今回は管理職とメンタルヘルスについて伺います。
平川)管理職はさまざまな業務を管理しますが、メンタルヘルスに関しては、4つの方法があります。1つ目はセルフメンタルヘルスで、自身で気をつける。2つ目は「ライン」と言って、組織のライン上でメンタルヘルスについて配慮する。ここに管理職は絡んできます。職場の状況や職員個々の様子を見ているわけですから。
飯田)組織のライン上で見る。
平川)3つ目は会社のなかに専門の産業医がいて、相談室が会社にある。4つ目は外部の会社にそれを委託している。この4通りの方法がありますが、管理職の仕事としては、メンタルヘルスのなかのラインケアが大事になってきます。
飯田)昔であれば業績管理だけを行って、「とにかく数字を達成しろ!」ということにもなりかねませんでした。
平川)そういう会社が確かに多かったですよね。
飯田)いまはある意味、部下・社員1人ひとりの顔色も見ていくことになりますか?
平川)そうですね。大変ですが。
勤労状態をよく観察する ~「おかしいな」と思われるところはないか
飯田)「ここを見ておくといい」というポイントはありますか?
平川)勤労状況ですね。遅刻が多くなったとか、ため息をついたり、よくトイレに行くなど席を立ちやすい。あるいは休みがちである。仕事に関しても集中力を欠いて「こんなケアレスミスを起こすはずがないのに」というような失敗が目立つ。
飯田)ありますね。
平川)あるいは社員同士の会話が極端に減ってしまって、孤立化している。また逆にキレやすくなっているなど、「普段と違うな」という感じだと注意ですね。もっと悪化すると身だしなみにも気付かなくなってきて、髭が伸びていたり髪も手入れせず、汚れたワイシャツを着ている場合もあります。
飯田)ジャケットの肩のところがフケで白くなっていたりとか。
冷静に客観的な対応で接する
飯田)そういう普段と違うところは、見てキャッチしたりできると思うのですが、一方でそれをどうやって本人にアプローチするか悩む人も多いと思うのですが。
平川)難しいですよね。大事なのは、こちらが冷静になり、個人的感情や自分の価値観を押し付けるのではなく、会社のルールに従う形で対応することです。
飯田)「お前、何をサボっているんだ!」などと責めない。
平川)言いがちですが、終始、客観的で冷静な対応が大事です。相手も参っているわけですから、負担にならないように冷静な対応が必要だと思います。
会社の環境に問題がないかをチェックする
飯田)まずは話を聞くということになるのでしょうか?
平川)メンタルヘルス的にダウンした方がいると、その方にばかり目がいきがちですが、問題は職場の雰囲気がどうであるかということです。私は児童・思春期専門の精神科医ですが、お子さんの問題で受診する親子がいます。突き詰めていくと、そのお子さんの問題ではなく、家庭内や夫婦の問題でお子さんに症状が出ていることがあります。お子さんが問題児なわけではないのです。ですから、この場合も会社の環境を見ることが大事だと思います。
飯田)なるほど。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます