大阪・精神科クリニック放火事件後 非常口の位置を聞く患者が急増
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東京都医師会副会長で精神科「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が1月17日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。大阪の精神科クリニックで発生した放火殺人事件を受け、今後の精神科医療の対応、そしてコロナ禍における人々の不安について解説した。
大阪クリニック放火事件による影響
飯田浩司アナウンサー)2021年12月、放火によって25人が死亡するという痛ましい事件が、大阪の精神科クリニックで起こりました。精神科と聞いて、私も平川先生のお顔が思い浮かんだのですが、どのような思いを抱きましたか?
平川)私自身も街なかで同様の精神科病院を営んでいますので、大きな衝撃を受けました。被害に遭われた方々の容態も心配でしたし、これまで、このクリニックを頼りに通院されていた方々へのフォローアップ体制も気がかりでした。そしてまた、この事件が精神科医療に対する誤解や偏見を生むのではないかという危惧を抱きました。
飯田)事件が起きた大阪のクリニックのことはご存知でしたか?
平川)直接は存じ上げませんが、ホームページや報道、仲間たちの情報から、心療内科、精神科、外来診療などの他に、休職後の復職を支援するリワークプログラムや産業医など、さまざまなニーズに対応されていたクリニックだったと推察されます。院長先生も聞き上手で優しくソフトな対応が評判で、通院患者さんからの評判も高かったと伺っています。とても残念です。
飯田)事件のあとは、先生のクリニックでも影響はありましたか?
平川)事件の翌日に外来があったのですが、診察室に入るなり、非常口の位置や数を訪ねた患者さんが6人いらっしゃいました。とても不安だったのでしょうね。
今回の事件を受け、東京の精神科診療所協会が安全対策としての調査や研修会を予定
新行市佳アナウンサー)今回の事件によって、ショックを受けている方も多くいると思うのですが、精神科に通っている患者さんに伝えたいことはありますか?
平川)安心してこれまで通り、かかりつけの精神科への受診を継続してください。東京の精神科診療所協会においては、今回の事件を受けて、安全対策として調査や研修会が予定されています。
新行)研修会というのは、どのようなものなのでしょうか?
平川)消防や危機管理の問題などを含めて、我々としても正直なところ、これまで気が回らなかったものですから、改めて、もう1度勉強しようということになっています。
コロナ禍で精神科を受診する人が増加
飯田)一方で、コロナ禍で精神的に不安定になる方も多いと聞きますが、現場はどのような様子ですか?
平川)不安の発作やパニック発作、鬱症状、自律神経失調症状や睡眠障害を訴えて受診する新患の方が増えています。
飯田)新患の方が。
平川)30~40代の女性や、中高生など若年層の受診者も増加しています。また、リモートワークで生活リズムが崩された会社員の方も多いですね。
飯田)生活パターンが変わってしまいましたからね。
平川)厚労省の調査でも、半数程度の方が何らかの不安感を持っているということです。そのなかでも、自分や家族への感染の不安や、収入面などの不安の訴えが多かったです。日常生活においても運動量が減少し、家のなかでゲームをやる時間が増えてしまった人が多いとのことです。睡眠時間や飲酒量については、増加した方と減少した方がほぼ同数だとされています。
飯田)ほぼ同数ですか。
平川)コロナ禍によって、健康面、生活面、社会経済面も含めて、極めて大きな影響が出ていると思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます