事実上の「日英同盟」復活である「広島アコード」
公開: 更新:
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が5月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。5月18日に行われた岸田総理とスナク首相とのワーキングディナーについて解説した。
日英首脳がワーキングディナーを行う
飯田)5月18日の日米首脳会談のあと、日英間でワーキングディナーが行われました。会談とワーキングディナーはどう違うのですか?
宮家)食べながら話すということです。社交以外にももちろん議論はしますが、時間がないときは「食事をしながら仕事の話を続けましょう」ということで、横にメモを置き、議論しながら食事するのです。
飯田)食べると言っても、目の前の料理に集中するわけではなく、話をしなければならない。
宮家)集中はできないでしょう。ただ、今回は一対一ではなく、7ヵ国あるわけです。日本以外ではアメリカ、イギリス、カナダという英語圏の国があり、フランス、ドイツ、イタリアというヨーロッパ大陸の国があります。これは微妙に違うわけです。
「広島アコード」に合意した日英 ~事実上の日英同盟復活
宮家)今回、日本とイギリスがグローバルな戦略的パートナーシップに関する「広島アコード」に合意しました。昔は海洋国家同士の日英同盟がありましたが。
飯田)日英同盟。
宮家)今のイギリスは大陸ヨーロッパが牛耳る欧州連合(EU)にいられなくなり、出て来たはいいけれど、調子が悪いから何とかしたい。アジアの成長率は高いですから、イギリスの将来を考え、海洋国家として日本に近付いてくる。これは前から予想できた流れですが、今回の広島アコードができたことによって、事実上の日英同盟復活となります。
「欧州とインド太平洋地域はつながっている」ということ
飯田)中身を見ると、イギリスの空母打撃群をインド太平洋へ派遣するタイミングなども含めて、演習を強化すると言われています。
宮家)前提として、欧州大西洋とインド太平洋、2つの地域の安全保障と繁栄は不可分なのだということです。日米が中国を抑止するためには、強力な北大西洋条約機構(NATO)が必要です。欧州とインド太平洋地域はつながっているのだという意識が、こういう形で出てきたのはいい方向だと思います。この調子でヨーロッパ諸国も入ってきてくれるといいのですけれど、まずはイギリスなのでしょうね。
飯田)先に中国を訪問したフランスのマクロン大統領は、台湾問題に関してニュアンス的に一歩引いたような発言をしました。
宮家)それは海洋国家ではない、大陸欧州の発想、特にフランスの発想だと思います。
米英豪それぞれと二国間で円滑化協定を結ぶ日本 ~重層的な安全保障の枠組みができつつある
飯田)イギリスとは環太平洋パートナーシップ(TPP)協定もありますが、二国間で経済だけでなく、安全保障面でも連携する。
宮家)円滑化協定というのは事実上の地位協定です。オーストラリアとも結んでいます。アメリカとイギリスと豪州、こんな感じではないかという雰囲気です。
飯田)その3ヵ国は3ヵ国でAUKUS(オーカス)という枠組みをつくり、原子力潜水艦の話まで出ていますものね。
宮家)もちろんNATOのようなものがつくれるわけではないけれど、徐々に重層的な安全保障の枠組みができつつあるのだと思います。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。