「メンタルヘルス不調」休職者に対して、会社側がするべきこと
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東京都医師会副会長で精神科「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が1月21日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。メンタルヘルス不調に対しての会社側の取り組みについて解説した。
1割の会社がメンタルヘルス不調の休職者を抱えている
飯田浩司アナウンサー)ある社員が精神的な事情で休職しなければならなくなった場合、職場に問題はなかったのか、対策を講じなくていいのか、会社側の取り組みについて教えてください。会社が何もしなくていいというわけではないですよね?
平川)厚労省の調査によると、メンタルヘルス不調で連続して1ヵ月以上休職または退職した労働者がいたという事業所は、概ね1割くらいです。
飯田)珍しいことではなく、自分の勤めている会社にも該当するような話ですね。
平川)ごく身近な問題です。ですから会社側もここ数年、ストレスチェックの導入や職場復帰支援プログラムの作成、また、新たに精神科産業医を置くなど、メンタルヘルス対策に積極的に取り組むところが多くなっています。
新行市佳アナウンサー)「ストレスチェックは年に1度くらい受けてください」という通知が来きますね。
飯田)来ますよね。
平川)ニッポン放送でもあるのですね。
ストレスチェックの2つの目的
新行)改めて、ストレスチェックがどんなものか教えていただけますか?
平川)常時50人以上の労働者がいる規模の企業に義務付けられています。ストレスチェックはご自身のストレスの状態に気付いてセルフケアを行う、産業医や相談機関に相談するなど、メンタル不調を自ら防ぐ1次予防策となります。
飯田)メンタルチェックとは違うのですか?
平川)まったく違うものです。ストレスチェックはメンタルヘルスの不調を見つける、病気のあぶり出しということで、メンタルチェックと誤解されがちなのですけれども、そうではありません。
飯田)違うのですね。
平川)目的は2つあります。いずれもストレスマネジメントなのですけれども、1つはご自身のストレスの状態を確認し、セルフケアに結び付ける。自分がどれだけストレスを受けているかを実感して欲しいということです。2つ目は、会社側が職場内のストレス状況を掴むことができますから、この調査によって、より働きやすい環境づくりに使えるということです。
復帰した人へはどう接するべきか
飯田)メンタルヘルス不調で休職した方が円滑に職場復帰するためには、どんなところに注意したらいいですか?
平川)受け入れる側の姿勢ですよ。大切なことは、メンタル不調の休職者だからと、特別な扱いや色眼鏡で見ないことです。あまり病気のことを根掘り葉掘り聞かないでいただきたい。体の病気と同じような対応がいいですね。
飯田)普通の病気と同じように。
平川)注意しなくてはならないのは、復職したあとに迷惑をかけた分を取り戻そうと、復職早々からアクセルを全開にする方がいらっしゃるので、そのときに少し肩の力を抜くように声をかけてもらうといいと思います。
新行)少しずつ、少しずつということですよね。
平川)そうですね。
「リハビリ出社」という制度
飯田)具体的に復職まではどんな流れになりますか?
平川)会社によって受け入れ態勢の違いがあると思いますが、最近よく見られる社内制度で「リハビリ出社」があります。正式な職場復帰決定の前の休職期間中に、お試し出勤する制度です。あくまでも休職中に行いますので、業務へのプレッシャーも強くならず、体力の低下を補う上でも有効な手段です。
新行)最後に、リスナーの皆さんに伝えたいことがありましたら、お願いいたします。
平川)メンタル不調は誰にでも起こり得る、身近な疾患です。ご自身の職場に長期休暇を取っている方が出たとしたら、これを機会に職場改善について職場のなかで話し合う機会があればいいなと思います。個人の問題ではなく、みんなで共有できればメンタルヘルスの環境が整った働きやすい職場になると思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます